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2007-08-30

”文学少女”シリーズ5 “文学少女”と慟哭の巡礼者

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

違和感」は読む前から頭の片隅をかすめていた。

つい先日、4巻の「”文学少女”と穢名の天使」の感想に、たかあきらさんからコメントがあった時の事だ。彼は一連のやり取りを踏まえた上でこのように書いている。

美羽の“醜さ”と心葉の“幼さ”が、“文学少女”の語りで浄化され、そして昇華して行く様が、とても綺麗でした。

本を読み終わるまで私にはその「違和感」の正体が分からなかった。

しかし読み終わった今、その理由が形を取り始めて、私を苛んでいる。


星の数を見ればお分かりのように、物語を私は楽しんだ。非常に美しい物語なのだ。

しかし、私はこの物語の美しさ故に、この本を破り捨てるだろう


・・・残念ながら感想に物語本編の事を書く気にはなれなかったのです。そして以下の文章は感想未満の拙く酷い文章で、自分以外読む価値があるとは思えないものです。

それでも興味があるという方は、どうぞ。


妬ましい。

羨ましい。


彼らは、

愛と恋に汚れきって、

憎しみと苦しみに傷つけあって、

そして最後には癒しを手に入れた、


その彼らに、

私はただひたすら黒々とした嫉妬をする

さぞかし苦しんだだろう・・・。

・・・しかし訪れた救いの味は・・・蜜の味だったろう? 旨かったか? 旨かったか?

私に思い浮かぶのはこんな浅ましい言葉。

こんな事を熱に浮かされたように書いている私の中・・・そこにはただ果てしなく、下衆で陰惨で低俗なゴシップを求めるような、安全な所から人の苦しみを覗き見て、自らを慰める半端に薄汚れた魂があるだけだ

この醜い嫉妬は、宮沢賢治の詩を以前に読んだ時にも感じたものだ。

その詩を以下に引用する・・・。

「目にて云う」


だめでせう

とまりませんな

がぶがぶ湧いてゐるのですからな

ゆうべからねむらず血もでつづけるもんですから

そこらは青くしんしんとして

どうも間もなく死にさうです

けれどなんといい風でせう

もう清明が近いので

あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに

きれいな風が来るですな

もみぢの嫩芽*1と毛のやうな花に

秋草のやうな波をたて

焼痕のある藺草*2のむしろも青いです。

あなたは医学会のお帰りか何かは判りませんが

黒いフロックコートを召して

こんなに本気でいろいろ手あてもしていただけば

これで死んでもまづは文句もありません

血がでてゐるにかかはらず

こんなにのんきで苦しくないのは

魂魄なかばからだをはなれたのですかな

ただどうも血のために

それを云へないがひどいです

あなたの方から見たらずゐぶんとさんたんたるけしきでせうが

わたくしから見えるのは

やっぱりきれいな青ぞらと

すきとほった風ばかりです

本は売れず貧困で、死の床にて肺炎でのたうちながらも、このような果てしなく美しい詩をしたためる事ができた、彼の美しく昇華した精神に対して感じる敗北感と嫉妬と同じものだ。

そして私は自分の中に、他者の幸せをただただ憎悪する、テロリストの精神を発見する

・・・嘘という真綿に包まれた安穏と、繰り返される代わり映えのないこの命と、そこそこに腹の満ちた暮らしの淡々とした幸せ・・・そんな中にいるために、自ら絶望や苦痛を求めて旅立ちたくなる程、私は下衆だ。

