浮城謎事(二重生活)

《浮城謎事》
郝蕾、秦昊、齊溪 婁燁(ロウ・イエ):監督 
2012年


若い女性が車にはねられ死亡した。運転していたのは、金持ちの息子で、父親は大金を積んで死亡した女性の母とは示談で収めようと考えていた。
陸潔(郝蕾)と喬永照(秦昊)夫婦は、会社を経営し、幼稚園児の子供と家族3人不自由なく暮らしている。ある日陸潔は幼稚園で知り合った桑琪(齊溪)から彼女の夫の浮気についての悩みを聞いていると、偶然向かいのホテルから若い女性と連れだって出てくる自分の夫の姿を目撃してしまうのだった・・・


喬永照という男はかなり身勝手で、好きだが母には気に入ってもらえない女性を愛人とし、聡明でやり手な女性とは結婚して、この2人と二重生活を送っている。日陰でもいいと言っていた女性は、日が経つにつれ日なたに出たいと思うようになるのはあたり前で、ひたひたと本妻に近づいていく。男はそんな愛人に妻に近づくなといい暴力を振るいつつ愛してみたりもする。さらにはネットで女子大生を物色して、仕事の合間にホテルへと。まあ最低ですね。それでも会社が上手くいっているのは妻のおかげなのでしょう。
愛人は女の執念で、自分の存在を妻に気づかせたいと思い本妻に接近していく。だいたい子供を本妻の子と同じ幼稚園に入れるのを許可する男もどうかと思うわけで、隠したいのなら極力2人の接触はさけるべきで、男は最低なうえに詰めも甘い。
妻は当初は驚愕するものの、さっさと切り替えて、夫に三行半をたたきつけて会社からも追い出す。男は最愛人のもとへ。愛人は嬉しくてしょうがない様子だが、この男、愛人のところでおとなしくしているとは思えない。
女子大生の交通事故からずるずると3人の男女の生活が明るみに出ていくという話しは、それほど面白いとは思えないが、俳優たちは素晴らしい。秦昊の最低男ぶりは勿論だが、愛人役の齊溪が光る。スレンダーな体に少し疲れたような表情を見せながら、秘めた情念を感じる。
妻は信じられるものを失い、愛人は愛を得られたように見えるが新たな不安を抱え、男は自分が何か欲しいか分からない。男も妻も愛人も結局は誰もが分かりあえないという結末が痛い。
2015.02.17@K's Cinema
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