ギャルゴ!!!!!(2)ー地域限定焼餅大全ー

ギャルゴ!!!!!2 地域限定焼餅大全 (MF文庫J)

ギャルゴ!!!!!2 地域限定焼餅大全 (MF文庫J)

ストーリー

田中春男(たなかはるお)は「ギャルゴ」の二つ名の付いた中学生である。
彼はどこにでもいそうな中学生だったのだが、こと「人間以外」の異性から悉く愛されるという性質を持っていた。それは当然ゲームキャラクターも同じであり、結果として彼はギャルゲーの攻略については最強の素質をもっていたのだった。で、付いたあだ名が「ギャルゲーゴッド」略して「ギャルゴ」である。本人は別にギャルゲーが好きという訳でもなかったのだったが。
また、それとは別の顔を春男は持っていた。噂のように巻き起こって人に害成す地方都市伝説を影で調伏して回るという顔である。それは今は亡き祖母から受け継いだ大事な仕事なのだが、地方都市伝説にはそれを影で操る存在「噂長(そんちょう)」の存在がいることが明らかになってきて・・・。
という感じの地域限定妖怪(?)退治ラノベなんですが、今回は春男につきまとう謎の衣装拝借女が現れて・・・という感じで話が始まります。

いや〜ぬるいね〜

ってほめ言葉ですけどね。
主人公の性格も淡々としているようで、時々発作的に熱くなったりして・・・というか「淡々と熱い」というのが一番正しい表現かな?
田中春男。実に代わり映えのしない名前(全国の田中春男さんゴメン)ですが、伊達に二つ名を持った少年ではありません。まあ・・・二つ名はギャルゴですけど・・・。

「彼女、嫌がっているじゃないか。男がよってたかって女の子をからかうなよ」

あまり素行のよろしくない男どもに絡まれている女の子(ただし元々知り合い)を助けようとして発した言葉ですが・・・果たして現実でここまで出来る少年ってどの程度いますかね? まあ結果として彼は程よくボコられる訳ですが、実にナイスガイだと思います。
強いとか無鉄砲とかというのには語弊がありますが・・・とにかく優しい少年という印象ですね。それが人間/非人間を問わず発揮されるものだから、とりあえず現状では「春男のそういう所を目にする機会の多い」非人間にモテているという感じじゃないでしょうか。
真面目で優しい純情少年、それがギャルゴ

胸がどきりとする。さっきからドキドキばかりだ。コトリといるとぼくの日常生活で最も身近な擬音はドキドキになる。

うーん、いいなあこういうの。ちなみにコトリとは彼が仄かな恋心を抱いている少女で、ちょっと地方都市伝説の影響を受けている関係でちょっとだけ非人間ですが、基本は心技体ともに普通の少女で、本名は小鳥遊ゆかりです。これもまた可愛いんですな〜。

「だって、うれしいよ……そ、その、ね。春男くんが、学校でおしゃべりする女の子が私だけなんだなーって。その、こんなこといったら、春男くん、嫌かもしれないけど、えーとね、なんか私一人が春男くんを独占できてるみたいでっ……その、とってもうれしいな」

言葉だけ抜き出すと直球ストレート少女ですが、ギャルゴもコトリも純情少年少女なので、なんだか良くわかりませんが自覚に欠けていますので安心です。こんな感じのフワフワした距離感で物語は進むわけです。

が!!

今回はそのヒロイン・コトリさんに二人の強力なライバルが現れます!
一人は元々いたけど春男の射程距離内に入ってなかった(というか入りようの無かった)大きなお友達向けのセクシーフィギュアである・エリアスです。
セクシーボディで人形の割には実は知性派なんですが、こんかい大っきくなって登場です。

少女は自分の胸を細い腕で抱えるようにして、いう。
「……大きくなっちゃったよ」

これは予想外の展開です! というか予想の内にあったといえばあったのですが、まさかこんなに直接来るとは!
まあエリアスはセクシー路線まっしぐらのように見えて、本当に空気を読んだり人の気持ちを察する能力に長けた女性(?)ですので、以外に安心・・・というか、可愛らしいです。

