最近はたまに何か書いたりしてる このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-08-25

フルメタル・パニック!(11)(12)ずっと、スタンド・バイ・ミー(上)(下)

ストーリー

決戦の地は定まった。それはミスリルがかつて拠点としていた孤島・メリダ島。

アマルガム、いや”ささやき”に魅入られた者達はそこを拠点として世界改変の一歩を踏み出そうとしていた。そしてそれに反抗するために残り少ない戦力を集結させるミスリル。しかしアマルガムの戦い方は狡猾だった。世界で軍事的な緊張感の高まる中、致命的な一撃をもたらそうとしたアマルガムは、核施設の乗っ取りを実行する――それはメリダ島から遠く離れた中東の地での出来事だった。

今の世界を救うためには核を発射させるわけにはいかない。しかし世界の改変を止めるためにはメリダ島で動かされるはずのTAROSの作動を止めなければならない。二者択一を迫られる状況の中で、テッサは苦渋の決断をすることになる。希望、戸惑い、疑念、後悔、焦り――幾つもの想いを抱えたままミスリルは最後の闘いに臨むことになる。そしてそこにはもちろん愛機・レーバテインを駆る相良宗介の姿もあった・・・。

12年の時を経て遂に完結! これぞライトノベル! という王道を突っ切ったシリーズとなりました。

感無量

ですね。単なる一読者の私でさえそうなんですから、きっと作者の賀東招二氏の内面はもっと凄いことになっているに違いありません。

思い起こせば12年前(あとがきに書いてありました)、「フルメタル・パニック!」のタイトルを初めて見たのはドラゴンマガジンの誌上での事でした。最初見た時はそのバッタもん臭いタイトルに口を歪めた記憶があります。こんなにストレートに某映画からタイトルをちょっぱって来たライトノベルなんてろくなもんじゃねえに違いない、という位には思っていたと思います。

・・・が、いつのまにやらシリーズを追いかけるようになり、長編を読み、短編を読み、2巻の「疾るワン・ナイト・スタンド」に至っては本のページを捲る部分が手垢で茶色く汚れる位になるまで読み返していたりしました。続刊が出るのを一日千秋の思いで待っていたわけではありませんけれども、新刊が出た時にはいつも必ず発売日に買っていたような気がします。まあそれだけ毎日本屋に通っていたという事なんでしょうが、12年経っても同じように行動しているところを見ると、きっとこれはもう一生直らないような気がしますね。

前巻の

「せまるニック・オブ・タイム」の感想ではかなり厳しめの事を書いたんですが、個人的にはその(一方的な)期待に完璧に応えてくれたと思っています。宗介もかなめも作中で色々と失ってきたものがありましたが、最終的に無くしたもの以上のものを取り返して、見事に黒字でやり遂げたという感じでしょうか。

もちろん登場した全ての人物が上手く収まるべき所に収まったという訳ではありません。この話は人が死ぬ話であり、人を殺す話であり、そこには善人も悪人も戦闘員も非戦闘員も無かったからです。理不尽な死や無駄と思えるような死もありました。後味が悪い部分も無かったわけではありません。

しかし、それでも宗介とかなめの物語としては見事にやり遂げてくれました。それ以上は望むべきでは無いのだろうと思っています。思わせぶりに書かれた伏線などが回収されていないと思える部分が無くもないのですが、別にそれでも一向に構わないのかなという印象すらあります。そんなものは”今”の宗介とかなめにとって些細な事だと思えたからです。

ああ、それから

作品と全然関係ない私事でなんですが、上巻を発売日に買ってはいたものの、読んだあとで一ヶ月後の下巻の発売を心穏やかに待つ自信が欠片も無かったので、下巻を手に入れるまで読むのを封印していました。こうして下巻も無事発売されてようやっと読むことが出来て幸せです。この一ヶ月自分でも良く耐えたと思いますねぇ・・・。

目次を見た瞬間は「メカ設定」の文字が二つも見えたので、これはもしや某紅的な分冊割り増し商法の再来か!? とかドキッとしましたが、実際にはただの杞憂だったのでホッとしました。・・・ここまできてそんなことやられたらどうしたらいいか分からなくなっちゃいますもんね・・・。

まあそんなつまらない心配をよそに今回もきっちりとやってくれました。下巻の宗介の台詞、

「これから台無しにしてやるぞ」

から始まる一連の部分は痛快以外の何物でもありませんでしたね。最近はゾンビを殺したりしている某漫画家による某漫画の某少佐を彷彿とさせるような台詞を宗介が口走っていましたが、この場面、この瞬間にはこれ以上相応しい言葉なんて無いんじゃないかと思えるほどでしたね。

総合

言うまでもなく5つ星ですね。

ライトノベルに最近興味が出てきているけど何を読んだらいいか分からない、という人に真っ先におすすめしたいシリーズが出来ました。一時は完結しないんじゃないかとも思った作品でしたが、よくぞ最後まで書き上げてくれたという感謝の念でいっぱいです。ちゃんとエンドマークのついた作品なら安心して勧められますからね。

