法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジャイアンシチュー/開店!動物くんれん屋

高橋渉コンテの前半と、今井一暁コンテの後半と。演出はどちらも今井一暁。かなり絵作りにこだわった回だった。
しかし前半は劇場版を思わせる体型でキャラクターを作画していた結果、劇場版と比較して落ちるという印象を受けてしまった。冷静に見れば芝居も表情もレイアウトも素晴らしくて、をがわいちろう作画監督の仕事は悪くないのだが、劇場版での日本アニメトップクラスの良作画にはさすがに勝てないか。


Aパートは、有名なジャイアンシチューが登場するエピソードを、原作に様々なアレンジをくわえてアニメ化*1
原作は、ジャイアンの調理風景を間接的に描きながら読者の想像にたくし、じわじわと恐怖を盛り上げていった。短い頁数でジャイ子ちゃんは2度登場、最初は臭いに困ってマスクした姿でジャイアンが好き勝手できる理由を説明、その次は臭い耐え切れなくなって逃げる姿。最後まで味見をしたキャラクターが登場せず、作中人物は脳内で恐怖を肥大化させていき、それに視聴者が感情移入していく*2
今回のアニメ化では、ジャイ子ちゃんもムクも味見をさせられ、失神するほど不味いことが提示される。知らされた恐怖を前にしつつ、食べることをジャイアンに強要されるという、暴力に対する恐怖という面が強くなっている。
前半の調理風景を削除したかわりに、食べる最中に中身のとんでもなさを知らされていくところでも、過程の恐怖を重視。原作では急転直下のオチだったカニバルも、長々と描写。襲われるジャイアン側の恐怖が念入りに描かれる。
玄関の暗がりに浮かび上がるジャイアンの姿など、絵作りで恐怖を盛り上げてはいたが、今回のアニメ化は全体的に直接的な描写を映像で見せる方針。ドラえもんが助けにきたことによる立体的な動きが生まれたりと、アニメとして出来そのものは良いのだが、私の好みではなかった。
ちなみに秘密道具「味のもとのもと」は「スーパーグルメスパイス」という名称に変更。「味の素」は商標だから以前のアニメ化でも名称を変えられていたが、今回に改変した名前はマンガ『トリコ』に出てきそうなネーミングだな。


Bパートは、記憶ではアニメオリジナル*3。秘密道具「桃太郎印のきびだんご」を使って、ペットに芸をおぼえさせる仕事を、のび太が始める。
のび太企業ネタの常として意外なアイデアで成功してから転落するまでを見せるかと思えば、こちらも後半はジャイアンがメイン。飼い犬のムクに手伝いをさせてジャイアンがさぼる姿を延々と見せられる。
最終的には予想通り、人間も動物だからと秘密道具の効果で手なずけられてしまう。しかし、怒ったジャイアンのママを手なずけるためというところが予想外。ママがジャイアンに甘える姿で、秘密道具の効果が切れた後の恐怖を想像させる、好みなオチで終わった。効果は30分という前振り説明もちゃんとあり、好印象。

*1:リニューアル後の2008年にもアニメ化していたが、その時はジャイアンがメインの別回と合体させて、今回以上にアレンジが激しかった。

*2:……と記憶していたが、これは記憶違い。アニメオリジナルでジャイ子が登場することにより、もともとジャイ子が登場する原作の別エピソードと混同していた。

*3:……と思っていたが、実は原作者生前の単行本未収録作品だった。