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法華狼の日記

2015-12-28 上げたのは3日後

[][][]さっそく従軍慰安婦問題を「蒸し返す」競争を自民党員が開始

そう、自民党員だ。当事者なのに蚊帳の外におかれた被害者でもなく、政府間合意で制約されるわけのない支援団体でもなく、現政権に異論をとなえることが仕事の野党でもない。

巨大政党なら党員からひとりふたりの異論が出てくるのはしかたないとしても*1、政府与党の参議院全国支部長クラスが「間違った」と公言して処分もされないのなら、何のための合意だったんだろうか、とは思うね。

そしてこれが日本で広く報道されないなら、どの基準から「蒸し返す」ことになるんだろうか、とも思うね。


あと、佐藤正久議員がツイートしていることだが、「性奴隷」にまつわる文言は、合意に見当たらないので不思議に思っている。

そもそもその表現をつかっているのは韓国だけではない。慰安婦が奴隷状態におかれていたと認定したクマラスワミ報告書は日本政府もテイクノートに合意していたし*2、日本政府が盾にしてきたアジア女性基金でもつかわれている*3

日韓政府だけの合意で、第三者国はもちろん、日本国内で認めてきた表現をくつがえす根拠にはならないと思うのだが。

*1:日本の選挙権をもつ私が、仮定であれ「しかたない」などという資格があるのかはさておき。

*2:その認定をくつがえせるような新事実は出ていない。クマラスワミ報告書と吉田清治証言と性奴隷認定の関係をめぐるデマ - 法華狼の日記

*3「性奴隷」という表現を日本政府として拒絶したいなら、アジア女性基金を日本政府の成果として喧伝してはならない - 法華狼の日記

蛸笛蛸笛 2016/01/01 09:49 明けましておめでとうございます。

今回の件、いろんな所を見て回っても、「日本側は10億払ってそれでお終い。韓国側はせいぜい国内の平定頑張れよwww」的な他人事感覚でいる人が多く目について
実際にどこまで関与したのかは知る由もありませんが、米国もまた危ない橋を架けてくれたもんだなと思うほかありません。

件の参議院全国区支部長みたいな人が、韓国政府が抗議に対して放水とかの「毅然とした態度」を取ったりしたら
「ああ、やっぱりあの国には言論の自由は無いんだ」とかのたまう辺りまで想像できます…

Gl17Gl17 2016/01/01 10:48 あんまり目出度くない話題ですが、とまれ新年についてはおめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します。

ヒゲ隊長の露骨過ぎる拡大解釈にしろ、慰安婦像を努力目標と記して後から必要条件のごとく言い立てる政権自体にしろ、結局のとこ自陣の優位にゴールポスト動かす競争としか思ってないのが問題ですね。
そして、その「自陣」は極右志向グループであって、彼等の言い張る「国益」とは傍目には全く相容れないし。
何から何まで虚言ばかりの連中が国家指導の立場とは困ったものです。

rawan60rawan60 2016/01/01 11:15 本年もよろしくお願いします。

ま、案の定、前例に倣い、日本政府与党の側から「蒸し返し」の勝手な妄言が吐かれてしまったので「合意」は反故と言われても仕方ないですな。

naitou50naitou50 2016/01/01 11:56 素朴に、日本側の代表になる人たちが、当時のすべての慰安婦たちに対して、かわいそうだと思っていないことだけが、問題なのではと思いますねぇ。

senbonzakurasenbonzakura 2016/01/01 15:23
まさに「蒸し返す」というのがまだネット世論なら分からないではないのですが、、

安倍総理のマッチポンプを理解できないウヨばかりです。

2007年に何故米国下院が慰安婦に関する対日非難決議をし、国連を始めEU議会や韓国は勿論多くの国がそれに続いたのか?

