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法華狼の日記

2013-06-18 腹が痛かった話

[][]大半が心因性と判断できる病気に対し、どの局面でそう説明するべきか

関連する私個人の汚い感想は最後の段落で書く。

NATROM氏の主張『化学物質過敏症は臨床環境医によってつくられた「医原病」だと思う』への批判 - Togetterまとめ

NATROM氏は「ホメオパシー」の夢をみるか? - Togetterまとめ

このエントリで書くのは、前者のまとめから派生した後者の論争について。

最初に全体の感想を書くと、私の解釈した争点が正しかったとして、むしろ現場の臨床医一個人という立場でこそ答えにくいことも多いのではないか、とも想像する。

はてなブックマークでも指摘があるが*1、前者のまとめが臨床医と患者の論争と考えると、断言できることを言外ににおわしたり、微妙なところを断言せざるをえない背景もあったのでは、とも想像できる。


ただ、おそらく両方のTogetterをまとめている@氏は、@氏が化学物質過敏症の原因そのものにはほとんど興味を持っておらず、あくまで化学物質過敏症をうったえる患者に対する対応を論じていることに気づいていない。たぶん当初は@氏も気づいていなかったから、論争が長引いてしまったのではないかと思う。

yunishio氏の言葉から言外の主張をくみとろうとすると、何を論点にしているか見失うことが多い。争点を言葉通りに細かくしぼっていることが多く、関連する別の争点へ移ることを避ける論者なので、逐語的に解釈しないと蒟蒻問答のようになってしまう。


逆にyunishio氏に対しては、逐語的でない意見に対して厳しく切り捨てすぎていると第三者として感じた。

たとえば「ヤリ捨てた年上女が寝床に現れて困る。この頭痛はその生霊のせいだ」という患者があらわれたという比喩ならどうだろう。

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この場合であっても、おそらくyunishio氏は「トンデモあつかいしたり、診察する前から心因性と判断するべきではない」と主張するのではないだろうか*2

もちろんフィクションの住人ならいざしらず、現実で生霊が原因などということは考えにくい。しかし心因性以外でも、頭痛を起こす他の病気が原因という可能性だって残る。

NATROM氏が「あくまでインターネットごしの判断ですから大半は心因性だろうというしかないだけで、実際に病院へくれば診察しますし、さまざまなアレルギー反応である可能性や他の病気を持っている可能性も考慮しますよ」と明言していればyunishio氏は納得した気がする。

実際にNATROM氏も、似たような症状の訴えに対してさまざまな診断をくだしたことを説明している。

だが、経験談が化学物質過敏症と自己判断した患者とは厳密には違っていたため、yunishio氏は混乱したという。

当初に「経験はありませんが、具体的に化学物質過敏症と自己判断された患者でも同じように診察しますよ」といった説明をしていれば、あるいはyunishio氏は納得できたかもしれない。


ここがyunishio氏の意図した争点であるという説明は、@氏とのやりとりでも語られている。その意図が伝わらなかった責任が誰にあるかはさておき、むしろ冒頭のTogetterよりも争点のありかがわかりやすかった。

そこに争点があるというyunishio氏の説明は、とりあえず冒頭まとめ当初のツイートと読み比べても矛盾はない。

ここまでくれば、「大半は心因性だ」という知見を表明することが患者の萎縮につながるのかとか*3、逆に「大半は心因性だ」と表明することで症状がおさえられる場合もあるのではとか*4、そもそもあらゆる患者をうけいれるべきという原則について負担する現場の立場をはなれて答えられるのかとか、そういう争点であって化学物質過敏症そのものとは関係ないことが明らかになる。

正直にいえば、たとえ争点をたがいに共有しながら論争しても、ツイッターで答えを出すことは極めて困難な話題だと思う。

それから、ツイッターでやりとりして第三者がまとめるよりも、やはり論争がはじまりそうならブログを書いて通知するべきだったんじゃないかと思った。


他に、yunishio氏側の問題として、当初のツイートで「検査」と表現したのも良くなかったと思える。

しっかりした情報源が見つからない*5ので記憶にたよるが、医療の現場では「検査」や「診断」や「診察」はニュアンスが違っていたはず。

この観点にあたると思われる説明がNATROM氏からもあった。

もし、症状をおさえることが目的の「診察」ではなく、病因を特定することを目的とした「検査」が求められていると解釈した時、それは現場の医師として確約できなくてもしかたないのではないか。もともとが原因が何かという争点だったのだから、その延長で考えていれば、yunishio氏も病因の特定を求めているという解釈になりやすいだろう。


