Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

第75回 「箱」

テーマ「箱」
同列一等:磯涼平、北口絵梨奈、山中森
講評:山中森


今回のテーマである「箱」は、古くから西洋神話で用いられています。たとえば、「パンドラの箱」、「ノアの箱舟」など。前者は、すべての災いを封じ込めておく箱。後者は洪水という災いからノアと家族、多種の動物を守るために作られた箱状の船のこと。両者は中に閉じ込めておくものこそ対比的ではありますが、外と中とを隔てて生命を災いから守るという構図には変わりなく、何か重要なものを外から隔離するために人類が創造した装置として「箱」が存在すると言えます。今日においても、建築という「箱」を用い人類はそこに身を収め環境に適合させていきます。そのため「箱」というテーマは取り扱いやすく、細胞という極小単位の箱から都市論に発展する余地を見せる結果となりました。










今回の一等、磯さんの案

四角錐から四つの角が均等に生え出しているような見た目。ここではどれを箱と感じるかという問いが発せられます。私たちはその四角錐から生え出した四つの角に指をさし、四角錐に箱が埋まっているように感じると言います。次に、その四角錐を開けると今度は角が削られた箱のようなものが出てきます。それを見てもなんとなく箱のような気がしてしまします。私たちは日頃何を箱と定義づけているのか、その見た目からくる箱性を問い直すようなネタが含まれた案でした。



今回の一等、北口さんの案

六面で構成されている箱の角どうしを紐でつなぎ、その繋がれた点だけを頼りに面を再構成し、新たな空間を生み出した箱です。それは決して平面上だけではスタディーすることは難しい形状をしており、立体物を手で構成し直さなければ生まれることはなかったであろう複雑さを持っていました。日頃取り扱っている平面図などは、水平垂直が保たれた箱上での操作で生まれていることに気がつきます。次元を一つ上げるだけでいきなり複雑さを増すような操作性を感じます。










今回の一等、山中の案

箱というものを、上面四つ、底面四つ、計八つの角によって構成されていると定義した上で、その八つの角だけを用いて空間を構成できないかと試みました。角は大小さまざまな三面によって作り、それぞれの面の延長線が交わらないように配置することで、空間内に勝手に箱を感じたり、箱と感じていたはずが知らない空間に出会うという裏切りを持ってしまっています。災いからは守ってくれそうでいて一切守ってもらえません。箱のには面がかっちりと水平垂直に噛み合って初めて安心する構造なのでしょう。



次回のテーマは「何にもない」です。



参加者:磯、大久保、小川、神崎、北口、九里、紺野、田畑、深津、藤本、山中