マイフェアSISTER―姫君、拳を握りすぎです。

ストーリー

江戸川師走は東北に引っ込んでいた。今でこそ知られていないけど、昔は名子役として名を馳せたのだったけど「ある一件」以来完全に芸能界から足を洗ってしまい、今では彼の事に気がつく人物はほとんどいないただの高校生。そのかわり妹の睦月はハリウッド進出なんてしている少年だったが・・・。
周りの親しい人たちからは「くすぶっている」と思われていた師走少年の所に、親しくしていた年上の従姉妹である警視庁のお偉いさんである桂城ミキから電話がある。
「身入りのいいバイトがあるんだけど、やらない?」
で、勢い込んで上京したまでは良いんだけど、実はそれは子守りのバイト、しかも異世界のお姫様・アネモネ(10)だった!?なんとなく可笑しくて、なんとなくシリアスな少年と困ったSISTER達のお話。

キャラクターですが

ちょっと師走少年の立場というか過去になかなか感情移入出来なかった事もあって、最初は物語に入り込み難かったのだけど、少女のアネモネが出て来てからグッと引き込まれて行きましたね。

異世界人の姫、アネモネ

いかにもお姫様といった感じのプライド優先型というよりは、世間知らずのお嬢様で、しかも恐がりだったりもする普通の女の子でした。そうですね、こんな妹がいたら可愛いだろうな・・・と思えるタイプですか。街へ出かけて、

「HAHAHA! SO SUTE! ALIAN GIRL! OKOK!」
「うむ、苦しゅうない。ときに黒いの、一つ聞きたいのであるが――」
「GO! GO!」
「ごう? どこに行くとな? なに良いとこじゃと? ろり? 飴? 飴はべつにいらんのう」

・・・とまあ、放っておくと危険なタイプなのは間違いないですが。

師走の妹、睦月

師走少年の本当の妹でもある彼女は派手な少女で芸名「MUTUKI」として勇名を馳せているのではありますが、時々不安な内面を兄に対してだけは覗かせる所があって、可愛らしいと言えば可愛らしい。家庭内ツンデレ? とでも名付けようかというような振る舞いを見せてくれます。師走としょっちゅう(主に電話で)喧嘩しますが、喧嘩する程仲がいいの典型みたいな少女ですね。

『――ちょっとねえ、兄貴。兄貴なんでしょ。わかってるんだから。もしもし? もしもし? 兄貴きこえる?』
「………………きこえてますよ睦月サン?」
『ますよじゃないわよアホ兄貴。何回電話かけさせれば気がすむのよアホ兄貴。イブもクリスマスもいないなんて、そんな兄貴がいて許される生態系を作った覚えないわよアホ兄貴』

えー、なんだか判りませんが色々な方向に心配してましたか?何て言うか可愛いじゃないですか・・・。

桂城ミキ姉さん

については・・・まあ天然系と言っておきましょう。意外に奥の深いキャラクターとして描かれる人ではありますが、まあジャージ姿の年上女性を想像してくれればいいですね。意外に魅力的です。

「好きなのよ。時々眺めてちゅーするぐらい許して? 別に今のキミをどうこうしたいわけじゃないんだし」
「――そんな昔はする気があったような言い方しないでくれる!?」
「うんあった。主にスネ毛が生えるまでは」

基本的にショタ腐女子という認識で良いのではないかと。

異世界人ってありますけど

この本の世界では異世界人がいるのが当たり前の事として受け入れられています。この面々が実はかなり個性的な連中でそろっていまして・・・もちろんアネモネ本人もそうですが、とにかくカレー屋店長のセネス人・ナンディの卵形ボディに立派なチョビひげフォルム(本人的にインド人のつもりらしい)がスゴいインパクトです。口絵カラーにも登場しちゃっているんですが、なにこのジャガイモ。
あと登場の機会は少ないもののタコっぽい異世界人のトトカト人がやたら気になります。

とがった口がちょっぴりタコさんに似ている。キュートでフレンドリーな商売集団。タコっぽいけどタコといったらまずいらしい異世界人。
(中略)
異世界人のトトカト人なら経済ニュースやまれに箱根駅伝の助っ人で、ねばり強い力走を見せていたりするからである。

どんなタコなのか興味津々です。火星的タコならもっと良いんですけど・・・まだイラストになっていないから可能性はあるか。

本編ストーリーは

師走少年の過去の傷と現在の葛藤、そして闘争(逃走?)を中心にして語られる青春物語と言って良いでしょう。コメディタッチで描かれますが、内容は意外にシリアスに展開したりして、なんともはや、こまりますね。師走少年にどこまで入り込めるか? あるいはSISITER達の魅力で最後まで押し切るか? まあ読み方としてはどちらかですかね。

結果

星3つかな。どこか今イチ。
SISITER群はとても良かったりするけど、ちょっと師走君に同意しきれない感じがあったので。悩み多き青年って感じではありますが、なんだか印象が定まらなくてピンと来ませんでした。かつての天才子役という設定に個人的に興味を覚えなかったと言うのが一番の原因かな? 描写が悪いとかそういう事ではないと思うので、その辺は読み人次第かなって気がします。
話の構成とかは良くできていると思うので、するする読めてしまったのは事実。なのでちゃんと次も読んでみるかな〜という気にまではさせてくれました。主にアネモネが可愛いし。ハマる人はとってもハマる作りなのかも。
きゆづきさとこ氏のイラストも良かったと思います。コミカルな味と奥行きがある作風がよかったかな。でも特に気に入ったのは最後から2枚目のカットのアネモネの正面のアップだと言うのは秘密だ。イラスト上部の空白が特にイイ(いや、意味判らんとはおもうけど・・・)

追記

よく考えたら作者もペンネームが「葉月」なので、この本の登場人物の兄弟姉妹の一人のつもりなのかもしれませんね。キャラに愛着があるのは良い事です。

感想リンク

灰色未成年  booklines.net  Alles ist im Wandel  ラノベ365日

巡回している感想系サイトさんでは大体好評な感じ? うん、俺のココロが歪んでいるからに違いないな!