最後に、「検査」と「診察」の違いについて、たまたま最近に患者の立場で知ったことの感想を書いておく。日記で書いたことだが、少し前にウイルス腸炎にかかった。

ウイルス性腸炎にかかったらしい - 法華狼の日記

近所の診療所へ行ったのだが、触診や聴診といった簡単な診断で終わり、整腸剤だけを処方されて「これで充分なのか?」と少し疑問に思っていた。しかし、いくつかの病院サイトのページでくわしい説明を見つけて、納得することができた。ノロウイルス等の名称までくわしく伝える報道をよく見るが、それはむしろ例外的なあつかいらしい。

ページ移転のお知らせ

 便、吐物からウイルスの検出が可能です。しかし、保険が適応でなく自費検査となるため高価です。検査結果が戻るの2〜5日を要します。また、あきらかにウイルス性の胃腸炎なら、一般には重篤化せず、検査結果が出てくるころにはほぼ回復しているので検査することにあまり有用性がありません。また、ウイルスが異なっても治療法は同じでありウイルスを同定することに実地臨床的な意義は少ないのです。(ただし、集団感染などの場合は別で、ウイルスの同定が必要です。)

「検査」をすることで病原体を特定する方法はあるが、どのウイルスであっても特効薬は今のところ存在しないし、検査結果が出るまでには完治していることが多い。患者の病気を癒すことが優先すべき目的と考えるならば、高価で時間もかかる検査を省略することは自然だろう。

つまり、わりと身近に聞く病気であり、化学物質過敏症と違って病原体が存在すると医学的にはっきりしていても、医療の現場の常識として検査を省く場合があるようだ。

ただ同時に、患者の側からすれば、治療そのものには寄与しなくても、病因をくわしく知るための検査を望む人もいるだろうと想像できた。患者本人は知識を持っていなくても、医師から病名をはっきりいわれることで安心する場合はある。

これは途中でも言及したが、「大半は心因性だ」と表明することで症状がおさえられる場合もあるのでは、という話などにも繋がってくるだろう。

*1:ひとつひとつは引用しないが、「患者」という言葉にふれた多くのコメントがそう。http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/519321

*2:「CIAにチップを頭に埋め込まれたので、CTスキャンをしてくれ」という例え話に対して、それらしい回答をしている。https://twitter.com/yunishio/status/346120053038673920

*3:このツイートはその疑いをもっているからだろう。https://twitter.com/yunishio/status/346093552792649730

*4医療の現場において、診察の結果として断言される病名や病因は、しばしば厳密性が要求されていないと聞く。断言せざるをえない、断言することで効果が生まれる場合もあると聞く。信頼できる情報源を見つけられなかったので、補足や批判がほしい。

*5:検索して見つけたページもあるが、信頼性を担保するような立場が明記されていない。http://medical-checkup.info/article/100086097.html

はりはり亭はりはり亭 2013/06/18 02:19 この論争、私も読みかけたんですが早々に論旨を追えなくなって、もう一度読み込んでみなくては...と思っていたのでタイムリーかつ助かりました。論議の内容自体については(まだ)いうことはありませんが、ツイッターというメディアでは最初にボタンを掛け違えるとなかなか修正がきかないものなのですね、月並みな感想ですが。
最後に法華狼さんはご自分のウィルス性腸炎の例をお出しになってますが、考えてみれば「風邪」がそもそも一番身近な例なんですよね。「エン女医あきら先生」でまったく同じ説明をしていました。

匿名希・望匿名希・望 2013/06/18 04:58 私とのやり取りに関してはこちらのまとめで拾って貰ったので参考までに。
http://togetter.com/li/519783
私としては個別の患者に配慮すべきなのは診察室の中までにすべきで、Web上の議論にまで適応すると言論規制になりかねないと危惧します。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/18 08:33 後半で「検査」に言及していたyunishio氏のツイートをリンクミスしていたので訂正し、その訂正にあわせて前後の文章を修正しました。


はりはり亭さんへ
>考えてみれば「風邪」がそもそも一番身近な例なんですよね。

そうですね。はっきりした特効薬がなく、症状と対症療法でざっくりくくった病名。あるいは、さまざまな病気のひとつの症状に対してつけられた呼称とも。
そういえばウイルス性腸炎自体も風邪あつかいされていますね。
http://www.k-yuaikai.com/html/q_and_a/q_kaze.html
>ウイルス性 : ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどで主に冬場に見られます。いわゆる「お腹にくる風邪」です。

