《八月的故事》の版権について

このところ《八月的故事》で検索してこのブログがひかっかている。NHKの朝ドラ「あさが来た」の五代友厚役で人気になったディーン・フジオカのデビュー作ということで、この作品を観たいと思っている人が多いようだ。私は香港在住だった2006年に香港亞洲電影節で20分版《八月的故事》を観ている(id:hkcl:20061002)。また翌2007年に香港國際電影節で60分版を観ようとしてチケットを購入したがキャンセルになってしまうということも経験した(id:hkcl:20070401#p1)。
日本で60分版を観るのはかなり困難だと思われるので、60分版をめぐる当時の新聞記事を訳しておく。因みに20分版は可能かも。

麥婉欣(ヤンヤン・マック)監督、葛民輝(エリック・コット)プロデュースのインディペンデント短編映画《八月的故事》は、香港國際電影節のオファーにより電影節での上映がきまっていた。この映画の版権は香港電台(RTHK)が所有している。香港電台は契約に基づいた22分版の上映を望んでいたが、麥婉欣は別に編集した63分版を上映したいと考えており、双方に行き違いが生じた。その結果、電影節は上映を取り消すことになった。麥婉欣は昨日、葛民輝とともに香港電台は香港映画の発展を阻止していると怒りを露わにした。


監督の麥婉欣は昨年、香港電台のため短編《八月的故事》を監督し、さらに葛民輝にプロデューサーを頼み、この映画と他のインディペンデント映画を集め《少年不識愁滋味》として、昨年の7月から亞洲電視・本港台で放送した。
本来22分の短編だが、麥婉欣は別に63分のディレクターズカットを編集し、東京国際映画祭で上映した。香港國際電影節では本来4月7日と9日の2回上映することになっていたが、最後になって上映は取り消し、払い戻しの手配をした。昨日、麥婉欣と葛民輝は香港商台(Commercial Radio Hong Kong)のインタビューを受け、香港電台がじゃましていると怒った。


「ちょっとした白色恐怖」
麥婉欣は、当初、香港電台は香港映画の為に手伝って欲しいといい、彼女と葛民輝は無報酬で自腹をきって撮影したという。彼女は「総ては香港映画界の為で利益の為ではない。私たちと香港電台Content& Programme Department部門の人は3か月に渡って争っています。彼らは22分版は出すが、さらに他の短編も一緒に上映するようにと言っています。私は63分版を上映したいけれど、彼らは許可してくれない」と話した。今後、香港電台と仕事をするかと問うと、麥婉欣は「私はブラックリストに入っている。ちょっとした白色恐怖だわ」といい、今回の件について香港電台の処理は適切ではないと話した。
葛民輝は「この件は本当にばかばかしい。香港映画の発展に影響するだろう。表面上は新人監督をサポートするといっておいて実際は違う。さらに彼らは廉署(ICAC:企業や政府機関の不正などを取り締まる機関)が版権問題について聞きに行くとか、僕たちを訴えることが出来るとかいうが、まだ訴えられてはいない」と話した。
葛民輝はこの件を経験して新人監督たちに契約や協議には注意が必要だと忠告する。「弁護士に契約の細かいところまでみてもらったほうがいい」と彼は話した。麥婉欣はまた、外国の記者がこの件で香港政府に電話で問い合わせたが、電話を切られてしまったとも話した。


「版権は香港電台に」
香港電台の広報・陳文娟は昨日電話での問い合わせに答えて、《少年不識愁滋味》は外部委託になっており、香港電台が総ての費用を出しています。契約書にははっきりと総ての権利は香港電台にあると書かれています。それは出来上がった作品も使わなかった部分についてもです。麥婉欣が自分で編集した新たな版を東京国際映画祭で上映していますが、これはすでに契約から外れていますし、版権を尊重していません。香港電台は海外での香港の映画監督のイメージに影響があってはいけないと考えて訴えなどを起こしていません。
今回の事については、「私たちは22分版がこの映画の最もよい状態だと思っていますし、喜んでこれを(香港國際電影節に)提供したいと思っています。しかし彼女たちは短すぎるというので、さらに2本の短編を合わせて60分ほどにしてはどうかと提案しました。そうすればより多くのインディペンデントの映画制作者を紹介できます。しかしその後、彼女たちは何も言ってこないのです。私たちは受け身ですから」。陳さんは、私たちは香港のクリエーターを攻撃するつもりはありません。ただお互いに契約を尊重して欲しいと思っています、と話した。2007.4.7「蘋果日報

香港電台はラジオ局だが、映像製作部門を持っており、優れた作品を数多く作っている。自身では放映できない為、TVBかATV(現在ATVはない)のどちらかのテレビ局で放送することになる。《八月的故事》はATV(亞洲電視)の本港台(香港チャンネル)で放映した。


追記:熱いファンたちの願いが通じたのか、7月29日に日本で《八月の物語》としてDVDが発売されることになったようだ(香港の事なので、お金になると思ったので許可が出たんじゃないかと、うがった見方をしてしまうのは悪い癖・・・)。さらに台湾映画《夏天的尾巴》(id:hkcl:20071006)も《サマーズ・テイル〜夏のしっぽ〜》というタイトルで9月23日にDVDが発売になるようです。←よい映画ですよ!