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法華狼の日記

2008-03-25 思うところは色々あったが知ってしまったので沈黙しない

[][]自分で耳をふさぎながら「沈黙してる」と騒ぐ人

チベット問題に対して平和団体が「沈黙」しているというコピペが流布されている。現在「チベット 平和団体」等の単語を使うと、google検索で上位に来る。

チベット暴動で住民多数死亡! 平和団体の皆さ〜ん、今こそ行動ですよー | Nereide Design Blog*1

チベット大虐殺での反戦団体・人権団体の動き

http://homepage3.nifty.com/peace_walk/Welcome.html

9条ピースウォーク → 無視

http://pwkyoto.com/

ピースウォーク → 無視

http://www.jca.apc.org/~husen/index.htm

不戦のネットワーク → 無視

http://ameblo.jp/yes-peace/

ピースウォーク金沢 → 無視

http://peacetea.hp.infoseek.co.jp/

平和を望む東大生の会 → 無視

http://www1.ocn.ne.jp/~sinryaku/stophoufukuwar.htm

ストップ!「報復」戦争・市民の会 → 無視

http://sensouhantai.blog25.fc2.com/

反戦な家づくり → 無視

http://www.anti-war.jp/

反戦共同行動 → 無視

http://peaceact.jca.apc.org/

反戦・平和アクション → 無視

http://d.hatena.ne.jp/posada/

反戦と生活のための表現解放行動 → 無視

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/

反戦塾 → 無視

http://www.amnesty.or.jp/

アムネスティ → サイト閉鎖?

http://azisai.s10.xrea.com/

あじさい → 閉鎖

・・・いやいや、笑い転げてしまいますね。

何のための団体だったのか、よく分かります。

これらの団体はこぞってイラク戦争、沖縄米軍にのみ声明を出しています。

中国政権の平和こそが、これらの団体の願いである、という訳です。

(中には日銀総裁とか、ドル安などに反応しているところもありました。さぁ!チベット問題にもすぐ声を上げないと!、平和に関する最もタイムリーな話題なんですよ!、さぁ(笑)!!)

もちろん、たとえばアムネスティジャパンはチベット問題に以前から強く取り組んでいる*2。結果的に、平和団体を非難している側こそが、チベット問題に昔から真剣であったわけではないのだと露呈した。

また、個人であれ団体であれ、構成するのが人間である以上、有限な存在でしかない。それにゆえに全ての社会問題について言及できるわけではないという現実もある。この点はApeman氏が強く皮肉っていた*3

そもそも、情報が入ってから行動に移すまで即日で可能という考えが不思議でもある。特に今回は報道機関が事件現場からしめだされ*4、中国政府の意図が入ったような映像しか流されなかった。この点が、たとえばイラク戦争開戦時と大きく違うところだ*5。また、イラク戦争に対して現在反対している主張や行動が、全て開戦時から続けて行われているというわけでもない。それとも、今回の虐殺事件に対してだけは、脊髄反射的に行動するべきとでもいいたいのだろうか*6


一方で最近、アイヌ民族の認知運動があり、朝日等が報じていた。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

「先住民族と認めて」 首都圏のアイヌの人々が署名集め

2008年03月24日00時04分

 アイヌ民族を日本の先住民族として認めるよう政府に要望するため、首都圏に暮らすアイヌの人びとでつくる「アイヌウタリ連絡会」(丸子美記子代表)のメンバー約30人が23日、手縫いの刺繍(ししゅう)を施した「アミップ」(民族衣装)を着て、東京有楽町の街頭で署名集めをした。

 国連は昨年9月の総会で「先住民族の権利に関する宣言」を採択。だが、宣言に賛成した日本政府の動きが鈍いことから街頭活動にのり出した。

 首都圏に住むアイヌは約1万人と推定されるが、差別体験から隠して暮らす人が少なくないという。千葉県の村上恵さん(23)は「政府が認めないため、アイヌがアイヌであることを堂々と語れない。先住民族でないなら私たちは何なんでしょうか」と話した。

 会では、北海道洞爺湖(とうやこ)での7月のG8サミットに向けて政府や国会議員への働きかけも強める方針だ。

情報量は少ないなりに、報じたられただけでもまだ良いと思う。

驚いたのが、この報道に対する反応だ*7

痛いニュース(ノ∀`) : 「日本の先住民族と認めて」 首都圏のアイヌの人々、民族衣装着て署名集め…政府の動き鈍く - ライブドアブログ

痛いニュース」は、らしいといえばそれまでの反応だが……*8

はてなブックマーク - asahi.com:「先住民族と認めて」 首都圏のアイヌの人々が署名集め - 社会

はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):「日本の先住民族と認めて」 首都圏のアイヌの人々、民族衣装着て署名集め…政府の動き鈍く

少数民族に対する態度が矛盾しているとブックマーク内でも指摘されているが、ある面では一貫しているともいえる。ある種の人々にとって、自分が知らないこと、もっといえば目に入れたくないことと、存在しないことは同じことなのだ。

