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法華狼の日記

2011-04-19

[][]出崎統、死去

享年67歳。肺癌だったという。

ページが見つかりません - MSN産経ニュース

 「あしたのジョー」「エースをねらえ!」などを手掛けたアニメーション監督、出崎統(でざき・おさむ)さんが17日午前0時35分、肺がんのため死去した。67歳。通夜は20日午後6時、葬儀・告別式は21日午前9時半、東京都府中市多磨町2の1の1、多磨葬祭場思親殿で。喪主は兄、哲(さとし)氏。

 昭和18年、東京都出身。高校在学中に貸本漫画家としてデビュー。38年、旧虫プロに入社。テレビアニメ創生期から活躍し、45年、「あしたのジョー」で初監督。止め絵などを多用した独特の演出技法が高い評価を受け、その後も「エースをねらえ!」「ガンバの冒険」「宝島」「ベルサイユのばら」などを次々と手掛けた。

まだ働ける年齢だが、不思議と衝撃は薄かった。昨年に『COBRA THE ANIMATION』の監督を降板したという情報を知ってから、無意識に覚悟していたのかもしれない。あるいは、過程が全てであって結末は結果にすぎないという作風から受ける印象のためかもしれない。


上記記事にかかれている範囲は主に1970年代までの仕事だが、1980年代から1990年代にはOVAやTVSP作品でマニア向けに手堅い仕事を行っていた。特に作品を構成するにあたって原作からスタッフワークまで完璧だったOVA『ブラック・ジャック』は深く印象に残っている*1

2000年代に入ってからも精力的に活躍していた。2005年にNHK総合で全国放映された『雪の女王 The Snow Queen』*2や、2009年にフジテレビのノイタミナ枠で『源氏物語千年紀 Genji』を監督。しかもそれぞれの作品で全話コンテ*3を担当していた。

2005年と2007年には美少女ゲーム原作の劇場アニメ『劇場版AIR*4と『劇場版CLANNAD -クラナド-』*5も監督。いささか原作ファンからは不評も多い作品だったが、歳を重ねて挑戦を忘れない姿勢を示し、一定の成果を出した。

独特の演出技法は、過剰すぎて作品を作り物めいて見せることもあった。過去もパロディの対象になっていたし、近年は率直に低評価へ結びつけられた。あまりに偉大で精力的に活動していたため、他から受けた影響にすぎない技法を発明したかのように受け取られることも多かった。たとえば入射光は映画『イージー・ライダー』の影響だろうし、画面分割はカーレース映画『グラン・プリ』からの影響が色濃い。とはいえ、日本のサブカルチャーに残した足跡は、きっと影響を受けた者が意識しているよりも大きい。


いずれにしても、作家は作品を通して生き続ける。TVやDVDやインターネットを通して数多い作品群の一端にふれることができる。とりあえず無料配信されているものを紹介しよう。

遺作となった『源氏物語千年紀 Genji』は、フジテレビOnDemandにおいて初回を無料配信中。いきなり冒頭から光源氏のプレイボーイぶりを前面に出し、老いてなお前のめりな生き様を象徴している。

源氏物語千年紀 Genji - フジテレビオンデマンド

初期の演出参加作品では、バンダイチャンネルで『どろろ』の初回が無料配信中。モノクロアニメで他監督作品ということもあってか、出崎作品らしさは少ない。この作品そのものより、原作マンガの文庫版で手がけた解説が、あまりにも出崎作品らしい内容で印象的であった。バンダイチャンネルでは他にOVAと劇場版の『ブラック・ジャック』が有料配信されている。

「どろろ」 | 【アニメ】はバンダイチャンネル

そして初監督作品の『あしたのジョー』も、ちょうど無料配信サイトGYAOで全話配信を開始していた。1週間に5話更新という早さで、火曜日23時59分までに見なければならないが、まだ間に合う。配信中の序盤は原作に近い絵柄で特徴的な出崎演出は少ないが、それが逆に出崎作品の変わらない根幹が何かを感じさせる。

無料動画:映画、海外ドラマ、アニメほか|GyaO![ギャオ]

初回のドブ下から横木をナメて矢吹丈を見上げるカット等では、表現主義的に解釈されやすい出崎作品が薄っぺらな絵空事ではなく、物語中の現実を映しとっていることを感じさせる。

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時代性を考慮に入れれば、出崎監督が実写映画の技法をとりいれたことは安易な真似ではない。異なる表現媒体から技法を引いた先駆の一人という文脈でも読み解けるのだ。

*1:一挙に発売された序盤では、革命家の逃避行を助ける第3巻が特に良かった。公害に侵された地域において、支援の手が届かない少女を描いた最終巻も忘れがたい。それぞれの感想はこちら。『ブラック・ジャック』マリア達の勲章と、成長しない世界と - 法華狼の日記『ブラック・ジャック』マンガとアニメ、ふたりの「しずむ女」 - 法華狼の日記

*2:残念ながら同時期にTVアニメ『ブラック・ジャック』で仕事をしていた杉野昭夫キャラクターデザインEDのみを手がけて本編に参加せず、作画の弱い作品ではあった。童話らしいファンタジックなパートが、泥臭い旅のリアリティある描写におよんでいないきらいもあった。しかしアニメオリジナルキャラクターの吟遊詩人ラギをめぐるドラマは素晴らしく、一見の価値がある回も少なくない。

