法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『デジモンクロスウォーズ 悪のデスジェネラルと七つの王国』第39話 クロスハートの分裂の危機!水虎将軍の卑劣なワナ

騙されたと見せかけて、逆に敵を騙し返す主人公タイキの指導者描写は見事。仲間を信じようとする性格ならば、前回に仲間が述べた疑惑も検討するはずという流れで、キャラクター描写をぶれさせることなく陰謀を打ち破ってみせた。さほどキャラクターを成長させず、むしろ欠点と思われがちな性格を延長させることで事態を打開する展開は、米村正二脚本の特長だ。
ただ、作戦のディテールが甘いところも米村脚本らしくて、バリスタモンがハリボテを作ることができるなんて能力を唐突に出されても困る。たとえば前ふりしておいて大きな鏡を使うとか、それっぽくできなかったのか。
終盤に巨大化するスプラッシュモンとか、全体的に作画は良かっただけに、勝利する流れが雑だったことが残念。

『バトルスピリッツ ブレイヴ』第36話 魔羯邪神シュタイン・ボルグ降臨!

洗脳されて敵に回ったデュックが安易に仲間に戻らないまま退場しつつ、洗脳前のデュックが残した人材が主人公達を救うという流れが、地に足がついた逆転劇だった。家族のことも、そして中途で自ら消滅させた部下のことも、洗脳が解けずに迷わず切り捨てたからこそ、良かった過去が対照的に浮かび上がる。
予想の範囲内ではあるが、女王暗殺劇の真相も悪くない。もともと政治力を失った結果の暗殺劇であり、殺されたのが替え玉であっても、追いつめられ手駒を失ったことにかわりはなく、物語に緊張感が持続する。逆に替え玉の真相を明かさず、女王生存を隠すことで敵を泳がすという作戦へつなげたところも面白かった。
瓦礫につぶされたジェレイドと出会ったユースが、相手は殺した人間の固有性を認識していないと再確認しながら復讐を思いとどまった場面も印象的。たぎる復讐心を抑えた表情作画や、差し込む光と瓦礫の作り出す荘厳な光景も、キャラクターの心情をよく表現していた。
今回の作画監督は石川てつやだが、これまで同様に荒々しい描線が楽しめるだけでなく、キャラクターの顔に落とした影で唇を立体的に作画していたところが目を引いた。Aパートのカードバトル中に歯を見せたダンなど、異様に生々しくて驚いたくらい。


……けしてカードバトルも悪い展開ではなかったのだが、あくまで時間稼ぎにすぎなかったので、良かった政治劇に押されて霞んでしまった感じ。

『スイートプリキュア♪』第16話 ピンポ〜ン!交換ステイでベストフレンドニャ♪

大野敏哉脚本。過去の『プリキュア』シリーズと比べて特にシリーズ構成の担当回は多くないが、あまり重要とも思えない回に登板しているので不思議と登板率が高い印象がある。
今回も、プリキュア面では新必殺技が登場して、ドラマ面でも主人公の母が帰ってきて次回へ続くのに、あまり物語が進展したように感じられない。二歩進んで三歩下がるような展開を続けているためだろうか。たぶん今回が「ニセ親友作戦」の前に放映されていても、違和感はほとんどない。


尺を使った新必殺技は作画も演出も良かったし*1、体育館の窓ごしに怪物の姿が見えるコンテ*2は巨大感がよく表現されていたが、怪物の登場が序盤同様の脈絡のなさだから、あまりアクション面は感心できなかった。
良かったのはニセ母に響が騙されて以降の圧迫感ある主観映像演出と、たっぷり緊張感ある間をとってから母の大声が届く流れ。母が登場する伏線がきちんと入っていたから、ニセ母の登場で一瞬騙されてしまったし、本当の母が登場した場面に爽快感があった。
あと、大音量で音楽を流す響の父をめぐる場面も、音が大きすぎて声が聞こえないことを素直に表現したのも良かった。ここで安易に台詞が視聴者へ聞こえるようにすると、シチュエーションの異常性が失われてしまう。

*1:作画監督は高橋晃で、原画にもスタジオダブ勢の他に大田和寛らが入っていた。

*2:今回の演出は池田洋子