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法華狼の日記

2013-11-23

[][]ちばてつや賞のゴスロリ漫画『コンプレックス・エイジ』が趣味者から批判されるのは予想された事態だった

評判になりかけのころに読んで、絵面は綺麗なものの展開が一直線すぎないかと思った。物語は始まってもいなくて、ひたすら後退していくだけ。

no title

はてなブックマーク等での批判意見を見ると、おおむね同意できた。現実に敗北していく物語を、はっきり否定せずに描く意味がどこにあるのだろうか、と。

no title

しかし選考会議の議論が公開されており、読みあわせて印象が変わった。作品に対する評価が好転したわけではないが、何が高評価されて受賞されたかについて納得できたのだ。

できるだけ誉めようとしながら演出上のアドバイスをおこなっている最終選考会も面白いが、読者側の反応と照らし合わせて面白いのが二次選考会だ。

no title*1

●編集部員・D

1ページ目を見た時には、前回とあまり変わってないのかな、とちょっと不安になりましたが、普通にいい話で、主人公の気持ちもよくわかりました。ただ、最後の「ゴスロリ」をやめてしまったところには、違和感がありましたね。

●編集部員・Q

僕は、あまりにも「ゴスロリ」好きの人の心を捉えてなさ過ぎるし、すごく嘘くさいなーと思いました。この作家さんは、現実的な話より、非現実的な話を一生懸命描いたほうがいいんじゃないかな。

モーニング・ツー編集チーフ・矢作

「ゴスロリ」への愛のなさは、確かにものすごく感じられたので、「ゴスロリ」についてもっと調べて、もっと好きになってから描いたほうがよかったんじゃないかな。顔はすごくいいんだけど身体がちょっと下手なので、そこは早急に練習してほしいですね。でも、絵は素敵だし、「ゴスロリ」という題材も、いいと思います。

●編集部員・E

あまりにも“等身大の話”にし過ぎてしまったのかな、と。夢のない話ではなくて、夢のある話を読みたかった。でも、絵も上手いし、話もよく出来ていると思います。

●編集部員・N

私は個人的には、前作のほうが好きなんですよね(笑)。子供っぽくはあったけど、主人公の年齢特有の正義感なんかが、すごく瑞々しかった。ただ、これだけのクオリティのものを描けている人なので、期待値は高いです。

少なくない読者に批判されているポイントについて、全ての編集が同じように難点ととらえている。むしろ読者より点が辛いくらいだ。

これを踏まえて読み返すと、ゴスロリ趣味が加齢や抑圧に敗北した結末を新人漫画賞で描く歪みが、今度は興味深く感じられた。受賞ページによると受賞者は26歳で、作中で主人公に「引き際」をつきつけた20歳の若者と34歳の主人公の中間くらい。


もし物語が真に動きはじめる時を描こうとするならば、それは趣味をやめた主人公が20歳の若者と再会した時だろう。

もともと主人公は社会と自身の抑圧により、ゴスロリ趣味から身を引きつつあった。そこにほとんど葛藤らしい葛藤はなく、状況に流されているだけ。同じ結末でも、最終選考で求められた落差を描いていれば、それが加齢への抵抗という描写になったかもしれないのに。

それに比べて、自らが道を進むきっかけとなった「憧れ」の相手に会い、そこで無邪気に引導をわたしてしまった若者の視点ならば、もっと起伏ある力強い物語が描けるだろう。自分の前から去った主人公と、自身の加齢。自らの言葉に、二重に向きあわなければならない立場。

*1:引用時、文字強調をおこなった。

BigHopeClasicBigHopeClasic 2013/11/24 21:00 > 現実に敗北していく物語を、はっきり否定せずに描く意味がどこにある

ほっけさんが物語にそういう要素を求められているのはやや意外でした。
この辺りは、フィクションに何を求めるかの違いかなとは思うのですが、
私は「現実に敗北する」ことを「写生」することもまた物語だと思うので。

