法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『28日後…』

2002年のイギリス映画。よたよた歩いて集団で襲うゾンビ描写が、この映画を境として、俊敏に追いかけるようになったという。


凶暴性を増す病気が感染した原因は、狂信的な動物愛護団体による実験動物の解放。イギリスにおける動物愛護団体の印象の一端として、わりと現代日本にも通じていると感じた。しかし本編とは特にからまないまま出番は終了。途中でしれっと正義の味方っぽくふるまう動物愛護団体が出てくるかとも思ったのだが。
本編に入ると、病院で孤立したまま目ざめた青年をとおして、終末のイギリスを淡々と描いていく。確かに感染者が走って襲ってくる場面や、派手なアクションもあるのだが、どちらかといえば無人のロンドンを彷徨する描写が多い。ロンドンらしく古びた建築物が、ハリウッド映画で描かれる無人都市とはまた違った荒涼感を表現していた。
やがて仲間と出会ったり別離を経験したり、物語はロードムービー風に転調していく。のどかな草原や天気雨といった自然が、人類の消滅した情景を際立たせる。
明確なことがわからないなりに、その時々の目的や、登場人物の動機づけが明瞭で、娯楽作品としての手際が予想外にいい。ホラー映画らしく登場人物の行動に愚かすぎるところはあるが、そうした愚行が決定的な失敗には繋がらないので、許容できる範囲。伏線の回収もまずまず。
もちろん青年が経験をつんで成長していく一方で、生存者同士のいさかいも始まっていく。感染者と非感染者の見た目がほとんど変わらない設定を利用して、人間とゾンビの区別がつかなくなる一瞬を明瞭に描き出した。


ゾンビが走る一発ネタにたよっていないおかげで、すでに走るゾンビを見なれた者としても楽しんで見ることができた。
ゾンビを飼育するというネタでも先駆的な一作だと思う。これも一発ネタでは終わらず、それなりの意味が作中である。
また、DVDでは劇場公開版の結末が特典映像となっていたのだが、ハリウッド映画などと違って、映像ソフト収録版よりもアンハッピー性が強かったところが興味深かった。続編映画があるので、その関係で結末を変更したのかもしれないが。