2010-11-02
■[アニメ]『探偵オペラ ミルキィホームズ』の脚本構成がすごすぎる
1回の放送ごとに複数の物語を入れてネタをつめこんでいくTVアニメに多い手法ではない。最初に提示した要素からキャラクターを転がしていきながら、制限をかけることなく行動を飛躍させていき、それでいてきちんと物語は閉じる。それも1話完結ではなく、ちゃんと前後の話と一定の繋がりを見せる。
しかも、ただのギャグに見せかけて、きちんとメインキャラクターの紹介を1話ごとに1人すませながら、新登場させたキャラクターの説明もこなしていく。ギャグを優先してキャラクターの心情を矛盾させるような描写も実はない。
パロディが主として話題になっている第4話「バリツの秘密」も、地味に構成がよくできていた。
たとえばヨコハマ大樹海について説明する台詞の時点で、後に描かれる一見して脈絡のない出来事の全てが登場している。ただ豆知識を長々と語っているだけに見せて、事件の前提や真実を堂々とまぎれこませる京極夏彦作品を思わせる技法。危機を回避する伏線にいたっては、危機が起きている最中にパロディじみた映像として再提示までしている。単にギャグだから御都合主義でも許される、といった描写ではないのだ。
ミルキィホームズで今回登場しないメンバーを物語から退場させておく展開でも伏線が見られる。警察捜査へ勝手についていって縄で縛られることと、その縛られた縄を食べること。後に監獄へ囚われる前ふりであり、縄を食べるほど飢えているのだから食べ物を利用した罠へ簡単に引っかかり外へ出る気力も失ってしまうことに説得力が出る。この縄を食べる描写はバリツのパロディにまで繋がるのだから、このような伏線を思いついたスタッフには驚嘆せざるをえない。いや普通なら思いついても恐くて使えない。
パロディの選定にしても、ただ宮崎駿関係という趣向かと思わせつつ、ミルキィホームズ登場人物のモデルとなったシャーロック・ホームズかアルセーヌ・ルパンがらみという共通点を持っている。『ルパン三世 カリオストロの城』はもちろんのこと、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』すら宮崎駿が演出家として関わった『名探偵ホームズ』の併映作品という無駄な繋がりがある。
何の意味もない出来事を並べるだけではナンセンスさは機能しない。何らかの基礎の上で飛躍し、固定観念からずらしてこそ笑えるのだ。
■[映画][戦争][近現代]『ノー・マンズ・ランド』
ボスニア軍とセルビア軍、両陣地の中間にある無人の塹壕。ひょんなことからその無人地帯へ取り残された数名の両軍兵士。彼らは間抜けに自分勝手に必死に生きのびようとするが、周囲を巻き込みながら事態はひたすら悪化していくばかり。
ユーゴスラビアで報道カメラマンとして活動していたダニス・タノヴィッチ監督の、初映画作品。2001年に公開され、カンヌ国際映画祭脚本賞等の様々な映画賞に輝いた。
上映時間が100分以内で、近年の戦争映画としては短めな内容。冗長にならず、よくまとまっている。
直接的な危機は地雷1つだけ、それをしかけた存在はすでに塹壕から消えている。しかし解除のしようがなく、かといって塹壕から去ることも難しく、残された兵士達は緊張した立場に置かれる。そして両軍兵士の立場がいれかわり続け緊張感を保ちながら、戦争をとりまく国連やメディアも登場しながら状況は混迷を増すばかりで、皮肉な結末にいたる。
会話は通じて共感する場面も少なからずありながら小さなきっかけで命をかけた衝突を始める塹壕の中。すでに戦闘が停止している牧歌的な草原に様々な思惑が入り乱れてディスコミュニケーションを生む塹壕の外。極めて狭い場所を中心とした騒動で、ボスニア紛争の縮図が描き出される。
ともすれば美化に繋がる悲劇ではなく、乾いた笑いを生む喜劇として戦場を描き、戦争の虚しさをよくあらわす。もともと限られた要素から物語を展開していく作品全般が好きということもあって、最後まで興味深く見ることができた。
あまり予算がある作品ではなさそうだが、舞台が限定されていることもあって粗が気になる場面はない。塹壕*1をしっかり作りこんで兵士の姿形にも気を配り*2、要所で大規模な砲撃や戦闘車両も映るので戦争映画としての満足感もあった。
1つだけ不満をいえば、落とし所の見当が途中でついてしまい、少し印象が弱く感じたくらいかな。もちろん映画の結末も状況として充分に後味が悪いので、変などんでん返しで奇をてらう必要はないとは思うが。