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2009-02-12

アクセル・ワールド(1)黒雪姫の帰還

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

ストーリー

ニューロリンカーによってネットワークを介して何もかもをやりとりすることが可能な技術と基盤が整備されつつも、あいも変わらず旧態依然学校教育などと言うものが蔓延っている、ちょっとした未来。

ハルユキは学校の中で息を殺して暮らしていた。小太りで冴えない外見の自分。誰にでも卑屈な自分。同級生に虐められている自分。現実世界の何もかもを否定したくなるような毎日を、今日もネットワークに深く沈むことでやり過ごしていた。

しかし、彼が仮想世界でたたき出した脅威のゲームスコアが一人の少女の目にとまる。その少女は黒雪姫と呼ばれる美しい少女で、ハルユキにとっての雲上人のような少女だった。声をかけられることなど——いや彼女の視界に入ることすら——畏れるハルユキだったが、黒雪姫は向こうからハルユキに接近してきたのだった。そして、彼女は告げる。

「もっと先へ……《加速》したくはないか? 少年」

その黒雪姫がハルユキにもたらしたもの。それは「ブレイン・バースト」と呼ばれる、刺激に満ちた仮想世界へと誘う、余りにも危険で、余りにも蠱惑的なプログラムだった・・・。

電撃小説「大賞」の作品が、いきなり1巻と銘打って登場です。

これは

面白いわ!

世界設定に関して言えばサイバーパンクから「パンク」を抜いた世界観というか、「攻殻機動隊」から「混沌」の二文字を取ったような世界観とでも言えばいいんでしょうかね。

今や誰でも持っている携帯の置き換わった先に「ニューロリンカー」というシステムがあって、それを使わずに過ごすことなど不可能になりつつも、やっぱり少年少女は少年少女で、学校は学校で・・・という感じの舞台で物語が進みます。

その辺りに

ついては主人公のハルユキがこのように述懐しています。

なぜ、本物の教室や学校なんていう下らないものが必要なんだ。人間はもう仮想世界だけで生きていけるし、実際そうしている大人は腐るほどいる。過去には、人間の意識をまるごと量子データに置き換え、本物の異世界を構築しようという実験まで行われたほどだ。

それなのに、集団生活を学び、情操を育てるため、なんて馬鹿みたいな理由で子供はひとまとめに現実の織にぶちこまれる。荒谷たちはいいだろう。適度にストレスを解消し、小遣いも節約できるんだから。でも、僕は——これ以上、どうすればいいんだ。

イジメ、パシリ、カツアゲ・・・。仮想空間に広大な世界が広がる未来であるにも関わらず、ハルユキを包む現実は余りにも醜悪で、余りにも閉塞感に満ちています。昼休み、人目を避けるようにして閉じこもるトイレの個室・・・そこが「現実」のハルユキに許された全て。

しかし

それを書き換えるのものが現れます。

一つは黒雪姫の存在そのものであり、もう一つは彼女のもたらした「ブレイン・バースト」というプログラムです。黒雪姫は鬱屈して歪められたハルユキの精神が生み出した「解放を望む力」に大きなエネルギーを見いだし、それを解放させる先として「ブレイン・バースト」を与えるのです。

簡単に言ってしまうとこの「ブレイン・バースト」、精神と思考を数千倍に加速させつつ、仮想体の新たな自分を作り上げ、対戦格闘の世界へと送り出す一種のゲームプログラムであり、同時に現実に干渉することも可能にするものの使う者を選ぶ・・・言わば「裏ソフトウェア」とも言えるプログラムなんですが・・・それを手にしても主人公のハルユキ、徹底的に卑屈です。

ですが、そこが良いんですね。

とにかく

ハルユキは卑屈です。脆弱・醜悪・鈍重としか思えないリアル(現実)の自分をひたすら否定し、人の好意に対しても素直な反応を返すことが出来ません。

「僕は……僕は、ほんとは、先輩とこうして話せるような人間じゃないんです。かっこ悪いし、ぷよぷよだし、泣き虫だし、たった二人の友達を恨んだり妬んだり、すぐ走って逃げたり、ほんとだめなやつなんだ。最低なんです」