「IWG報告書」の序文にSteven Garfinkel氏が書いた
私は2001年に劇的に変化したこの問題に対する周囲の深い思いを理解した・・・
という2001年の歴史教科書問題や読売の慰安婦捏造記事問題を考えなくてはなりませんね。

それにしてもここ数日拙ブログのアクセスカウントが異状に上がっています。
また年末にウヨがコメ欄に書きまくっているので面白いです。


フォッケウルフさんやコメント常連の方には去年1年間勉強させていただきました。感謝です。
本年もどうぞよろしくお願いします。

桂馬桂馬 2016/01/01 17:11 あけおめです。

韓国側が「ゴールポストを動かした」から問題解決が遠のいてきたという論調が出ていますが、そもそも問題をややこしくしてきたのは日本側にも「ゴール自体を認めてこなかった」人たちがいたからなわけで。
そこに対する論評がどこにも見えないのは、この問題に関してメディアが如何に逃げ腰かという証左でもあるんですよね。
今回の合意には事実関係に絡む言及はいっさい無かったのですが、メディアがこんな調子だから、無責任な右派は政府見解を無視して放言をし続けるのでしょうね。

十澄十澄 2016/01/01 17:34 この件に関する日本マスコミのフカシ、飛ばし、造りはあまりに酷い。
韓国側がなんら約束なぞしていない少女像撤去や性奴隷文言撤回について、さも決まったかのように言いまくっている。
先日の産経「伝聞」記者無罪で調子に乗ってるのか。
そこにまた便乗してこのヒゲや支部長のようなチンピラが騒ぎまくってる。
パク政権から見れば早速裏切ってるように見えるでしょうね。

takataka 2016/01/01 21:23 何故、日本政府や日本のマスコミを信じられなくて
韓国政府や韓国のマスコミの言い分を
鵜呑みにするのか

rawan60rawan60 2016/01/01 22:45 ↑なんじゃこれ?

じゃあ、記事中引用されている日本の自民党員議員のコメントは「鵜呑み」になるぞ(笑

Gl17Gl17 2016/01/02 00:27 「異論は許されるべき」とか言って記事批判したつもりのブコメ酷いですな、まあ内容で擁護が不可能な場合、態度論法にいくのと一緒でしょうけど。

別段異論を言うなという話ではないし、ただ虚言をさも正当のように装って相手方を一方的に難ずるのは卑怯、て指摘だのにねえ。
異論の存在を重要というなら、誤った発言への批判こそがソレを担保する為に必要なのは当然でしょうに。…ホント批判の為の批判連中は安直だなあ。

Gl17Gl17 2016/01/02 00:29 あと「異論の存在を許さない」のが指弾されるべきならば、そこらのネットで韓国側の異論自体を協定違反とか言い立てる連中が山ほどいるのは一体どうしたもんだか…。
この記事もそういう情勢を当然に背景としてるのに。

rawan60rawan60 2016/01/02 03:37 ねえ。
それこそ政府とかかわりのない民間団体の運動や言論を「蒸し返し」なんて因縁つけたら政府による弾圧に他ならないわけで。

SuiSanSuiSan 2016/01/02 06:08 あけましておめでとうございます。新年早々の長文と連投をお許し下さい。
とても重要なことであり、誠心誠意を以って書いたつもりです。

此度の日韓合意について「歴史的、画期的な成果」などと喧伝されていますが、実際には報道上のインパクトほどの法的な変更はないと思われます。恐らくは法よりも世論へのアピールを意識した声明であろうと思います。

これまでの経緯を調べようともしない人々には『最終的かつ不可逆的に解決されることを確認』という部分が強い印象を与えるのかもしれませんが、そもそも日韓協定も『完全かつ最終的に解決』と謳っていたわけで、もちろんあらゆる条文がそうであるように文言単体を以っては意味を確定できようもなく、その指し示す範囲の具体的内容が問題となるわけです。

それには解釈が重要となるわけですが、日本側は以下のように答えています。
▼慰安婦問題で日韓が合意。日本政府が10億円拠出へ【声明全文】 http://www.huffingtonpost.jp/2015/12/28/japan-korea-agreement_n_8882714.html
日本政府は元慰安婦の請求権は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取っていたが、「従来と変わりない」と記者団に語った。その上で、日本政府による10億円程度の予算措置は「国家賠償に当たるのでは?」という記者からの質問には、「財団は日韓で協力して事業を行うものであり、賠償ではありません」と強調した。▲

この発言を信頼するならば、此度の合意による請求権への影響は乏しいように思います。

もし日韓協定と同様に、「解決済み」の意味するところが「外交的保護権の放棄(しかもその範囲には議論の余地を残したもの)」に留まり、「個々人が国内的に訴訟を起こす権利」については相変わらず消滅していない、という従来からの日本政府解釈が維持されているならば、特に法的状況への変化はないと思うのです。

