双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

冬の中で

|縷々| |本|


今年は大好きな編み物ができずに居て、当初はそれがどうにも慣れず、
どうにも手持ち無沙汰で。是から続く長い冬をどうして過ごせば良いのかと、
暫くの間、少しの苛立ちまじりに戸惑って居たのだけれど、
ふと思い立って始めた動物のためのホリスティックケアの勉強が、
ことのほか面白くて、今年の冬はセーターを一着編む代わりに、資格が取れた。
そんな冬だった。


転がる香港に苔は生えない

転がる香港に苔は生えない

この本を冬に読むのは初めてじゃないけれど、何故だか今年は
年の瀬に一週間かけて、毎日少しずつ読みたいと思った。
返還前の香港と、返還後の香港。
その只中へ、混沌の中へ、身一つで飛び込んだ筆者が、
そこで暮らす生活者として見たもの、感じたもの。
眼差しと心の移ろい。確信、揺れ。二つの香港を見送り、迎え、
それを直に体験した者の、その生きた生の高揚と戸惑い。
出会い、関わり合う、顔と名前を持つ人びと。
夜八時半過ぎ。
最後のページを読み終え、パタンと分厚い本を閉じる。
ハロー、グッバイ。そしてまた、いつか。
変わってゆくもの。変わらずに在るもの。
一年の終いにしみじみと読めて、良かった。

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