>ツイッターというメディアでは最初にボタンを掛け違えるとなかなか修正がきかないものなのですね

先に前提を説明するツイートを投下しており、論争途中では字数制限もあって省略していた観点を後で言及したら、アドホックあつかいされた場面を見たことがあります。
よほどたがいに争点を深く共有しているか、逆に主張の妥当性に明瞭な落差でもないと、ツイッターで論争は困難だと横から見て思うことが多いです。


匿名希・望さんへ
>個別の患者に配慮すべきなのは診察室の中までにすべきで、Web上の議論にまで適応すると言論規制になりかねないと危惧します。

しかし実際のところ、先のまとめで議論している相手が自身を化学物質過敏症とうったえているので、NATROM氏もはっきりいえていないところがあると感じます。この場合、配慮すれば充分だというわけではなくて、逆にはっきりいわない(いえない)態度そのものがパターナリズムと批判されうる……
医療がどう患者にむきあうべきかという先行研究を示すのではなく、普段に患者と向きあっている臨床医個人という立場で言及しようとすると、そもそもオープンな場で論争が難しい争点なんじゃないかと思います。別の「患者」も見ることができるわけですから。
……そこで第三者として、以前に読んだ記憶がある先行研究を提示できるかと探したんですが、適切なものを見つけることができませんでした。

また一方で、勘違いした一種の被害者が、周囲へ勘違いを広げていく加害者に転じた状況と近いものも感じました。このあたりは他の社会問題、たとえば生活保護者を貧困者が攻撃する場合などにも通じるものがあります。
私もまた、そうした二次加害者へ正面から批判するのは躊躇するし、その躊躇はパターナリズムな態度ではないかと自問自答もしています。

kiya2015kiya2015 2013/06/18 11:31 要するに心因性が多い症状を訴える患者に対して
生き霊に呪われたとかCIAにチップを埋め込まれたとかいう可能性と真摯に向き合って
患者が満足するまで仕事する覚悟がNATROM一派にはないのですよ。
こう言うと彼らは「リソースが足りない」と言い訳するでしょうが、
twitterでぐだぐだお仲間たちとなれ合っている暇があるんだから
まだまだ頑張れるだろ、ちゃんと働けよって思いますけどね。

kiya2015kiya2015 2013/06/18 11:34 福島原発以後の甲状腺癌の多発に関する言い訳でもそうですが、
どうも多くの医者は自分たちの複雑性を逓減するために
「科学的に考えればあり得ない」という態度をとりすぎです。
そりゃ認めればその分仕事も増えるのはわかりますが、
医者を志した以上そういう甘えは許されないと思います。

denden 2013/06/18 13:08 >生き霊に呪われたとかCIAにチップを埋め込まれたとかいう可能性と真摯に向き合って
>患者が満足するまで仕事する覚悟がNATROM一派にはないのですよ。

そりゃあ、誰だってないだろう。
そんな無駄なことにリソースを投入するほど、日本の医療機関は余裕が無い。
kiya2015氏は、例えば自分の家族が急病になったときに、
『今CIAにチップを埋め込まれたと主張する人の診察で救急対応できる医者がいない』
なんて理由で急患を断られても、納得できるの?

匿名希・望匿名希・望 2013/06/18 17:25 kiya2015さん。診察室に受診にきたら誠心誠意の対応をされると思いますよ。精神科への紹介を含めて。只、仕事以外の場所でまで、そのような対応を求めるのはやり過ぎと考えます。

kiya2015kiya2015 2013/06/18 17:39 余裕がないって本当ですか?
誠心誠意の対応をしていますか?

yunishio氏もツイッターで述べていますが、
https://twitter.com/yunishio/status/346881310851211264
NATROM一派や(原発事故における)早野・菊池一派が
ネットで延々と時間を割いてニセ科学批判をしているのは、
自己愛、自尊心、「俺TUEEE」という感情を満たすためであって、
本心から患者や被災者のことを考えているからではありません。

もし本心から考えているならば、患者や被災者の訴えを一蹴するわけがないし、
ましてや無碍に科学的知見とやらをひけらかし徹底的に批判して、
問題をこじらせるはずがないのです。

問題が何ら解決せずこじれる一方なのに、あえて彼らが批判をおこなうのは、
ひとえに彼らが知識人として振る舞うことの快楽に溺れているからです。
こうしたあり方は科学的知見が正しいかどうかに関係なく醜悪なのです。

kiya2015kiya2015 2013/06/18 20:46 つまり、NATROM一派や(原発事故における)早野・菊池一派のニセ医療、ニセ科学批判そのものが
まさに「心因性」なのであって、
これはネット右翼の排外主義が「心因性」であることと同じです。
こうした心因性の権威主義こそ、真に治療されるべきものだと思います。