今後の予定として短編集やら、もしかしたら後日談みたいなものも書くかも知れないという事でしたが、それはそれとして楽しみに待つとして、とにかく最後まで走り抜けてくれたキャラクターたちにありがとう、お疲れ様と言いたい気持ちです。最後の最後まで泥臭いヒーローとヒロインでしたが、それがとても心地よかったです。

イラストは今更言うまでもない四季童子氏ですが今回は絵が多めですね。よくよく見てみるとこの人の絵、今やなんとなく古くささを感じなくもないのですが、やっぱりこの作品にはこの人の絵しかありませんね。

2008-02-20

フルメタル・パニック!(10)せまるニック・オブ・タイム

ストーリー

ミスリルのクルー達は息を吹き返しつつあった。

各地に散って潜伏していた兵士達は、テッサ率いるトゥアハー・デ・ダナンと復活した宗介によってもたらされた一撃に、世界各地から喝采を送っていた。そして徐々に集結し出すミスリルの兵隊達・・・。

そして対するアマルガム側には異様な動きが見え始めていた。どこにトップがあるのか分からない得体の知れない組織だったアマルガムは、いつしか一つの頂点らしきものを作り出しはじめ、それはミスリル側からするとようやく見え始めたアマルガムの「隙」だった。

状況の動くなか、各地に散った調査員によってもたらされた一つの情報がテッサをある土地へと導く。それはロシア。奇しくも物語の始まった北の国で、宗介やかなめは遂に「ウィスパード」の真実とも呼べるものに遭遇する・・・。

まあその、続きを読むにしておきましたが・・・「続きを読む」は発売日過ぎたので解除です。

色々な意味でネタバレが致命的な話ですし、この感想は可能なかぎりネタバレを避けるつもりですが、読み終わってから読んだ方がいいでしょう。そうそう、それから深読み、分析の類いは一切ありません。現状では「素直に読んだらこうなった」です。

うーむ・・・

まあ物語の最初の部分からほったらかしになっていた「ウィスパードとは何か?」という疑問が一気にこの話で氷解する事になります。つまり「じゃあ誰が彼らに『ささやいた』のか?」って話ですね。

実体を知るとその作り自体は・・・非常に深く練り込まれてはいるものの、結構使い古されたネタと思われます。でも描写の巧みさがそれを忘れさせてくれる辺りが優れたライトノベル作家という感じでしょうか。

この本の作者が確か言っていたと思いますが、結局の所ライトノベルってジャンクフードなんですよね。みんなで騒いで食い散らかしてナンボという。でもそのジャンクフードだって商品化に至るには凄まじい量の試行錯誤があるはずで、それを感じさせる出来です。「あれ? 気がついたら沢山食べてた! うわー太る〜!」みたいな。それってやっぱり凄い事かなと。

でも個人的には「うーむ・・・」なんですよね・・・。

何故かって言うと

ストーリーを盛りあげるために今までに支払われたもの——それは「負債」として物語にのしかかります——が、この巻をもって殆ど返済可能領域限界ギリギリの所に届いてしまったと思ったからです。いや、ひょっとしたら返済不可能かな? 並みの作家なら不可能でしょう。

もちろんこれは個人的な感覚ですが、ここまでやられたらもう生半可なラストでは許せない感じです。

物語は確実にラストシーンに近づいている訳ですが・・・もし、もしですが、そのラストシーンをつまらないと思ってしまったらどうしたらいいんだろう? この物語が精神的な不良債権になってしまったらどうしよう? というような不安がムクムクと頭をもたげてきたという事です。

でも

そんな私という読者の気持などほったらかしで物語は進んでいきます。

宗介も、かなめも、テッサも、みんな変わっていきます。状況は常に動き続け、予断を許しません。

今回、この作品の中心とも呼べる重要な人物の複数に大きな変化が訪れます。しかしそれは本当にネタバレど真ん中なのでここで言及するのは避けます。

誰一人として先を予測出来るような状況に無く、キャラクター達は理不尽な神とも言える存在に嵐の中の小舟のように振り回されるばかりです。もちろんここで言う「神」とは作者に他ならない訳ですが・・・何やら本当に無慈悲で残酷な神ですね。

しかし

今まで作者はそんな無慈悲とも言える容赦の無さを発揮しつつも、最後の最後で必ず読者の期待を良い方に裏切ってくれました。

これから綴られるであろう物語で今までの全てを吹き飛ばし、素晴らしい未来を見せてくれることを祈るだけです。

・・・それでも、失ったものは大き過ぎますが・・・そこをなんとか飛び越えて、今まで見た事も無いような青空を見せて欲しいと願ってしまいました。作者が残酷な神なら、それに付いていく私という物語の消費者も貪欲な餓鬼という事でしょうか。

