法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』好きでたまらニャい/のび太の結婚前夜

短編の再放送と中編の新作、長めの映画紹介と合わせた映画SP第三夜。OPも今年の映画OPを流用したものらしく、子供たちが描いたロボットの絵を使っている。ただ、あくまで映像を長く流しているだけで、特に目を引く新情報はなかったかな。
作品本体は、ひさしぶりの地上波ゴールデンで放送されたTVアニメとして、かなり楽しめる作りだった。


「好きでたまらニャい」はリニューアル直後、2005年に放映された短編の再放送。ドラえもんのキャラクターに対する固定観念をくつがえす内容が、いかにもリニューアル初期ならではの良さと感じさせる。
物語は、原作でも特異な内容。連載初期で、幼年誌掲載だったためにキャラクターの性格が現在の印象と異なる。恋に狂って挙動不審なドラえもんは他の回でも見られるが、なぜかのび太がドラ顔……じゃなかったドヤ顔*1で恋愛作法を教授する。しずちゃん相手のシミュレーションで的確に女性をおだてて見せる姿は、原作でもインパクトあっただけに、色がついて動いてしゃべるとシュール。
コンテ演出の玉野陽美はWikipediaを見ると今話の初放映と同じ2005年に亡くなっているらしいが、はっきりした情報が見つからなかった。作画監督は針金屋英郎で、原作初期の表情豊かなキャラクター作画が楽しめる。のび太が画面奥に歩いていくような地味に面倒くさいカットも破綻していない。


のび太結婚前夜」は、水野宗徳が脚本。リニューアル前のTVアニメや劇場版が娘と父の補完に注力していたところを、のび太のキャラクター描写に注力したところが面白い。原作の意外なところを拾って広げることで、古くからのドラえもんファンだからこそ新鮮に感じるし、同時に納得できる。
まさか冒頭の引っかけでしかなかった劇を中盤の回想で拾って、しずちゃんに対するのび太の優しさを示すとは思わなかった。学校の劇であれば父親が参観しているだろうから、のび太の優しさを知って娘に語りかける説得力も増す*2。ギャグで落とした結末も前後して未来で同様のシチュエーションを見せて、のび太の成長を感じさせつつ、バルコニー越しの告白で舞台劇らしさをかもしだす。
コンテ演出は腰繁男。長回しでキャラクター芝居を見せる。総作画監督でもある丸山宏一が作画監督をつとめ、キャラクター作画はさすがの出来。ただ、アクションで見せる内容ではなかったので、他の作画監督でも良かったかもと思った。

*1:……正直すまないと思っている。

*2:のび太としずか父が会話した場面は、原作だと通して1回くらいしかない。しずか父は登場回数の極めて少ないキャラクターなのだ。