法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『白銀の意思 アルジェヴォルン』01 遭遇

XEBEC制作によるオリジナルロボットTVアニメ。初回は、ひとりの兵士にすぎない主人公が義侠心から民間人を助け、特殊な機体アルジェヴォルンに搭乗するまでを描く。
白銀の意思 アルジェヴォルン | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス
佐藤竜雄シリーズ構成は『輪廻のラグランジェ』というロボットアニメを総監督していたし、美少女アニメを多く手がけてきた大槻敦史監督は絵コンテや演出でロボットアニメ経験がある。その他のスタッフもXEBECとの関係が深い。


PDインタビューによると、地上戦を基本とするところを魅力としているという。
アニメ質問状:「白銀の意思 アルジェヴォルン」 王道の“戦争とロボ”を正面からとらえる - MANTANWEB(まんたんウェブ)

 魅力としては、戦いが基本地上戦のみですので、重厚なトレイルクリーガー同士の戦いやその中でのアルジェヴォルンの戦い方の異質性が感じられると思います。

とりあえず、主人公側勢力のコンゴウの3DCGで描画された膝関節は面白い。できるだけ低い姿勢のまま歩行できるようにというデザイナーとCGアニメーターの意思を感じた。
コンゴウ -オリジナルTVアニメ『白銀の意思 アルジェヴォルン』公式サイト-

敵勢力の「ガンバス」も同じように頭がなく、主人公機アルジェヴォルンの個性をひきたたせ、ミリタリズムっぽさを生み出す。
ガンバス -オリジナルTVアニメ『白銀の意思 アルジェヴォルン』公式サイト-
不満としては、さらに前面投影面積を抑えるため肩を小さくしてほしいところ。
あと、せっかく架空世界なのに、わざわざ戦車を出しているため、人型兵器の必然性が微妙になっている。同じXEBEC制作のロボットアニメ『ブレイクブレイド』は、原作漫画のおかげもあるだろうが、物語世界の整合性は良かった。歩兵と人型兵器が同居しているビジュアルも、ずっと説得的に描写されている。
ブレイクブレイド | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス


そして全体としても、地味なりに娯楽として成立させるための工夫が足りない。
ひとつは、ロボット兵器は敵味方をカラーリングで区別できるのに、それが人間の敵味方と対応できていないこと。どちらが主人公側で、どちらの視点で見ればいいのか区別しにくい。序盤はカラーリングやモチーフをそろえてほしい。人間の区別という意味では、キャラクターデザインも甘い。少年少女が多めなりに区別できている部類だが、地味な服装でも区別しやすいとまではいかない。
他には、ロボットアニメとしての面白味も弱いこと。むろん戦闘が地味であることまではいい。歩兵をロボット兵器と同時に進軍させて、対比的にサイズを理解させるのも悪くない。そうした地味な戦闘が、特殊な主人公を引き立てる展開までは定石だ。
しかし人工物の少ない山間や谷底を戦場とするため、対比によるサイズが表現できず、情景そのものに華もなく、かといって独自性もない。もともと映像リソースの節約になることもあって、アニメで戦場を荒野に設定することは珍しくない。つかみとなる初回で、地味さを個性にまで昇華するには、そうした先例を参照して超えてほしい。
何よりも不満なのが、展開が遅いこと。主人公がアルジェヴォルンと出会って戦闘するまでを初回に収めてみせたが、主人公は最初からロボット乗りであり、状況の飛躍が小さい。同期のロボットアニメ『アルドノア・ゼロ*1と同じく、前半がなくても物語は成立する。比べるとスタッフの共通する『輪廻のラグランジェ』の初回はよくできていた。一般人が防衛のためロボットに乗って戦うというオーソドックスな展開をふまえつつ、すっとぼけた言動で佐藤竜雄監督らしい個性が生まれていた。
輪廻のラグランジェ | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス
アルジェヴォルン自体の独自性が少ないところも弱い。いわゆるリアルロボットが一般的な世界でスーパーロボットが活躍するだけなら、前例がたくさんある*2。そうした他作品と比べた個性が見えない。これならば前半で描かれた、堅固な城壁を跳躍で越えたブラッディホッパーにこそ、作中の戦争を一変させるような重要性と個性を感じた。


初回の時点でも意欲は感じるが、先人が作品化してきた範囲を脱していない。
同じ制作会社の『ブレイクブレイド』と方向性が似ながら、全体が後退している印象がある。もともと劇場作品だったとはいえ、数年前の作品に独自性でも完成度でも負けるのは避けてほしいところ。
ともあれオーソドックスな作りではあるし、期待しすぎないよう楽しみにしておくか。

*1:感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20140707/1404694984

*2:ビデオ戦士レザリオン』や『ゲッターロボ號』のように、リアルロボットを意識したロボットアニメで多い。