チベット事件のまとめガイドライン - 反戦・人権団体の動き

このページに批判が多いので説明しますが、別に叩きたくてリンク貼ってるわけじゃないんですよ。平和を愛する人として行動を起こしてもらいたいだけです。

誰でも編集できるというwikiの特徴として(今は一時凍結しましたが)「→無視」と書いてある言葉は投稿されたときからあるものです。

「リンクを作った人にとっては『→無視』に見えた」ということが重要なんです

できるだけ「→無視」が消せるように要所に連絡中なのですが、せめてうちにリンクだけでも、、

「見えた」ことを根拠に「無視」と書く態度まで、どこまでも一貫している。

知らないのであれば、せめて「沈黙」してほしかったものだ。「沈黙」という態度であれば、おそらく無知に対して激しい批判がされることはなかっただろう。年末年始にかけ、はてな界隈で起きた南京事件騒動を記憶している人も多いと思う。そこで批判されたのは、無知をかさにきつつ沈黙もしない、という態度に対してだった*9ことを思い出してほしい。

この「チベット事件のまとめガイドライン」もまた、チベット問題以外の、様々な社会問題が軽視されている場合に対して「沈黙」している。その二重基準はさておき、「沈黙」という行為それ自体に対して批判するつもりはない。

人間が有限な存在にすぎないという現実が悲しいばかりだ。


「沈黙」を批判することが一概に悪いとも断言したくない。「沈黙」よりは「正答」がいいだろうことも、「正答」を目指すべきだろうことも、また確かだからだ。

たとえば私は、東ティモール問題について全くエントリを書いていない。多くの報道がなされ、ラモス・ホルタ大統領は依然として重態で、非常事態宣言も30日延長されたばかりと、かなり状況は悪いのにだ*10。報道を追いながら意見を書かないことに、忸怩たるものを感じないではない。

『特派員が見た「紛争から平和へ」 人々の声が世界を変えた!』伊藤千尋著 - 法華狼の日記

様々な報道を見るたびに、世界の各地で多くの問題が生み出され続けていることを知る。

世界は変えられるだろうか。

[][]『ブラックジャックによろしく』【精神科編】9巻〜13巻

精神病と刑事事件と事件報道をめぐる物語が展開しており、色々と興味深い作品だった。

心神喪失で無罪とされた被告に対してよくある世間からの偏見を逆転させた11巻の展開は、一種のミステリとして面白い。司法の怠惰と、世間の偏見こそが事件を生み出した。

また、被害者遺族の声による厳罰化を主人公に非難させ、遺族の感情は否定されるべきではないと叱責される場面を入れる気配りにも感心した。この作品らしく、様々な立場からの極論ともいえる主張をぶつけあって物語が進むのだが、今編は医者や患者や家族にとどまらない広い社会を舞台としているため、割り切れない問題が通常より多く、それが結果として作品に深みを与えている。


何より、ジョン・レノンになりたい報道人、妖精を待ち続ける統合失調症の少女、少女のピーターパンになろうとした男。それぞれのモチーフが結実し、主人公の物語とも重なるラストが美しい。

一面の見開きの一面の白。そこに、ほんのちいさく書かれた一つの言葉。

無力な者からの、無力な者への、力強い肯定。


恋愛描写で精神病者に聖性を求めるかのような展開があったり、モデルとおぼしき現実の事件との区切りが弱かったり、感動できる物語性が現実との距離を美化で失いかねなかったりと、疑問点もないではない。

それでも、全体としては良く出来ていると感じたし、面白い作品だった。


13巻、「屋上の戦士」と題された章に医師と記者、老いた二人のやりとりがある。

何も

変わりませんか

……?

ある程度

反応が

あった事は

事実です……

ですが

何かが変わったかと言うと……

景色は

昨日と同じ

ままです……

だけど

10年前とは

ちがうはずです……

(中略)

変化を

感じたければ

変わらずに

いる事です……

この先

どこへ

行っても

……

自分が

変わらなければ

それでいい……

やり方は違い、確信犯と非難したことさえある相手と左手で握手し、「同じ未来」を見つめていると、二人は互いに確信した。

……最近、こういう力強い物語を好ましく思えるようになった。

*1:あくまで一例。対象の主張を調べる前から「沈黙」ならばまだしも意識的と思わせる「無視」という単語を用いることなど、表記等の問題点もある。このページ単独では、コメント欄で加藤紘一議員宅に対する放火行為を陰謀論で片づけている時点で話にならないと切って捨てるべきかもしれない。

*2http://www.geocities.jp/aijptibet/index.htmlのように特設ページも作っている。

*3http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080319/p1有限な能力で何を語るかということを視野に入れた議論はコメント欄にて。

*4:本来これ自体が批判の理由となるのだが。

*5:これは同時に、中国と比べれば、米国が圧倒的に自由な社会であることも示している。念のため、その自由さが完全なものであるということとは違う。

*6:実際、よく調べないでデモに参加しようとした結果、困った事態になった人もいる。http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20080323/1206292114

*7:本題とは関係ないが、ゲームキャラクター「ナコルル」を無批判に引く行為もけして誉められたものではない。映画『パールハーバー』で日本軍について学ぶようなもの、といえばわかるだろうか。制作者に差別的な意図は無くても、偏見や誤解を生みかねないことに気をつけなければならない。もちろん、虚構に入り口としての価値があることも確かだとは思う。

*8:などと書いたものの、こういう態度こそ意識的な……「無視」と呼ばれる態度かもしれない。

*9http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080107/p2で「知らない問題について評論家になる」と端的に指摘されていた。

*10反政府勢力は力を失いつつあり、ラモス・ホルタ大統領への暗殺自体が最後の反抗とは見られているが。