法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『エウレカセブンAO』完結編を見返し

一言でいうと、原作マンガ版『風の谷のナウシカ』に近いというか。ただ、そちらでは人間が人工的に作られており、ある程度の毒がなければ生きていけないというシニカルな設定が明かされたことに対し、こちらでは毒は体に悪いままで、あえて毒のある世界を選択する重みがあって、より踏み込んでいるなと感じた。
異世界への移動とか、異なる生物との共生とか、濃い「トラパー」は毒になるとか、『風の谷のナウシカ』につながる要素は前作の時点でも出ていたのだが、そうした設定は後景でしかなく、ボーイミーツガールで終わらせたので、ファンの間では忘れられている模様。


とりあえず、監督とストーリーエディターのツイートをまとめたTogetterを自分用にメモ。
エウレカセブンAO関連 - Togetter
制作者側の情報とは別に、最も納得したのはアニメ評論家の藤津亮太氏の指摘だった。『青い鳥』との関連は過去に読んだことがあり、アニメ内でも言及されているが、ここまで細かく作品と対応していることに気づかなかった。
http://www.p-tina.net/animenomon/471

 さらに『エウレカセブンAO』には『青い鳥』の「未来の王国」を思い出されるエピソードも登場する。

 チルチルとミチルが訪れた「未来の王国」は、これから生まれる子どもたちがいる国。子供たちは、生まれる時に手ぶらで生まれることはできない。さまざまな子供が生まれたらやりたい夢などを語る中、チルチルとミチルは、やがて自分たちの弟となって生まれるはずの子供と出会う。

 その子供が持っていたのは、大きな夢などではなく、しょう紅熱、百日咳、はしかという病気だった。その子は、そうして生まれてすぐ死んでしまうのだという。それをその子供は「しょうがない」と語る。

 この生まれてすぐ死んでしまう弟のエピソードは、まず直接的に生後三ヶ月で死んでしまったアオの姉を思い出させる。

いわれてみると、確かに完結編で描かれた過去と相似している。そもそも未来の不幸をのぞきみる展開自体が、『エウレカセブンAO』と同じく、タイムスリップの一種だ。
『青い鳥』本来の結末が、巷間で考えられている教訓*1とは異なるという指摘も興味深い。良くできた比較評価は、引用した作品だけでなく、原典の主題や特色も浮かびあがらせる。

*1:童話を集めて簡易化して紹介しているサイトが、教訓を結末へ持ってきている一例。http://hukumusume.com/douwa/pc/world/03/01.htm