偽物ニンゲン偽物ニンゲン 2013/06/18 20:59 科学哲学趣味の方々って、言うだけ番長臭いのですよね。
ネット右翼みたいに決め付けるな、と言われるでしょうが。
市民運動や市民科学といった身近な政治に生身で参加できない。参加したくない、科学哲学というお庭だけで吠えつづけたい、だけど、科学哲学を背負って政治という世界や市民活動に入りたくないという我が儘さが臭うのです。

具体的には、ホメオパシーとか創造論といった日本ではどマイナーなオカルトが科学哲学趣味の人達の関心のようですが、ホルミシス効果とか皇国史観といった右派の擬似歴史観という日本で問題になっている擬似科学への突っ込みが弱すぎるんですよ。本当に。
引きこもりですよね。

匿名希・望匿名希・望 2013/06/18 22:46 このブログで、「人権擁護って言いながらチベットでの中国の人権侵害に抗議しないやつは偽物」みたいな理屈を恥知らずにもち出せる神経に感心しました。

kiya2015kiya2015 2013/06/18 23:35 医者は存在が権力そのものです。その原罪がありますから、
いくらでもリソースを割いて患者に寄り添ってはじめて許されるのですよ。
それは原発に関わった政治家や官僚や電力会社や科学者が、
一生をかけて被災者に償わなければならないのと同じです。
私には、なぜhokke-ookami氏が医者の場合になると
奥歯に物が挟まったような物言いをするのかが理解できません。

偽物ニンゲン偽物ニンゲン 2013/06/19 05:18 匿名希・望様へ

その言葉は私を指しているのでしょうか。
自分では人権派気取りですが、チベットの問題は右翼さんといった人権蹂躙大好きな方々が大量に参加し、かつ、中国攻撃の材料としのみ利用しているので、イマイチ参加しづらいです。

では、他方、科学哲学趣味の方々はどうか。引きこもり臭が強いんです。
自身の生活や政治的な決断と科学哲学がくっついていない。
血液型占いの問題とか、本腰入れて訴えているのかと。
そういった本業でも、影の薄さが強いです。
なのに、ネットで非科学的っぽい個人の意見や発言に猛攻撃する様を見ると、ドン引きですよ。
もう少しお外に出ようよ。

偽物ニンゲン偽物ニンゲン 2013/06/19 05:32 ついでに、心因性の可能性の高い症状の訴えについて、医者が抱える問題って、リソース云々ではなく、方法論の問題じゃないのかな。医者じゃない身分の自分が言うのは間違っているだろうけど。

相手の感情とか、可能性とか無視して過去の蓄積されたマニュアルに無理矢理当て嵌め、勝手に診断するのか、患者と対話しながら進めるか、それらとは違う方法でアタックするのか、という具合に。

医者のリソースよりも病の進行や患者の負担といった問題が大きいかも。

fnorderfnorder 2013/06/19 09:34 『NATROMさんがこう答えれば良かったのに』とか言う前に、NATROMさんが『どの発言を見てそう思ったのか』と聞いてるのにyunishio(mujin)さんが答えていないのだけど、そこはいいのか?

ちなみに、yunishioさん本人も自分がそこに答えていないことは自覚があるみたいですよ。

kiya2015kiya2015 2013/06/19 12:32 コメントが伸びていますがhokke-ookami氏の反応がないですね。
まさかhokke-ookami氏もNATROM一派に取り込まれているんですかね。

匿名希・望   匿名希・望 2013/06/19 18:29 ああ、そういうゲスな物言いをすれば法華氏が心置きなくコメントできるだろうという心遣いですね。流石です。
医者を社員に、権力を給料に変えたらブラック企業の社長のセリフそのものなのもネタですか?

kiya2015kiya2015 2013/06/19 20:12 医者を「官僚」や「与党政治家」に変えてみれば私の言わんとすることがわかるはずですが。

匿名希・望   匿名希・望 2013/06/19 20:29 官僚や政治家だって私生活を犠牲にする義務なんて無いんですよ。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/19 23:27 エントリでまとめきれなかった部分を雑多に。
誰の責任や負担で医療をおこなうべきか、必ずしも医学的な知見だけでは決定できない問題が背景としてある。特に公害補償でよく表面化する。
末尾やコメント欄で少しふれたように、カテゴライズの齟齬をどう解消するか、そのカテゴライズの齟齬を「医療化」「医原病」と表現する局面は適切なものかという問題もある。
また、必ずしも医師ではない第三者が医師の立場を内面化する統治者目線の問題も言及されている。むしろ私個人としては、こちらを重視すべきだと思っている。NATROM氏は(どれほど善意と誠実さをもって忖度しても)現場の臨床医としての立場から語らざるをえないのであり、その前提をもって周囲は意見をくみとらなければならない。


kiya2015さんへ
>生き霊に呪われたとかCIAにチップを埋め込まれたとかいう可能性と真摯に向き合って

まずkiya2015さんは読解力をはぐくむ勉強をされるべきかと思います。「可能性」にむきあうことと「患者」にむきあうことは同一ではありません。
おそらく貴方は争点が理解できていません。