ハルユキは、黒雪姫が与えてくれたチャンスに感謝しつつも、同時にそれを「彼女の慈悲の心なのだ」と感じてしまうほど、卑屈です。

しかし・・・

そこが実にいい。実に感じる。

それこそがリアリティであり、同時に——ひょっとしたら読者の実生活と——深く深く「リンク」する部分ではないでしょうか。少なくとも私は完全にリンク出来ました。

ハルユキのその心は思春期特有の、と限定してしまうには無理があり、いつだって誰だって思ったことがあるに違いない——後ろ向きな心。それが読者である私ととても皮肉なことに「心地よく」リンクします。

そして、ハルユキはその卑屈な心を抱えながら「ブレイン・バースト」のもたらす戦いのフィールドに足を踏み入れることになります。彼の心がその戦いを通じてどう変化していくのか・・・楽しみですね。

総合

確かに面白いので星5つですね。さすがは「大賞」と言ったところでしょうか。

物語にグイグイ引き込まれてしまって、今日の通勤時間はあっという間でした。おお、もう乗り換えの駅か!? なんて思ったのは久しぶりのことです。この話は、シンプルかつ単純に面白いのです。

いきなり1巻となっていることから続刊がでるのは多分確定しているのでしょうし・・・とにかく楽しみなシリーズが一つ増えました。

ところで話は変わりますが、解説を書いているのが「あの」川上稔なのですが、なんだか全力ではっちゃけてます。同じ世界観での短編を一本仕上げた挙げ句、なんか独自のイラストまで付けているという暴走っぷりです。まあそのあたりの事実からも、この本の面白さは伝わるんじゃないでしょうかね。でも・・・川上稔自重w

感想リンク

mouseionmouseion 2009/02/12 22:23 ありがとう。買ってみます。本当にありがとう!!

雪風雪風 2009/02/12 23:52 大分久しぶりになりますけど、コメントします。

この作品星五つ行きましたか。

これの見所の一つに、リアルな学校という閉鎖空間の暗部ですよねー。
ラノベの「学校」は現実離れした場所になってることが多い中で、こうゆう方面での切り口は珍しい。

他のラノベだとA君の戦争ぐらいかな「デブでオタクのために学校に居場所がない」というキャラは。

多分ラノベ読みの7割ぐらい感情投入出来ると思いますよ(笑。

この作品はもともと、Arcadiaというサイトで掲載されていた『超絶加速バーストリンカー』という作品が元ネタだったんですよ。

しかしコメントをすると自分の文才のなさがよく分かりますwつくづくhobo_kingさんはすごいですね。

雪風雪風 2009/02/12 23:55 追伸

>川上稔自重w
同感w

TANITANI 2009/02/13 00:08 雪風様が仰られていますが、1巻は投稿小説そのままという印象。
勢いがあって良い作品だと思っていたので、本になることを知って(しかも電撃大賞)驚いたことを思い出しました。
投稿小説の良いところは、無料で良い作品に出会えることだと思います。その分時間もかかりますが。
個人的には2巻から注目のタイトルです。

マキシマキシ 2009/02/13 13:16 既に公開されていた小説が投稿されて大賞を獲ったというのは良いのかな?
とか思ってたけど、商用以外で発表されてた作品なら問題無いみたいですね。

パララバとこの作品はちょっとチェックしてみたい。
それにしても電撃は層が厚いね!

カブカブ 2009/02/13 16:06 この人もネット小説家なんですよね・・・
最近はネット小説も参入してきたことでライトノベルの枠が広がって嬉しい限りです
この著者がHPで公開していた「SAO」というネット小説も文庫になると聞いたので非常に楽しみです

PIATPIAT 2009/02/14 02:41 んー、何だか自分の苦手なタイプの話みたいですなぁ…。

欝屈した精神が力の源というならば、社会性を喪失したもん勝ちというか、最後まで突き詰めたらDQNやマジ○チには勝てない、みたいな展開になりそうな…。
奴隷の鎖自慢とはベクトルが逆なだけで、やってることがほとんど一緒、みたいなことになりはしないだろうか。

上で出ているA君なんかは、その辺をかなり気にしてるフシがありましたが(コミック版では主人公のキャラが変更されちゃったり・苦笑)。

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 08:51 mouseionさん、コメントありがとう!
>ありがとう。買ってみます。本当にありがとう!!
なんでそんなに感謝されるのか理由が分かりませんが! 参考になったのなら幸いです!