*3:ただし39話にわたった『雪の女王 The Snow Queen』では2回ほど連名で手がけていた。

*4:こちらで絵コンテを一部分紹介。アニメ演出の光と影〜押井と出崎のレイアウト〜 - 法華狼の日記

*5インターネット上の有志で実況する企画が2009年にあった。触発されて簡単に感想を書いたエントリはこちら。劇場版クラナドを見よう企画に関連して、劇場版AIRとの比較を少し - 法華狼の日記

くま(仮)くま(仮) 2011/04/19 19:01  文庫版どろろの解説は実際圧巻でした。特に「だいごかげみつ」周りが。

 そらそうと今日おろかにもミカドラジヲ最終回を聞いてしまい
 堀内賢雄「(Genjiの展開は)これで終りというわけではありませんから」
 出崎「あと千年たったらねまた(二期が)始まるかもしれない」
 堀内「(千年ってそれじゃあ)こん中で監督しか生きてらっしゃらない(笑)」
 櫻井孝宏「生きてないすねー出崎さんしかもう(笑)」
 という会話を聞いて大後悔中です。うう。

 おれはずっと「全12話で明石から女三宮まで突っ走りしかもナレーションは前作同様紫の上がやる『源氏物語千年紀Genji 2nd season』」か「後半完全原作無視で勝手に結末をつける大航海時代大河ロマン『七つの黄金境』」が来月始まると信じていたのに! のに!

アッツィーアッツィー 2011/04/19 20:29 一度でいいから出崎さんには劇場版名探偵コナンの監督をやってほしかったのに実に残念でなりません。できたら黒の組織が出演する奴をと思ってたのに。残念でなりません。

hokke-ookamihokke-ookami 2011/04/20 07:19 くま(仮)さんへ
>特に「だいごかげみつ」周りが。

前進するモチベーションが外的に用意されている(物語の骨格どころか設定レベルで結びついてる)百鬼丸と比べて、底からギラついたものが湧き上がているキャラクターでしたね。そこが出崎の興味を引いたのかもしれません。

>「後半完全原作無視で勝手に結末をつける大航海時代大河ロマン『七つの黄金境』」

正直、素直に『平家物語』をやれば良かったんじゃないか、と思っています。杉井ギサブロー監督や高畑勲監督も制作を希望して頓挫した題材ですが、出崎監督も作りたいという意向をどこかで表明していたと記憶しています(ネット検索した範囲では明確なソースが見つかりませんでしたが)。
『Genji』で当時はなかったはずの水風呂が怨念の治療で用いられたのは、平家物語で清盛の熱病を治療するエピソードの引用としか思えません。着物を柄ごと動かす技術も、鎌倉時代の鎧武者を動かすことを想定しているのではと思ったりして。

アッツィーさんへ
>出崎さんには劇場版名探偵コナンの監督をやってほしかった

……あああ! それは見てみたいです!! ハードボイルドになるかと見せかけて、ガンバよろしく少年探偵団が前面で活躍する熱いドラマなんかも出来そうです。
近年はトムスエンタテイメントの仕事ばかりだったので、真面目に登板しても不思議ではありませんでしたね。

くま(仮)くま(仮) 2011/04/25 00:12 >『平家物語』をやれば
 うむ! そりゃあ悪くない!
 えー以下ごくマジで言うのですが。
 出崎というのは前作の経験をわかりやすく活かす人間です。
 あの評判ボロカスだったAirには「宮中奥深くに閉じ込められた鳥女、それを警護する筈が鳥女を連れて逃げる北面武士、前に立ちはだかる僧兵の群、絶叫し押し通る武士」というシーケンスが。そしてこの展開は間違いなくGenjiに活かされている(最終回とか)
 そしてGenji最終回アバンタイトルの「アレ」は120%平家だった
 ということを思うと説得力が増します。いままさに義仲最期とか能登殿最期とかがアタマに。杉野絵で。

 ところで先日街角でCRあしたのジョーというものを目にして思ったのは「ジョーでパチンコ。それはつまり原作で巡査の口から語られていた「ジョーの台はガラスがはずしてあっただと」というのが完全再現され杉野入魂の新規作画が」でした

 あー。念の為申しますと私決して悲しんでいないわけではないですよ。

hokke-ookamihokke-ookami 2011/04/25 12:50 >いままさに義仲最期とか能登殿最期とかがアタマに。杉野絵で。

無数の矢ぶすまが画面いっぱいに。矢が刺さった瞬間、小林プロ(実は今年に入って解散してますが)によるハーモニー止め絵でカメラが3回ズームアウト。周囲の音が止まって、一呼吸あってからドウッと音を立てて頭から地面に倒れる義仲。……そんな映像が思い浮かびます。

>CRあしたのジョー

今流行のパチンコ提供による深夜放送で、本編にテロップで子供の遊興は禁止されていますと表示されたのが面白かったです。『カイジ』とともに、珍しくパチンコ化に違和感のない作品。

>念の為申しますと私決して悲しんでいないわけではないですよ。

それはもう(苦笑)。

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