そして

もう一人は今回の物語の中心人物でもある謎の衣装拝借女ですね。控えめな美女で、ちょっとストーカー気味ですが・・・。

話しかけていいのか、捕まえたほうがいいのか、どうすればいいのか、行動出来ないでいると、拝借魔はぼくとの距離をさらに縮めた。彼女の顔が目の前に、そして、その一糸まとわぬ姿のまま、優しくぼくをだきしめた。
ぼくは全く反応できなかった。幸せそうな顔でぼくを抱く拝借魔。

登場シーンこそ全裸での全開行動ですが、その実決して押しは強くありません。時代がかった女性のように、地味と言えば地味に、純と言えば純に、ちょいストーカーっぽいと言えばストーカーっぽい感じで春男にアプローチをしてきます。うーんやるな。

まあもちろん

今回も見所てんこもりで、新しく登場するギャルゴのライバル(?)にライムという少女が出てきます。
彼女は地方都市伝説の事実をしっていて、ギャルゴに「どっちが地方都市伝説と戦うのに相応しいか」をかけて戦うように言ってきます。
まあそんな彼女も基本は普通の中学生なので、あんまり荒っぽいことはしないですし、というかギャルゴの仲間のような感じで振る舞っていくことになりますが・・・いや、この娘もいい子ですよ。
ちなみにライムは、ギャルゴを深く愛する娘(ただしドーベルマン)・かま子のアレだったりします。

そうそう

今回は春男とかま子*1による実に心温まるシーンがありますので、ちょっと抜き出してみたり。

「体勢つらくないか?」
ドーベルマンをおんぶしたのは人生初。いや、人間以外をおんぶしたのが初だ。
「ワ、ワン」
「きつかったら、ちゃんと伝えてくれよ。おんぶするのやめるから」
「ワンワンッ!」
耳元でかま子の大きな鳴き声。鼓膜が震える。ワン二回はノーという意味。
「ワァン?」
おんぶしたまま信号をいくつか超えた頃、疑問符のつくかま子のひと吠え。
鳴き声にここまで綺麗にクエスチョンマークをつけられる犬を、かま子しか知らない。さすが、芸多き犬である。
「ワァン?」
これの意味はなんとなくわかった。だから、かま子の顔を見て、いう。
「だいじょうぶ、重くないよ。かま子の身体なんて軽い軽い」
忘れちゃいけない。かま子はメス犬。タニザキ*2の優秀な警備犬といえども、心は乙女だ。体重を気にしている犬もかま子しか知らない。さすが。
「……ワァ——ン」
ぼくの肩に俯いたままのかま子。生後三日の子犬が鳴いたみたいな高くて細い鳴き声。実に可愛らしかった。

うーん、流石ギャルゴは女性(?)の気持が分かってますな。そして、さすがかま子。犬界きっての清純派犬。犬に萌えたのは初めてだ!
ちなみにこのシーンはイラストにもなっています。絵師さんグッジョブ!

総合

面白いし、やっぱり応援の意味も込めて星5つ!
キャラクターも良いし、話の作り方も良いし、変な味がある所も含めてとても好きな作品ですね。春男(ギャルゴ)、コトリさん、エリアス、かま子、そして新登場のライムと着物娘(衣装拝借魔)も全部いい味出しています。うーん好きだ!
今回はまた変な方向に話を捻ってくれていて、またまた変な方向にストーリーを着陸させてくれます。いやあ、ギャルゴの周りは百花繚乱だなあ・・・。ま、タイトルからして「地方都市焼餅大全」ですしね。あの手この手で読者を楽しませてくれますよ。
イラストは河原恵氏ですが、私のお気に入りの絵師さんになりつつあります。白黒イラスト、口絵カラーの両方とも好きですね。なんでか分かりませんが、今回はギャルゴの表情がとても良いと思いました。なんというか性格が出ているというか・・・そんな感じで。

感想リンク

*1:繰り返しますがドーベルマンの雌で、かま子は「かまいたち」の略だったりします。

*2:本屋の名前ね。