シネサルの「映画のブログ」

星(★/☆)の採点は、★4つで満点 ☆は0.5 ★★★★人類の宝/★★★☆必見/★★★オススメ/★★☆及第点/★★中間レベル/★☆パスしてよし/★ひどい/☆この世から消えろ

 『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』 ★★☆ …と見せかけて「ポリリズム」

 2006年、日本、カラー、1:1.85、35ミリ上映、(ビデオ撮影っぽい)、119分
 【監督&脚本&編集】大林宣彦【脚本&監督補佐】南柱根【音楽】山下康介學草太郎伊勢正三
 【出演】筧利夫、鈴木聖奈、清水美砂、中村美玲、窪塚俊介寺尾由布樹細山田隆人長門裕之南田洋子三浦友和峰岸徹、村田雄浩、左時枝岸部一徳山田辰夫立川志らく斉藤健一(ヒロシ)、河原さぶ蛭子能収根岸季衣、他
 【感想】

 一週間前から、忙しい状況で気持ちを昂ぶるために頭の中で映画を上映していると書いているが、映画はシチュエーションに合ったものを選ぶのが難しいし、うまい具合にいい映画がおもいついたとしても、イメージが具体的で印象が強烈だとハマって逆に仕事が手につかなくなってしまうので、気分高揚のためにはやっぱり映画より音楽の方が手軽で効果的。
 最近の定番は木村カエラの「Jasper」で、いいねぇカエラちゃんは。
 この調子だと最近の音楽に注目するようになって、音楽を聴かなくなってからカレコレ15年(グランドビートの渋谷系が流行っていた頃で、MY LITTLE LOVERの出始めぐらいまでは音楽を聴いていたけど、EVERY LITTLE THINGはもう聴かなくなっていた。)ぶりに音楽熱が復活するかも。
 木村カエラの他は、今や当たり前のように流行っているPerfumeだけど、ポリリズムの歌詞を昨日初めてまともに読んでみたら…、な〜んとこの1週間書いてきた心境とあまりにもピッタリ一致してるのにビックリ。
 以下歌詞(作詞:中田ヤスタカ)から抜粋。

  くり返す このポリリズム
  あの衝動は まるで恋だね

  くり返す いつかみたいな
  あの光景が 甦るの

  くり返す このポリリズム
  あの行動は まるで恋だね

  くり返す いつかみたいな
  あの感動が 甦るの

 自分の心に沸き起こってきたもの(もちろん一般名詞の「ポリリズム」とは何の関係もないけど)が、まさかPerfumeとリンクしていたとは思わなかった。
 そうそう、単に「ワクワクする」とか「好き」じゃなく、どうせなら「まるで恋」みたいじゃないとね。
 なんか、1週間の妄想物語にきれいなオチがついたような気分だが、おかげで自分は苦しいときには妄想を武器にできることに気づいて清々しい気分だ。
 まるで、大林監督の22才の別れのラストで筧利夫演じる主人公が感じたような気分。
 それというのも、あの映画の主人公は実は映画の最初と最後で状況は変らないままで、変ったのは子供のいない彼にも「血はつながっていないが『想い』がつながっている子供」がいると思うようになったことによって、Lycorisの花が長い年月をかけて日本に伝わってきたように、自分の想いも他人や未来につながっていくという「希望」を抱けるようになったことだが、もちろんそんな「希望」は何の根拠も実態もない「妄想」に過ぎない。
 でも、大林監督は「実態」「客観的事実」なんかよりも、「希望」「想い」「記憶」などを扱った「物語」(「妄想」をやわらかく言い換えた言葉)をもっぱら映画に描いている。
 だから、彼の映画はリアリズムとは180度逆のものになり、まるで歪んだ時空が映し出されたような映画になるので、リアリズム思考から抜け出せない人にとっては彼の映画は奇妙で居心地の悪く、苦手と感じる人も多いのだろう。
 また、大林好きな人の中でも、彼の最高傑作は?と聞かれれば『転校生』『青春デンデケデケデケあたりが上がりそうだし、僕もそう答えるかもしれないけど、実はこの2本は彼の作品の中では観念度が低くてリアリズム寄りでむしろ例外。大林監督以外の監督が手がけても似たような映画になりそう。
 同じ尾道三部作でも、記憶の世界に埋没したような状況で終わる時をかける少女や、主人公の頭の中で終わる形になっているさびしんぼうの方が大林監督ならではの作品で、これ以外にも『HOUSEハウス』『おかしなふたり』『なごり雪』『転校生 さよならあなた』『22才の別れなどが、リアルよりもシュール、現実よりも観念が主体の、他の監督作品には見られない言わば「脳内映画」の系列にあたる。
 この「脳内映画」という認識は、大林映画好きの人の中でも持っている人はひょっとしたら少数派で、これらの映画を誤解して見ているのかもしれない。
 わかりやすく言うと、大林監督は起きているときでも頭の半分で夢を見ているように思えるので、そんな人の作った映画は観る側も半分夢を見ているような気分で観るのが正しい、といった感じだろうか?

 大林映画にも見られる「妄想の有効利用」という武器を手に入れたので、困ったときには実践すればよさそうだ。
 関根勤が実践している「アイドルとの妄想デート」なんてのもいいかも。
 ついでに、どさくさにまぎれて大林監督作品のキーポイントまで今日のこの文章で指摘することができたし、調子が乗ってきたので明日からもいいことがありそうだ。

 ………などという、妄想、妄想、妄想、妄想、妄想、妄想………