ただ、それがちばてつやの名前を冠した賞にふさわしいかといえば、それはまた
別の論点になるのかなとは思います。

とおりすがりとおりすがり 2013/11/25 04:19 悪意を漫画に込める人は一定数いてそんなマンガ
女性の女性に対する悪意が上手にマンガにまとまっている感じ

juangotohjuangotoh 2013/11/25 05:05 僕はあの作品はセカイ系の一変種だと思いました。最終的には主人公と夫の世界がすべてなんですよね。多分主人公がゴスロリを通してもやめてもあの夫は優しく受け入れてくれる。若い子の一言は今まで自分がかけてきたものを台無しにするもので、主人公はアイデンティティを焼き捨てるという、自己を焼き捨てるほどの葛藤を演じる。「演じてるんです」慰めて欲しいんですね。案の定夫はそれを受け入れてくれる。そういう「唯一の全肯定者」がいることで「悩んだ自分」が満たされる。すげえ甘ったるい話です。でも好きですけどねw

hokke-ookamihokke-ookami 2013/11/25 08:18 BigHopeClasicさんへ
>私は「現実に敗北する」ことを「写生」することもまた物語だと思うので。

ああ、そこは表現が悪かったですね。もちろん敗北する姿を描いた物語も好きです。むしろ好みなくらいですね。その意味では編集部の二次選考会と私の感想は同一ではありません。
この作品が、現実そのままの写生であるとか、どうしようもない主人公の無力さを誇張しているとか思えたなら、それはそれで意味が感じられたと思います。物語になっていなくても。
しかしエントリではふれませんでしたが、写生として見ると、それはそれで甘いところが目につくのですよ。

甘さのひとつが、少なくない感想で指摘されている、森の野焼きの場面ですね。
肉体や社会から後退をしいられ、その勢いでゴスロリ趣味から手を引くことを決意した場面なのに、最もリアリティが欠けている。ゴスロリよりよっぽど社会から引かれる行動をとっている。ここで急にリアリティレベルが崩れているから、ツッコミどころとして悪目立ちしたんじゃないかと思います。
これがたとえば、子供たちが秘密基地を作った果てに、大人たちに壊される前に燃やすような作品ならば、たぶん同じ野焼きでもツッコミが入らなかったんじゃないかな、と。
絵として野焼きを描きたかったなら、せめて警察につきだされたり地主に説教されるコマや、夫婦で後始末したコマを入れて、やるせなさを描けば写生に近づいたことでしょう。
現代ならば、ブランド物をHARD○FFに売りに行ったら20着で250円くらいだった、みたいなオチにしてもいい。ゴミ出ししたら烏に荒らされて道路に散乱し、もはや主人公にとって布切れでしかないとつきつけてもいい。


とおりすがりさんへ
うーん、つきはなしと読むと、それはそれで弱いと感じます。
おっしゃるように悪意がこめられた漫画作品は少なくありません。私はくわしくありませんが、蛸壺屋的なんていわれますね。


juangotohさんへ
>僕はあの作品はセカイ系の一変種だと思いました。最終的には主人公と夫の世界がすべてなんですよね。

……なるほど。写生でなくセカイ系という読みでしたら、野焼きの場面でリアリティが欠け、第三者の視点も欠落していることに、むしろ意味が出てきますね。
35歳になっても仲良くしている友人知人との関係はどう考えているのか?という疑問にも、より狭い人間関係に主人公が居場所を見出したと読めばいい。
ただ、年をとったら無理が出る趣味なんて捨てて、優しい夫に守られようという結論で読むと、その踏み台として使われた趣味者側が怒るのはいっそう予想されるべきことだな(苦笑)とも。

ゴスロリをモチーフにしている以上、ゴスロリに興味がある読者にアピールしている(できる)はず。その読者を捨ててしまう作品に編集が違和感を持つのは当然じゃないか、と門外漢ながら感じました。

匿名希・望匿名希・望 2013/11/28 12:39 女性側の意見で、「共働きで先に帰ってるのに飯も作らずおねだりする夫になんて癒されねーよボケ」というのがあり、サーセンと思ってしまいましたw

hokke-ookamihokke-ookami 2013/11/29 00:03 その点については私も気になっていました。「最終的に家庭に入る結論の物語で、関白亭主キャラを肯定的に描くのかよ?!」と。

ただ、「夫が完璧超人だったら主人公の立つ瀬がなくなる、最後に主人公を支えることを決意するよう成長したから良いんだ」という感想を見かけて、ちょっと難しい解釈かなとは思いつつ魅力を感じました。
ただそれなら、せっかくオタク趣味を持っている設定ですから、“趣味をやめてもつづけてもいい、どちらにしても支えるよ”という台詞を夫としてだけでなくオタクとしても発していたなら、もう少し納得いったかな、とも。

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