>奥歯に物が挟まったような物言いをするのかが理解できません。

私が色々な主張をためらうことは今回だけではありません。
今回のNATROM氏の場合は、現場の臨床医だという立場を考慮していることがひとつ、私が読みとった争点に対しても重要と考えていることが発言からうかがえることがひとつ、ツイッターにおいて「患者」が見ている難しさを想定していることがひとつ、といった理由があります。
これがたとえば、心因性と疑われる症状をうったえた患者を医療から遠ざける決定を厚労省などが公に出していたりすれば、もっと違う批判になると思います。公害問題の補償においても、同様ですね。あらかじめリソースを左右できない現場の立場と、そうした現場のリソースふりわけを決定する立場とで、かかる責任は異なるものでしょう。
念のため、現場の立場であればあらゆる主張が免罪されると思っているわけではありません。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/19 23:38 denさんへ
その比喩はその比喩で、あまり争点を正確に把握できていないと思います。
医学的に根拠が明確な病気であっても、それにリソースをふりわけるべきではない、急患を優先すべき、といった話はできますし、する人はいますよね? 病状に優先順位をつけることを倫理的にどうあつかうか、そもそも“誰”が順位を判断できるのか、そういう話もyunishio氏とNATROM氏の論争にふくまれています。


匿名希・望さんへ
>診察室に受診にきたら誠心誠意の対応をされると思いますよ。精神科への紹介を含めて。

医学的にはっきりした患者相手であっても診断にはカウンセリングの側面があるので、医療の現場において心因性を分離できるのか(むしろ日常的には同時進行しているのではないか)という話にも繋がりますね。やや脱線した話題ですが。
ちなみに、長期入院に臨床心理士やケースワーカーを入れて、心理面で補佐するケースがあるそうです。重症の児童向けを中心とした提言を見つけていたので紹介しておきます。
http://www.jnanet.gr.jp/kan/kan06.pdf
分担したほうが医師にとっても負担が減るとか、患者にとっても相談相手の選択肢が増やせるとか……もちろん利点だけではないでしょうし、急に機構を変えればさまざまな問題が出てくる危険もあるでしょうけど。


fnorderさんへ
>『NATROMさんがこう答えれば良かったのに』とか言う

私は今回そういう表現はしていません。こうすれば意見が衝突しなかっただろうという推測を簡単に断言できるような話題ではありませんし、意見が衝突しなければ良い議論だったという話題でもありませんから。
たとえば、比喩が通じないとわかったあとも、病気ではなく施術方法でたとえつづけたところなどは、臨床医というNATROM氏の立場をクリティカルに表しており、yunishio氏と衝突した争点を(おそらく意図せず)よく表していると思っています。


偽物ニンゲンさんへ
>科学哲学趣味の方々って、言うだけ番長臭いのですよね。

現場は現場として、研究は研究として、それぞれ独立しておこなうことが悪いとは思いません。偽物ニンゲンさんの想定している「科学哲学趣味の方々」がよくわからないので、一般論ですが。
もちろん現場から乖離した研究であればそれは問題ですし、現場からの乖離を政治性の漂白と考えるような研究には批判が必要だと思いますが。

>イマイチ参加しづらいです。

チベットに限らず、既存の運動に参加する必要はないと思います。
日本国内限定の運動でなくても、アムネスティなどの国際的団体を通じて支援することも可能です。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/19 23:46 知らない人がいるようなので説明しますと、kiya2015さんは以前からこういう人です。
Apemanさんのコメント欄などで、よく書き込みをしてらっしゃいます。初めて拝見したのは下記コメント欄。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20121204/p1

あと、はてなブックマークでid:BIFF氏が書いている「憑依論者」という言葉の意味がよくわかりません。まさか佐々木氏のいう「マイノリティ憑依」から来ているのでしょうか。
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130618/1371485900
> BIFF NATROM 憑依型論者
ある意味大変正直なコメントのお陰で、「批判者(憑依論者)」の本質がよく理解できた。2013/06/18

fnorderfnorder 2013/06/20 09:45 yunishoさんは最初にNATROMさんから聞かれたこと(『具体的には、どの発言を見てそう思ったのか』)に答えるべきだったよね、というのがコメントの本題でした。そこは無視?