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 08:55 雪風さん、コメントありがとう!&お〜確かにひさしぶりにいらっしゃ〜い!
>ラノベの「学校」は現実離れした場所になってることが多い中で、こうゆう方面での切り口は珍しい。
そうなんですよね。ありそうで、ない。しかもそれの描写が素晴らしいのですぐに引き込まれてしまいました。

>多分ラノベ読みの7割ぐらい感情投入出来ると思いますよ(笑。
笑えばいいのか、いや泣くべきなのか・・・困りますな〜。

>この作品はもともと、Arcadiaというサイトで掲載されていた『超絶加速バーストリンカー』という作品が元ネタだったんですよ。
Arcadiaは知っていますが、こんな作品が連載されていたんですか・・・知らなかったなあ。というか雪風さん、よくチェックしてますね。

>しかしコメントをすると自分の文才のなさがよく分かりますwつくづくhobo_kingさんはすごいですね。
文才・・・ですか? う〜ん、そんなもの自分にあるかなあ? 良く分かんないんですよね〜。

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 08:56 TANIさん、コメントありがとう!
>雪風様が仰られていますが、1巻は投稿小説そのままという印象。
みなさんよくチェックしているんですね〜。

>投稿小説の良いところは、無料で良い作品に出会えることだと思います。その分時間もかかりますが。
確かに。ダメな作品はとことんダメですからね〜。

>個人的には2巻から注目のタイトルです。
そうですね。1巻分が既に存在していた事になりますから、2巻は要注目、でしょうね。

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 08:58 マキシさん、コメントありがとう!
>とか思ってたけど、商用以外で発表されてた作品なら問題無いみたいですね。
レギュレーションにも細かく条件がありますからね。

>それにしても電撃は層が厚いね!
それはしみじみ感じますよ。雪蟷螂とか読んだ後にこの本読むと、全く違う楽しさがあるのにビックリします。

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 08:59 カブさん、コメントありがとう!
>この人もネット小説家なんですよね・・・
最近は手軽に自作の小説を公開できる環境がありますから、まず自分を鍛えてみるのにネットで公開するというのは大いにあり、なのかも知れませんね。

>この著者がHPで公開していた「SAO」というネット小説も文庫になると聞いたので非常に楽しみです
おやおや〜、大躍進ですね。

hobo_kinghobo_king 2009/02/14 09:03 PIATさん、コメントありがとう!
>欝屈した精神が力の源というならば、社会性を喪失したもん勝ちというか、
それが微妙な所で、社会性の喪失=力、の等式は必ずしも成り立ってないんですよね、この話。
例えば黒雪姫は学校で人気で取り巻きがいるほどの美少女ですし。その辺りの見せ方は上手に思いましたよ。

>上で出ているA君なんかは、その辺をかなり気にしてるフシがありましたが
A君は読んだことないんで分かりませんが、反逆の(あるいは現実に復讐するため)戦う訳ではない、というのは言えるんじゃないかと思います。スポーツで才能を見いだされたのに近い・・・かも知れません。

harukaharuka 2009/02/17 18:25 読了。
この作品は私にとって非常に惜しかった作品です。
文章も世界観もぐいぐいと引き込まれる魅力に溢れていたのですが、ただ一点、主人公に感情移入ができず、むしろ反感を覚えてしまったので愉しめませんでした。
私は、太ることをある種意志の弱さからくるものだと思っているので、卑屈になるのはよくても、それで周囲の人間を傷つけてしまうのはどうも許せなかったです。(肥満には体質もあるのかもしれませんが、この主人公は違うと思います)
まあこれは以前コメントしたスクランブル・ウィザードと同じ現象が私の中に起きているのですが、その一点によって、一歩引いた感じで本を読んでしまい、いつもだと気づかないような、または気づいても許せような強引な展開が見逃せなくなりました。
…ということで自分の中で納得のいなかった部分を十個ほどある中から二つピックアップ。

ひとつは、225ページ、口を隠すような仕草から、タクムがシアンパイルだと気づく瞬間、いくら仮想デスクトップ操作が速いといっても違いはせいぜい十秒ほどだろうから、先にタクムがバーストリンクしたとすると、ハルユキはその0.01秒以内にバーストリンクしなければならない。それはちょっと無理じゃ…。しかもそのときのハルユキの思考は1ページにわたっているという。
もうひとつは、黒雪姫がなぜ自動車を避けられなかったのか。
ハルユキを突き飛ばした後、自分も避ければいいのではと思い、次の展開に進むためわざと事故に逢わせたとしか思えず、読んだ瞬間キョトンとしてしまいました。

