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法華狼の日記

2012-02-23

[][]本村洋氏にかけられた上司の言葉は単純な美談ではない

『なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日』門田隆将著 - 法華狼の日記の、本村氏が職を辞そうとした時に上司からかけられた言葉が話題になっている。特に下記の台詞が。

光市母子殺害事件で妻と子供を失った本村洋さんが一時の気の迷いから勤務先の新日鐵を退社しようと思い立ち辞...

『この職場で働くのが嫌なら辞めてもよい。君は特別な体験をした。社会に対して訴えたいこともあるだろう。でも、君は社会人として発言していってくれ。労働も納税もしない人間が社会に訴えても、それはただの負け犬の遠吠えだ。君は社会人になりなさい』

はてなブックマークを見ても、好意的な評価が多い。

はてなブックマーク - 光市母子殺害事件で妻と子供を失った本村洋さんが一時の気の迷いから勤務先の新日鐵を退社しようと思い立ち辞...

だが忘れてはならないのは、上司の言葉はあくまで本村氏と閉じられた関係で発せられたものであり、特異といっていい心理状態にある部下への説得だ。

労働も納税もしない、できない人間が犯罪被害者なり被害者遺族なりであれば、その意見を社会が軽視してもいいのか。もちろん、原則としてそうではあるまい。

他の状況へそのまま当てはめられる事例ではないことは、ソース元の2ちゃんねるまとめスレッドの方が文脈を押さえている。

新日鐵に勤務する本村洋さんの上司の言葉 : 市況かぶ全力2階建

266 名前:山師さん@トレード中[] 投稿日:2012/02/21(火) 11:23:59.71 ID:KfbMVFVq0

まあ上司が部下にやめんなって説得の中での話だから

勤労は素晴らしいって話にはなるでしょ。

なんであれ多額の納税してる奴がエライと俺は思うよ


むしろ上司の言葉で重視するべきは、下記の台詞だろう。妻の心情を想像して語っていることは目をつぶるとして。

『君はこの職場にいる限り私の部下だ。そのあいだ、私は君を守ることができる。裁判はいつかは終わる。一生かかるわけじゃない。その先をどうやって生きていくんだ。君が辞めた瞬間から私は君を守れなくなる。新日鐵という会社には君を置いておくだけのキャパシティはある。勤務地も色々ある。亡くなった奥さんも、ご両親も、君が仕事を続けながら裁判を見守ってゆくことを望んでおられるじゃないのか』

いわば、会社および上司が、仕事を続けながら裁判を見守る環境を用意できるという宣言だ。本村氏は、たまさかそのような会社に勤務していた。

しかし他の会社や職業で同じ環境が用意されているとは思いにくい。職業によって裁判を見守ることができるかどうかが変わるのは、それこそ是正するべき不公平ではないのか。

第三者ならば、自身が当事者になった時に社会人であり続けるべきという思想を内面化することより先にやるべきことがある。まず、「労働も納税もしない人間」という立場ではなく、「訴え」そのものの妥当性を社会を構成する一員として判断するべきだ。そして、仕事に「キャパシティ」がない者でも裁判を見守ることができる支援を社会的に確立するべきだ。

それこそが、犯罪被害者やその遺族へ社会がなすべき支援の一つではないかと思う。

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