パブリック・ヒストリーのあり方に疑問があります。そのような議論の場に参加することができるひとは、やはり知識人寄りの一般人なのではないでしょうか。

パブリック・ヒストリーは、そうした概念でも活動でもありません。すでに世界では幾つかの実践例がありますが、例えば、ある河川の水産資源をめぐるファースト・ピープルズ(先住民=狩猟採集民)と白人地域住民、自然保護団体、行政関係者、研究者をめぐる意見交換では、それぞれの選ばれた代表や、あるいは抑圧の情況を回避するために、地域自治体や集会や部族の会合などへ、それぞれの代表が訪ねていって説明や意見交換を繰り返す、ということがなされています。確かに、どのような意見交換の場を設けるのか、何を目的に議論するのか、どういった形で意見交換を行ってゆくのかは難しいことで、ケース・バイ・ケースの割合がかなり高い。そのためにも、各国・各地域におけるケース・スタディを蓄積し、常に参照しうる材料を増やし、公開してゆくことが肝要です。