私の勘違いだったらすいません。
それでは、長文&水を差すようなコメント失礼しました。

hobo_kinghobo_king 2009/02/18 23:53 harukaさん、コメントありがとう!
>ただ一点、主人公に感情移入ができず、むしろ反感を覚えてしまったので愉しめませんでした。
ああ、そうなると結構辛い物語になりそうですね。

>いつもだと気づかないような、または気づいても許せような強引な展開が見逃せなくなりました。
誰でもそういう視点が獲得できるわけではないので、結構そういうのって大事ですよね。

>私の勘違いだったらすいません。
を。その辺りは何気に私も気になった部分ですね。まあ勢いに任せて読み切ってしまいましたが。

>それでは、長文&水を差すようなコメント失礼しました。
いえいえ、別に反論お断りじゃありませんし、いつでもどうぞ遠慮無く!

goheigohei 2009/02/24 05:46 コノ作者のHPは6年ぐらい前からずっと追ってって大ファンなんですよね。ネット小説読む人だと必ず名前ぐらいは聞いた事があるんじゃないかと
今度書籍化されてることになったSAOが一部だけだけどラジオドラマ風に音声化とかされているので興味があれば聞いて見るのもいいかと

この人のすごい所はプロにとっては当たり前のはずだけどほぼ完結させるところにあると思いますよ。
書籍化されることになったので代表作のSAOシリーズを初め殆どHPから削除されているけど完結させた作品が10本ぐらい有ったと思います。
数ヶ月毎日連続更新とかしてたし、今もプロになって新規の原稿書いてるはずなのにHPで新作の別の話をじりじり書いてるし。30超えてて普通の社会人もしてるはずなのにいつ寝てるんだろうってぐらいの量産力を誇ってる。しかもクオリティ全部高いし。
この作品もSAOシリーズの4作目書いてる途中に息抜きに書いてた節が有るんですよね・・・

作風としてはバトルが盛り上がるほどに精神的な面を強調するので巨人の星現象と言うかキャラクターの内面が細かくなっていく傾向がありますw

とにかくすごい人なんで今後にも期待してます

hobo_kinghobo_king 2009/02/25 01:14 goheiさん、コメントありがとう!
>ネット小説読む人だと必ず名前ぐらいは聞いた事があるんじゃないかと
あら、そんなに有名な人だったんだ! ネット小説漁らないから(オリジナルは特に)知らなかったよ〜。

>この人のすごい所はプロにとっては当たり前のはずだけどほぼ完結させるところにあると思いますよ。
うん、ちゃんと完結させられるって大事な事よね。長ければ良いってものじゃないですからね、物語は。

>数ヶ月毎日連続更新とかしてたし、今もプロになって新規の原稿書いてるはずなのにHPで新作の別の話をじりじり書いてるし。
それは・・・凄いですねえ・・・! 感想ブログだって毎日更新するのは大変ですから、創作意欲が半端ないんでしょうな〜。

>とにかくすごい人なんで今後にも期待してます
私もこの1巻を楽しんだ人なので今後には期待してますね。

nini 2009/02/26 21:08 面白いのは確かに面白かったですね〜
でも、「もっと練れただろ」という感じ
敵サイドから見た統合性とか、意味のない狂気的なしゃべりとか
疾走感を削ぐ長い思考描写とか、バトルの盛り上げとか
主人公の成長とか、オリジナリティの弱さとか

もっと完成度を上げられそうなのがもったいなかった

hobo_kinghobo_king 2009/02/28 02:02 niさん、コメントありがとう!
>敵サイドから見た統合性とか、意味のない狂気的なしゃべりとか
あ、視点を変えてみると確かにアラが目立つ部分もありそうですね。私はあんまりそういう合理性を重視しないタイプなんで気になりませんでしたが・・・。

>もっと完成度を上げられそうなのがもったいなかった
聞いたところによるとこの1巻は既にネットで発表されていた作品を大賞に応募したものらしいですからね。実際は2巻が勝負かも知れません。

unzanunzan 2009/03/14 22:08 表紙買いしたんですが・・・
あれれ?どっかで見たデジャブ・・・

電詞都市DTby川上稔 + エアギアby大暮維人 + A君(17)の戦争by豪屋大介


あとがきで川上センセがコメント(?)載せてるのもその辺あったんだとおもってます、ハイ

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