法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『NHKスペシャル』日本とアメリカ 第2回 日本アニメ vs ハリウッド

NHKスペシャル
日米関係を取り上げる『NHKスペシャル』3回シリーズの2回目。題材に興味があった今回分だけ視聴したので、シリーズ全体で見ればまた違った感想を持つかもしれない。


マンガ『鉄腕アトム』をハリウッドで3DCG映画化しようとして、市場優先の米国側制作者達と、原作尊重の日本側版権保持者の間で起きる軋轢……
OVAアフロサムライ』を米国市場で売り出すために米側プロデューサーから出された多くの指摘や注文変更に翻弄される日本の制作会社……
一見すると米国の無理解に日本側がふりまわされている構図だが、逆の立場から見ても同様の気持ちがあるだろう。せっかくのマーケティングを無視して制作開始を公開直前まで遅延させたり、声と口が合わない不自然な描写にこだわらない日本側に、米国側も困ったのではないだろうか。日本と米国の相克というより、文化を超えて共同制作する際に必然的な軋轢と思える。
ハリウッド映画が企画だけで何年もかかることや、途中で何度も監督や主要スタッフが交替する理由が感覚的にわかった。マーケティングを意識すれば作り手と売り手が衝突する上、広い市場で売るため多角的な視野を持つスタッフが互いに意見を戦わせ、意識を統一させるだけで時間と手間を食う。


細かい技術面では、『アフロサムライ』でリップシンク*1を用いるため、俳優の台詞を一音ずつ刻んで時間を計り、作画していく様子が面白かった。ここでリップシンクロにかける手間が膨大なことを理解できたおかげで、後にマーケティングのため配役が変更されて映像を修正するスタッフの大変さもわかる。

*1:アニメキャラクターの口を台詞と完全に同調させて動かす技法。