ついでに言うと、ホメオパシーに続いてNATROMさんが持ち出したのは「施術方法」ではなくて、他の(実在が疑われる類の)病気でしたよ。

counterfactualcounterfactual 2013/06/20 17:21
>病因をくわしく知るための検査を望む人もいるだろうと想像できた。

いますが、そこから先は自由診療枠でしょうね。
保険医療の費用は、保険から支払われますので、患者個人ではなく、患者全体での費用対効果が優先されます。

counterfactualcounterfactual 2013/06/20 17:47 すみません、訂正です

>保険医療の費用は、保険から支払われますので

保険医療の費用のかなりの部分が、保険から支払われます

ですね。

それと、「CIAにチップを頭に埋め込まれたので、CTスキャンをしてくれ」
ですが、保険医療にその適用はありませんので、できません。
全額自己負担なら、やってくれる医療機関はあるかもしれません。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/21 06:06 文章を「ノロウイルス」へ訂正しました。「ノロウイスル」って何やねん。

あと、NATROM氏のエントリを下記で言及したついでに、yunishio氏のエントリもここで紹介しておきます。
http://yunishio.blogspot.jp/2013/06/blog-post_18.html
はてなブックマークで複数の疑問が見受けられますが、男女コピペをyunishio氏が言及しているのは、おそらく、このエントリに対するブクマでfatpapa氏が言及していたため。
https://twitter.com/yunishio/status/346910637336690688


fnorderさんへ
>そこは無視?

そうしたことをfnorderさんからいわれれて、私自身は必要な説明だけしたつもりなのに文章量が多いという理由で荒らしのようだと評価された時のことがフラッシュバックして、困ってしまいました。
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/ublftbo/20121121/p1
まず、こうすれば意見が衝突しなかっただろうという推測を簡単に断言できるような話題ではありませんし、意見が衝突しなければ良い議論だったという話題でもありません……と先述したように思っています。
また、私は直接的にツイッターを使っていないので、たがいのやりとりがどのようなUIで見えるか、また対話のローカルマナーを明確には知らないのですが、やはり長文をまとめて書けるブログでの応答へ早く移行すべきだったと思います。

>ホメオパシーに続いてNATROMさんが持ち出したのは「施術方法」ではなくて、他の(実在が疑われる類の)病気でしたよ。

ツイッターにつづいてブログエントリでもNATROM氏が「医療化」の切り口で説明し、冒頭で不要な点滴に言及したりしています。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130618#p1
また、他の“微妙”な疾病概念例も、それに医者が応じる観点で問題をとらえようとしていると私は読解しました。


counterfactualさんへ
>そこから先は自由診療枠でしょうね。

そこで保険適用の可否や医療費を持ち出すのは、あまり良くないと思いますよ。
生活保護者へ後発医薬品を適用するような原則に変わったこと等にも繋がり、リソースふりわけを決定する立場の存在が明瞭になるだけです。

>保険医療にその適用はありませんので、できません。

ざっくりいえば、CTスキャン使用は高額だから忌避されるという話ですよね。私の中のパターナリズムが、その理路は良くないと警告を発しています。むしろ医療のコントロール下から患者をはなれさせ、代替医療を利用するモチベーションを後押ししかねません。
もともとyunishio氏も、患者の命令に医者が抗ってはならないとだけ単純に主張しているわけではないですよね。あくまで医師は医学的知見や医療現場でおこなえる範囲へ患者のうったえをすりあわせる立場であり、決定権を患者から奪ってはならない、ということがyunishio氏の主張でしょう。

counterfactualcounterfactual 2013/06/21 07:27 私が患者になった場合、医療のリソース振り分けを決定するのは、医者ではなくて保険組合で、結局それは組合員全員です。そして、その根拠は科学的エビデンスです。

匿名希・望匿名希・望 2013/06/21 07:53 >あくまで医師は医学的知見や医療現場でおこなえる範囲へ患者のうったえをすりあわせる立場であり、決定権を患者から奪ってはならない

只、その訴えが明らかに提供可能範囲を越える場合、すり合わせとは言いくるめの呼びかえに過ぎなくなり、それが自己決定権の侵害とされるなら放置以外の対応ができなくなるでしょう。

私は彼が理想とする解決は人類全てがNTにならないと無理だと思うので不毛と判断して議論から降りましたが。

counterfactualcounterfactual 2013/06/21 09:52 >ざっくりいえば、CTスキャン使用は高額だから忌避されるという話ですよね。

