〜企業の闇とか子供の暴走とか〜
意外なキャラクターが「あっち」に旅立つ。もっとも、これまでイリーガルに強くかかわる話*1でしばしば妙な動きを見せていたので、流れとしては納得できる展開だ。これまで登場した一つの小道具がサブタイトルに繋がるビジュアルもいい。
物語の中心にいる人々が彼岸に近づいているので、日常の象徴としてフミエが必要と示す回。最初に主人公を電脳探偵局に引き込んだフミエが最も普通な現状が面白い。
それにしても玉子17歳が甥に近づく雰囲気が怪しすぎて、あてられてしまった。ハラケンの隠したいことを暴いたり、道具を取り上げたりと過剰な母性も感じる。
作画監督は秦綾子。通常よりは名前的にさびしい作画陣でありながら、豪勢な破壊エフェクト*2で映像的な充実度は高い。
ベテランアニメーター回には地味でも細やかで巧みな演技、若手アニメーター回には荒く激しくも力強いアクション、という配分をしている様子。
アニメーター逢坂浩二死去。
【訃報】逢坂浩司さん: 編集長メモ
最初に情報で触れた時からもちろん衝撃的だったし、『アニメーションRE』*1でのインタビューや連載マンガなどを思い返したりしていたが、当初の気分は落ち着いていたように思う。
しかしふと『機動武闘伝Gガンダム』の2期OP*2を見返した瞬間、逢坂氏の仕事が二度と見られないことを実感して泣けた。人が亡くなった喪失感というのは時間差でくるものだ、とよく思う。
大阪のアニメ制作会社アニメアール*3で活躍。主にサンライズ系の作品で作画監督やデザインを担当。『機動戦士Vガンダム』『機動武闘伝Gガンダム』のキャラクターデザイン、『カウボーイビバップ』*4の作画監督が代表作だろう。
最終的には老舗アニメ会社サンライズから分離したアニメ製作会社BONESに移り、代表取締役に就任。経営に関わりつつも、コンスタントにアニメーターとして活躍し続け、腕の衰えを見せなかった。土曜日18時『天保異聞 妖奇士』で見せた安定的な仕事は記憶に新しい。
アニメーターとして良い人生を歩んでいたように見えただけに、早すぎる死が悔やまれてならない。
アニメートへの感想では、うるさくない描きこみ、適切につけられたタッチという印象が強い。劇画的な絵柄で描く時も、アニメ絵として破綻をきたしていない。ちゃんと生き生きした人物として動くのだ*5。
うつのみやさとる以降のシンプルに整理された絵柄とはまた違う。一時期のアニメに見られる自己目的化した描きこみから決別しつつ、線を重ねて表現することを忘れず正統進化したアニメーターという印象だった。
復讐物語としての『機動武闘伝Gガンダム』
世界の覇権を賭けて、国家単位で巨大ロボットが地球をリングに*1戦うTVアニメ。
今川泰宏監督、逢坂浩司キャラクターデザイン、大河原邦彦メカニックデザイン。
主人公操縦の巨大ロボットが主人公2代目ロボットにお姫様ダッコされたり、ゲルマンなのに忍者だったり、オランダがとてもとても弱かったり、かなりのトンチキアニメ。
しかし代理戦争に苦しむ市井の視点から物語が始まったり、衰えたチャンピオンといったファイターの悲哀も描かれ、政治工作にはしる各国の思惑も妙に生々しい。
ふざけているようでいて*2、語りたい主題には愚直。そういうアニメだった。
そんなハードな雰囲気もある序盤、主人公は代理戦争に身を投じながら、写真の男を追っていた。その男は主人公の兄であり、主人公をふくむ家族を裏切った虐殺者である。主人公は仇である兄を探し、倒すために戦い続ける。
あくまで話を進める小道具にすぎないが、仇討ちという要素が主人公のモチベーションを支え、視聴者に感情移入させやすくもする。私個人は、現実に仇討ちが行われてはならないと思っているが、仇討ちを行いたい被害者の心情は理解できる。そして虚構においては自由が保証されるべきだと確信しているのだ。