美しく燃え上がる物語の中の彼らの青春の前に、自分の魂が真っ黒く照らし出される。

ここにいるのは誰だ。

物語を貪りながらも物語では決して救われない現実の私だ。

書いても書いても何も残らない様な気がする私だ。

そこら中に転がっている大した事のない失望を、さも究極の絶望のように語って自分を誤摩化しながら生きて来た私だ・・・。

宮沢賢治のように、貧困と絶望に喘ぎながらも美しい物語を綴る事が出来るような精神はもちろんここにはなく、

心葉の様に美しく誰かを一心に信じて高める事も無く、

美羽の様にひたすら真っ暗な絶望を過ごして来た訳でもなく、

ななせの様にウブながらも純粋に誰かを案じて来た訳でもなく、

一詩のように誰かを受け入れる戦いをして来た訳でもなく、

流人のように自らを知りつつその意味を見出して来た訳でもなく、

千愛の様に自らの未来を賭けて幸せを求めた訳でもなく、

そして、私を暴く文学少女はいない・・・。


劇的な絶望も無ければ、

闇を貫く様な救いもない。

ただただ柔らかく醜悪で、老いた失意の塊があるだけだ。

この道に、美しく生まれるものは何も無い。

私は嫉妬の念から、彼らの青春を憎悪する。

私は嫉妬の念から、自らの届かなかった過去に失望する。

私は嫉妬の念から、報われた彼らに憎悪の拳の一撃を用意する。

他に何も無い。

私はついに、心の中に埃っぽく乾いた行き止まりを発見する。

感想リンク

*1:注:新芽の事。

*2:注:いぐさ

TANITANI 2007/08/30 12:45 拙文失礼します。
私と似た感想ですね。

私は美しい登場人物が好きです。
自分には手が届かないから。
私は美しい物語が好きです。
自分には手が届かないから。
私は美しい言葉が好きです。
自分には奏で方もわからないから。

hobo_kinghobo_king 2007/08/30 13:55 TANIさん、コメントどうもです。
どーも恥ずかしい感想を書いてしまって、なんともはや・・・って感じです。

たかあきらたかあきら 2007/08/30 14:21 結局、私もTANIさんやhobo_kingさんと同じなんですよ。

妬ましく、羨ましく。
それは自らの上には決して降りてくることのない「救い」が描かれているから。

だから「物語」という疑似体験で自らを慰撫している。
それは所詮、マスターベーションに他ならないのかもしれない。

でも、だからこそ。
「誰かによって救われる」自分ではなく、
「誰かを救える」自分でありたい。
それは負け惜しみかもしれないけれど。

それでいながら、いつの日か、心葉や美羽のように、救いがもたらされる日が来ることを夢見ているのかもしれない。

意外に高年齢でラノベを愛読する人は、皆同じなのかもしれませんね。

hobo_kinghobo_king 2007/08/30 14:24 たかあきらさん、こんな感想になってしまいました・・・。
いや、言わんとしている事は良く分かりますよ。他人事じゃないとでも言えばいいでしょうか。
確かに、同じ様な年齢層の場合には、同じ様な感じ方をしているのかも知れませんね。勝手な感じ方ですが・・・。

へろへろへろへろ 2007/08/31 21:12 そういう感情を言葉にして発する事ができる事に素直に感心しました。

こういう文章って、下手をすると「こういう感想を感じている俺カッコイイ文」だととられかねない危険性をはらむものなので(小説でもその間を揺れ動いているような作品ってありますね)。

小説に限って言えばこういう感情を読後に抱いた事がないので興味深い(という言い方はいささか失礼かもしれませんが)です。

hobo_kinghobo_king 2007/08/31 22:10 へろへろさん、コメントありがとうございます!
うーん、そうでしょうか? 正直にそのまま書いたらこうなりましたので、本を読んだ感想としてはほとんど機能していないですねw

>こういう文章って、下手をすると「こういう感想を感じている俺カッコイイ文」だととられかねない危険性をはらむ

なるほど、俺カッコいい!(違う)
真面目な話、そういう風に受け取る人がいても不思議では無いですね。

>小説に限って言えばこういう感情を読後に抱いた事がないので興味深い(という言い方はいささか失礼かもしれませんが)です。

5つ星つけてますが、それだけ感情移入できたからココまで思ったのかな・・・とか思いますね。

あすなろあすなろ 2008/01/07 15:04 1巻を買ってから1年以上 積み本していました。
何故買ったとき、すぐに読まなかったんだろう…? 
精神的に疲れていたから、無意識的に重たそうなテーマの本といって避けていたんでしょうか。まあとにかく昨日ひさびさに取り出して、一巻を読み、即座に文教堂へダッシュ、とりあえず5巻まで買って、今読み終わりました。人間失格やオペラ座なんかもちらちら読みながらなので、とても疲れました。 眠いです

5巻通して、上手いものを読んだ、って感じですね。伏線の張り方や心情の描き方が上手いと思いました。
元となった作品を隣に置きながら読むと、楽しいですね。人間失格なんかはうっかりベランダに出そうになるくらい危険でしたが。
罪と罰やジキル&ハイドなんかで書いてくれないかなぁ…