というか、使用しても保険から支払いされないのです。
CT 保険適用 というキーワードで検索すれば、CTスキャンで保険が効く範囲がわかると思います。

私の理解では、自己決定権は無制限ではなく、非常に素朴な言い方をすれば、自己決定権は他者への迷惑が及ばない限り範囲認められるはずです。
たとえば、私に化学物質過敏症といわれる症状が出て、NATROM医師にかかったとします。NATROM先生は私の心情を慮って、私が納得するまで私の求めるまま検査をしてくれたとしましょう。
そんなNATROM先生は私にとってとてもいい先生です。しかし、私の加入している保険組合は、検査費用(の保険負担分相当額)をNATROM先生に支払ってはくれません。
なぜなら、そういうこと(保険適用外検査にも支払う)を容認すれば、保険が破たんして組合員全員に多大な迷惑が及ぶ危険性があるからです。

NATROMNATROM 2013/06/21 11:34 「CIAにチップを頭に埋め込まれたので、CTスキャンをしてくれ」という患者さんが私の診察室に来たら、お話をよく聞いた上で頭部CTを撮るかもしれません。ケースバイケース。もちろん、counterfactualさんの仰るように患者の訴えそのままだと、保険適応にはなりませんが、そのへんはどうにでもなります。「脳腫瘍や脳血管障害などの器質的疾患が精神症状を引き起こしている可能性を否定できない」とかなんとか理屈をつければいいのです。

脳腫瘍や脳血管障害の可能性は問診や診察で推測できます。たとえば、「動脈硬化のリスク要因はなく、頭痛や麻痺などの症状がなく、以前に精神科に通院歴があるものの自己判断で通院を中止した」なんて病歴があれば、純粋に医学的には頭部CTの必要性には乏しいと判断できます。それでも、あえて頭部CTを撮るという判断はアリ、だと私は考えます。医師の裁量の範囲内。ただ、この判断の是非は臨床医の間でも意見がわかれるかもしれません。

頭部CTを撮るメリットデメリットそれぞれありまして、メリットは、患者満足度が上がることや医師患者関係がよくなることが期待できることです。おそらくはこの患者さんは精神科医の診療を要する状態と考えますが、いきなり精神科へ行けと言っても行く可能性は低いです。医師患者関係を構築した上でなら、精神科に受診していただける可能性が高くなります。パターナリズムに基づいた考え方ですが、臨床の現場には程度の多少はともかくとして、パターナリズムも必要だというのが私の考えです。

デメリットは、コストや被曝や、必ずしも医師患者関係がよくなるとは限らないことです。CTを撮っても「チップはCTでは認められませんでした」と説明したらそこで医師患者関係が悪化するかもしれません。あるいは「CTスキャンをしてくれという要求が通った」という成功体験がさらなる別の検査の要求にエスカレートすることもありえます。なので、「検査や治療について患者の希望があっても医学的な必要性がなければ毅然として断るべき」と考える臨床医もいます。公的保険財政がどうとかではなく、患者のためにならないという考えですね。これもパターナリズムに基づいた考え方です。実際の臨床の場ではケースバイケース、程度問題で運用されています(少なくとも私の経験の範囲内では)。

というわけで診察室内での対応はわりと複雑で難しい問題です。それはそれとして、「CIAがチップを頭に埋め込んでいる。その場合の症状はこれこれである。心当たりのある人はうちの病院でCTを撮ってあげる。遠方の人は近くの病院でCTを撮ってもらいなさい」などと吹聴しているトンデモ医師がいたとしましょう。そうしたトンデモ医師を批判することが患者さんの自己決定権の侵害になりうるとは私には思えないのですが。

counterfactualcounterfactual 2013/06/21 16:35 NATROMさんの

>そのへんはどうにでもなります。「脳腫瘍や脳血管障害などの器質的疾患が精神症状を引き起こしている可能性を否定できない」とかなんとか理屈をつければいいのです。

は、保険組合を騙すとまではいかないが、かなりそれに近いということですよね。
実際はそういう状況でして、かなり白(保険適応がエビデンスに追い付いていない、とか)からほとんど真っ黒(騙す気満々とか)まで様々のようです。

つまり、hokke-ookamiさんの

>医療現場でおこなえる範囲

という範囲は、本来は保険適応範囲なのですが、どこまで逸脱して医師の裁量でできるかというのは、全面的に医者のパターナリズム(とレセプト審査の甘さ)に依存します。
なお、私や私の家族達のことを考えると、CIAが埋め込んだチップを探すためのCTスキャンに保険から支払うのはやめてよー、というのが正直なところです。