総合

星4つ。星はあの人に捧げます。

全体的に好きとは言えない展開となりましたが、分厚い本にも関わらず読了にかかった時間は僅かだったように錯覚しました。

前巻の燃え上がるような描写はなりを潜め、沈黙と忍耐とで物語は彩られます。前作がロックンロールなら、この本はブルースですかね。

この話にあるのは、僅かに訪れる幸せな時間、一瞬の生と死の交錯、まるで祈りのような瞬間に訪れた閃き・・・そして極限まで研ぎすまされた魂の叫びです。あの人の一瞬を見逃さずに目に焼き付けましょう。

そしてそれでもまだ物語は続きます。私たちも息を凝らしてその行く末を見守りましょう。何故「ささやく者」となったのか、何故ささやかなければならなかったのか。大事なところはやっぱりまだ隠されたままです。それでもやっぱりやっぱり最後の希望は彼と彼女の中にある「何か」に託されるのでしょうか・・・。

最後に本編にてテッサが口にした——まるで自分達を支配する「残酷な神」に抵抗するべく、キャラクターが勝手に動き出したかのような——言葉を希望の灯火として、この感想を締めくくりましょう。

「これが偶然なのか、一種の運命なのかはわたしにも分かりません。わたしはこう見えても神を信じています。どんな形であれ神という存在がいるのなら——サガラさん、あなたはわたしたちを救うために、神様がつかわしてくださった救世主なのかもしれませんね」

感想リンク

2007-03-20

フルメタル・パニック!(9)つどうメイク・マイ・デイ

個人的には既刊本の感想が埋まっていない状態で最新刊の感想を書くのはルール違反にしているのだけど、実に燃えてしまったので書く。

これだ!こんな熱くってファッキンな展開を待ってたんだこのクソッタレ野郎!待たせ過ぎだ!

いまさらストーリーの紹介が必要か?

とにかく

  • 宗介は怪我で衰えた体を鍛え直し
  • かなめは絶望を味わいながらも目覚めつつあり
  • ミスリル連中は静かに静かに牙を研ぎ
  • アルは小さな言葉を吐き出し始め

そういう話です。

ジジイによるジジイのためのジジイの本

短編集でテッサにセクハラの嵐を食らわしていたジジイ連中が帰ってきます。いやー、こういう古参兵の存在って堪らないものがありますね。サイアクのクソジジイですが、一個大隊が側にいる位の安心感があります。今回は影の主役と言えるのではないかというコートニー”ファッキン”じじいの言葉を引用してみます。

「周囲には敵だらけ! 捕まったところで命はない! 体力はとっくに限界! 水もメシも弾薬もない! どうする!?」

「…………」

「さあどうするね? おまえさんはどこぞの先生が決めた理論に従い、医学的にこれ以上戦えないから、諦めて自分のドタマに弾をブチ込むのか?」

「それは……」

「そこから先だ。すごいことが起きるのは、いつもそのから先なんだ。全能なる我らの神は、ちゃんとそこまで用意しておいてくださってる。いわば神が人間に与えたもうたスーパー・ファッキン・チャージャーだ」

もう一つ、別の変態じじいの台詞もおまけ。

「書類をちょろまかして持ってきたぞ! さあ、テッサたんはどこだ?」

「それがな、いないんじゃ」

「なんだと? ここで待ってるって話だったじゃないか。M6A3を持ってきたら、彼女がナイチンゲール風の古式ゆかしい看護婦衣装で、わしをあれこれ看病してくれると——」

「いやすまん。嘘だ」

・・・しっかし、本当にクソジジイ共だな!しかしそこが最高だ!

ジジイももちろんいいですが

宗介もかなめも良い所を山盛りで見せてくれて、ここ2冊位の鬱屈した空気を吹き飛ばす寸前くらいまでは行ってくれます。ああ、そうそうこういうの?こういう無茶で馬鹿でどうしようもない位最悪なのに、それでも求め合おうとしてしまう二人の姿が見たかったんだなあ、としみじみ。

キーワードは、

前へ! 前へ! 前へ!

です。

もう一つ引用。ラスト近くの最高のやり取りの中での宗介の心を去来する想いを引用しておきます。

そうだ。なにを迷うことがある? 何百万人死なせようと。どれだけの困難がこれからもあろうと。彼女をこの手につかむためならば、いったい、なにを恐れることがあるのだろうか?

これだよ!これ!これこそがラノベ!これこそが若者の傲慢さ!顧みない愚かさ!一意専心する美しさ!ロックンロールだ!

問答無用の

星5つ。

状況はまだまだ予断を許さないし、緊張感は相変わらずなのだけど、それでもとても面白い。ああ、帰ってきた!宗介とかなめが帰ってきたぞー!総員、突撃せよー!

感想リンク

今日もだらだら、読書日記。  booklines.net  ライトノベル名言図書館  灰色未成年  ウパ日記  積読を重ねる日々