|映画|
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正月にCSをつけたら、たまたま 『ブリジット・ジョーンズの日記』 がかかって居たので、コリン・ファース観たさに、ついだらだらと続編まで。何でも原作者は、BBCドラマ 『高慢と偏見』 のコリン・ファースが演じたMr.ダーシーの大ファンで、そこから主人公の恋人となる人物像を頂戴し(名前も同じ)、当然の如く、コリン・ファースを念頭に書いたのだと聞いて居る。成る程。Mr.ダーシーもかなり捨て難いのであるが、やはり個人的にはトミー・ジャド無敵!と云う訳で、大昔に深夜枠で放送された 『アナザー・カントリー』 のビデオテープなど引っ張り出した次第。*1
舞台は1930年代の英国。良家の子息ら集う園、泣く子も黙るイートン校の、超保守的な体制下において、自らが共産主義者であることを全く隠し立てしない、渋めのインテリ青年トミー・ジャドを演じて居たのが、実に若き日のコリン・ファースなのである。『資本論』 を肌身離さず、読書の傍らにはレーニン像。軍事教練も堂々ボイコットし、「何にでも反対なんだな」 と呆れる学友に 「革命に賛成」 と涼しい顔して答えるジャド。当時、公然と共産主義を唱えることは非常に危険であり、約束されたエリートの将来をむざむざ放棄するのと同意であったにも拘わらず、如何なる誘いにも権力にも屈せず、決して主義を曲げようとしない彼を、周囲の学友たちは食えぬ奴だと想いつつ、しかしそれ故に、一目置いても居るのだが、ルパート・エヴェレット演じるところの主人公。秀才でありながら、自らが同性愛者であることを、これまた隠し立てしない友人・ベネットの窮地を救うために、彼はたった一度。苦悶の末、自らの主義を曲げることを決めるのだ。
ベネットの不抜けた戯言を聞きながら、眼鏡のツルを口にくわえるジャド。更衣室の窓辺に悠然と腰掛け、いけ好かない軍国主義者の学友を、知的な屁理屈で煙に巻くジャド。朴杖の横顔の角度と、其処へ添えられた手の塩梅が完璧なジャド。洗濯に出す夜具をさかさかと手際良く畳むジャド。深夜の自習室で独り月明りに読書するジャド。櫛の入って居なそなもさもさ髪に、綻びた草臥れチョッキを着たジャド。はみ出したシャツの裾も直さず、長棹持ってボートを漕ぐジャド…と、挙げ出したら切りが無いので、この辺りでいい加減にしておくが、あの声がまた良いんだなぁ。嗚呼。ジャドは実に何処を取っても素敵だ…。そもそもコリン・ファースでなければ、果たして、ジャドはジャドと成り得なかったろなぁ。
さて、ジャドとベネット。一見するとまるで縁の無さそなこの二人が、どうして無二の友人同士であるのかを考えてみると、自らの生き方を貫くことで反社会的異分子とみなされてしまう、所謂異端者である、と云う共通点が挙げられるかも知れない。考え方や生き方は其々異なれど、決して己に嘘はつかない。一方、周囲の学友たちはどうかと云えば、リベラルなバークレイは、本当ならば自分も体制にノーを突きつけたいのだが、社会的地位や体裁、特権と云った諸々をどうしても捨てられず、狡猾なメンジースは、自らの野望のためなら見事な程に抜け目無い。皆、無駄に抗うことをせず、偽りや狡さを身に付けて生きて居るのだ。*2
そんなこんなで、各々の思惑や策略がごちゃごちゃと絡み合った結果、ジャドの決心は無と終わり、ベネットも代表に選ばれること無く、失意と屈辱を味わうこととなる。体制から拒絶された彼は、やがてジャドの説く共産主義へと傾倒してゆくのだが、つまるところ。もしかするとベネットは、自分には無い確固とした理想、信念を持ち、それを真っ直ぐ貫く友の生き方に、実は憧れて居たのじゃなかろか、と。ジャドも然りで、口では文句を云いつつも、何だかんだと世話を焼き、葛藤の末、絶対に譲れぬ筈であった己の大切な信念を曲げてまで、友を救おうとする。決して見習うべき生き方ではないと想いつつも、自分が持ち得ぬ子供のよな無邪気さや奔放さ、自由を、ベネットに見て居たと云う気がするのだけれど、如何だろか。
後に、ベネットは国を売ってソ連側のスパイとなり亡命。ジャドは共和国軍に志願。スペイン内乱で戦死し、帰らぬ人となる。享年二十二。若くして散った命を想う。
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次点。
ジェーン・オースティン節全開。
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おまけ。
私なら、おっかさんの編んだセーターを着て居る時点で求婚するが。
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