NATROMさんは

>そうしたトンデモ医師を批判することが患者さんの自己決定権の侵害になりうるとは私には思えないのですが。

と、医源病と批判した心情をちょこっと漏らされていますが、私が文献を調べた範囲では、かなりNATROMさんに近い判断をしてます。
また、NATROMさんがホメオパシーを例に出された意図も理解できます。
根は同じようにみえますね。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/22 08:55 counterfactualさんへ
>医療のリソース振り分けを決定するのは、医者ではなく
>その根拠は科学的エビデンス

そうでしょう。研究情報の発信者と、現場の臨床医という二つの立場……今回の争点においては、その二つの立場が必ずしも同一とならないことも、答えを出しにくい背景の一つと考えています。

たとえば、刑事裁判でも似たようなことがあります(あくまで私個人の関心分野の比喩なので、ピンとこなければ忘れてください)。
原則的に、弁護人は被告の利益を守らなければなりません。裁判という場において検察という対立する立場と戦うことが前提であるため、被告を守ることに全力をつくすため、被告に不利な側面を隠すことも、ある程度まで許されます。検察と弁護人がそれぞれの立場で全力をつくし、最終的に裁判官が判断するという、裁判システム全体で正しい結果を導くためです。
しかしそれでも弁護人には葛藤が生まれることがあります。できるかぎり罪を軽くすることと、被告が主張したいことを主張させること、そのどちらが真に被告の利益になるのか専門家でも議論が分かれることが多いのです。
特に冤罪を主張する場合、うまく冤罪という立証ができなければ反省がないとみなされて刑が重くなるため、被告が無実を主張したくても説得したりして罪を認める方向へ動く場合も多いのです。


匿名希・望さんへ
>不毛と判断して議論から降りましたが。

はっきりいえば、私は答えの出ない争点だと思っていますが、だからこそ対立する論者がたがいに主張をつづけるべき争点だとも思っています。
念のため、無限応答責任を個人へ負わせないように、それぞれの主張に対して応答する義務を個人に持たせるべきとまでは思いません。逆に努力目標であるならば、患者自身も主体性を獲得したいならば、できるかぎり学んでいくべきだと私は思います。

まず、ざっくりいえば、医師と患者がたがいに自らの立場から見えることを語っていくしか、距離をちぢめる方法はないのではないかと。無限の提供が可能ではないからこそ、どこまで提供できるかという情報だって有意義と思います。
もちろん距離をゼロにすることは不可能でしょうし、医者と患者が一体化するとそれはそれで問題が出てくるでしょう。しかも患者はひとりひとり違うので、ひとつの場面で関係性を生み出せたとしても、他の場面にも必ず同じ対話があてはめられるわけではありません。過去の対話例や方策を蓄積しつつも、おそらくは永遠に折衝をつづけるしかないと思います。

hokke-ookamihokke-ookami 2013/06/22 09:16 NATROMさんへ
まず、コメントありがとうございます。特に、さまざまな場面を想定した具体的なコメントは、個別にレスポンスはしませんが興味深く読みました。

>トンデモ医師を批判することが患者さんの自己決定権の侵害になりうるとは私には思えないのですが。

まず、yunishio氏が懸念した要点には、ツイッター上のやりとり相手が患者であったこと、第三者的な患者がやりとりに参加したこともあると思います。
「CIAにチップを頭に埋め込まれたので、CTスキャンをしてくれ」という比喩の状況や、当初のTogetterまとめとは少し状況がズレているので、下記は私自身の考えとしてコメントしていきます。

専門家同士で議論がおこなわれる場合ですが、原理的に患者の意思が入りこまないからこそ、患者不在のまま何が患者にとって最適なのか議論するという状況におちいりやすく、それで患者が不満をかかえることもあるのではないでしょうか。
これはおそらく原理的に解消が困難だと思います。むしろ、患者も読む可能性があることや患者が不在になるかもしれないことを念頭におきながら、議論するべきなのではないでしょうか。少なくとも主張を広く公開する場合は(かといって、議論をクローズドにすればいいという単純な話でもありませんので、難しいところですが)

ちなみに、これは私個人の関心分野の歴史認識問題でも、いろいろと似た議論があります。
学問的に実在性を認めるまでにいたっていない戦争被害者は、その存在を認められないということ自体が苦しみになったりします。特に戦争や国家的犯罪が苛烈におこなわれ、加害者が卑劣で、被害者が少数弱者であるほど、立証する資料や証言者が失われがちというパラドックスがある。
医学でも、存在している可能性は高くても、学問的な蓄積をするには症例が少なすぎる場合に、似たような側面があるのではないでしょうか? yunishio氏が「心因性が大半」という部分に引っかかっていたのは、それが理由にあるのではないかと思います。

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