キャラクターは竹田さんとななせさんと美羽が気に入り、流が嫌いでした。女性二人、特にななせさんは5巻でもいい働きしてくれたと思います。最後に自己犠牲精神で身を引くような真似をしないでくれたところが良かったです。美羽は実は物語中最も弱いですね。でもそれはマイナスにはなりませんでした。想いが強すぎるが故に環境の為に心が耐え切れなかっただけだと。そう思います
ああ…心葉はこのままななせとくっついてしまうんでしょうか?それが悪いとは言いませんし、今更別れるなんてのも嫌ですが、井上みうの第二作も美羽の物語であったらな、と思うのです。
というか芥川はいいんですけど、美羽の相手としてはヤです。

いやいや人間ここまで深くないだろ。と思うような展開もありました。しかしこの辺りは共感することができるとまずいのかもしれませんね。むしろ共感できないことで、話独特のリアリティを帯びさせているのかもしれません。

なにやらhoboさんの感想がえらく心情表現的なので俗っぽく感想を
書きます。再度言います。
芥川と美羽はくっつくな。 5巻を読み終わった後に感じた一番の思いは。やはりこれですね。 なんか ヤ です
芥川君… 悪くはないんですけどねぇ…

hobo_kinghobo_king 2008/01/08 23:46 あすなろさん、いやーコメント返しが遅くなりました〜。
>何故買ったとき、すぐに読まなかったんだろう…?
私はすぐ読み始めてしまったのでこの本に関してはないですが、そういう風に思った事は何度かありますね〜。

>元となった作品を隣に置きながら読むと、楽しいですね。人間失格なんかはうっかりベランダに出そうになるくらい危険でしたが。
あー、その気持ちは良く分かりますw

>ああ…心葉はこのままななせとくっついてしまうんでしょうか?それが悪いとは言いませんし、今更別れるなんてのも嫌ですが、井上みうの第二作も美羽の物語であったらな、と思うのです。
おや? 珍しいですね。多くの人は心葉×ななせ、心葉×遠子先輩とか想像しそうですが、少数派だと思うので貴重ですねw

>芥川と美羽はくっつくな。 5巻を読み終わった後に感じた一番の思いは。やはりこれですね。 なんか ヤ です
実は、全くもって同感だったりします。私も、なんか、ヤ(全く説明になってない所がポイントですね!)

かなゆきかなゆき 2008/03/13 14:03 もっと早く、この本に出会っていたら…。
文学少女シリーズを読み始めたのはつい最近のこと。
いまさら感想を書いても遅い気がしますが、無性に書きたくなってきました。

一言で言うと、泣きました。

美羽を信じたい、けれど友も信じたい心葉。
それ故の葛藤。

心葉を想い、けれど心葉を憎む美羽。
それ故の葛藤。

そこに戸惑い、苦しみ、痛み、美しさを感じて涙が無意識のうちに溢れていました。

私は泣くことを嫌っていました。泣くという行為を嫌い、泣きそうになっても必死でこらえると言う有様。そこには色々な思いがあるのですが…。

そんな私が無意識のうちに泣いていました。
特に心葉の告白シーンなんか、五回以上繰り返して読んで…。その度に涙が出て…。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」。これは私の好きな詩の中の一つなので共感が持てました。でも、確かにそこで、そんな人間にはなれないと思うこともあるのです。「銀河鉄道の夜」は、家にあるのでまた今度読んでみようと思っています。

あすなろさんと同じで、私は心葉とななせがくっつくことに、多少違和感を抱いています。くっついてもいいと思うのですが、心葉にとっての美羽とはやはり、特別な存在だという感じがするのです。

そして私も同感。芥川と美羽はくっつくな。というかくっついて欲しくはない。なんかヤですね…確かに。
でもくっつきそうな雰囲気が…。

hobo_kinghobo_king 2008/03/13 23:57 かなゆきさん、コメントありがとう!

おお〜かなり心のいいところに入っちゃったみたいですね!
文章からその辺りの波というか・・・波動? みたいなものが伝わってきます。

>いまさら感想を書いても遅い気がしますが、無性に書きたくなってきました。

大丈夫です。昔の文豪の作品が夏休みの読書感想文にテーマになるじゃないですか。
書くのに遅い感想なんてないですよ〜。

しかし心葉とななせがくっつくのになんで納得出来ないのかなあ(私もですけど)。
当たり前の少女的に一番秘密がなくて、なんだか強そうだからかなあ?
その辺りの自分の心理を分析しても面白いかも知れないですね!

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