慰安婦支援への新たな拠出金についても、別に請求権の放棄とトレードオフではない、単に純粋な提供である、という体裁であり(恐らく請求権放棄と関連付けてしまうと司法に問われ得る為)、これは日韓協定における経済協力の位置付けと変わらないと思われます。

だから被害者個々人が相変わらず国内訴訟を起こすことも(韓国国内では勝つことすら)可能であると思われます。
日本企業等に対し賠償を求めることも、韓国政府を突き上げることも、従来通り可能と思います。

SuiSanSuiSan 2016/01/02 06:10 ただ、もちろんわざわざ声明を出すのですから何かが変更されている可能性も大いにあります。

例えば、此度の合意における「解決」とは、日韓協定では曖昧だった外交的保護権が放棄された範囲に、明確に慰安婦問題に関する対日請求権の放棄も含まれたことを意味する、といった解釈が出されるかもしれませんし、あるいは依然外交的保護権は残っているが韓国政府が自発的に行使しないというコミットメントだ、といった解釈が出されるかもしれません。

しかし、いずれにせよ既に韓国司法は日韓協定への似たような解釈にNGを出しているわけですよね。

大法院は『「反人道的不法行為や植民地支配と直結した不法行為による損害賠償請求権」は協定の対象外※1』としているわけですから、此度の合意が外交的保護権の放棄を意味するなら司法に問われ無効とされかねませんし、憲法裁は『韓国政府が日本に対し十分な働きかけをしてこなかったことが違憲と判断※2』していますから、不作為に対してもまた尻を叩かれ再び日本への積極的な働きかけを強いられるかもしれません(※1、2 ▼韓国における日本企業への戦時徴用賠償命令判決とその背景 | nippon.com http://www.nippon.com/ja/in-depth/a02703/▲)。

斯様に、もし此度の合意が上記のような強い意味合いならば司法で争われたら負けかねないわけで、故に、此度の声明は法的に大きな変更をもたらす声明ではなかろう、と僕は考えるわけです。

文書化が見送られ、また質問なしの会見(同席の下の発言でなければ一方の解釈を他方が否定する余地も残るから)で発表されたことをみても、此度の合意は法的な問題に抵触しないようにわざと曖昧な声明にしているとも思えます。

例えば「10億円」について請求権の放棄とトレードオフであるとは明言されず曖昧な位置づけにされているのは、明らかに直前の憲法裁判決の影響でしょう。
▼時事ドットコム:請求権協定、違憲性判断せず=「審判対象ではない」と遺族訴え却下−韓国憲法裁 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015122300200
憲法裁は「支援金は補償、賠償ではなく、人道的な意味の給付であり、憲法が保護する財産権に該当しない」と述べた。金額が不十分であっても合憲と判示し、韓国政府のこれまでの国内対応を支持した。▲
▼日韓合意支えた水面下の交渉 首脳側近、年末一気に進展:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASHDZ5HC9HDZUHBI01J.html
 今月23日、韓国の憲法裁判所で日韓請求権協定を違憲とする訴えが却下されると、同日午後からプロジェクトの交渉が始まり、深夜までの協議で、慰安婦問題をめぐる合意事項のほぼすべてが固まった。▲
▼【日韓外相会談速報(7)】岸田外相「予算措置は国家賠償ではない」 - 産経ニュース http://www.sankei.com/politics/news/151228/plt1512280029-n1.html▲

此度の合意内容が当該憲法裁判断の範囲内に収まるなら少なくとも明確に違憲とされ無効になるような恐れは少ないわけですが、それは逆に言えば此度の合意内容の及ぼす影響の範囲は、憲法で保障された被害者らの権利が侵害されない限りでしかない、ということを意味しているわけです。

これを裏付けるように、非公式なリークは観測気球のように幾つか上げられていますが、いずれも取り下げられています(少女像撤去然り、ユネスコ申請取り下げ然り)。恐らく公式に具体的な追及をされれば危ういからこそ非公式な形での印象操作に留まるほかないのであって、結局のところ此度の合意内容は被害者らからの法的なアクションを抑え込めるような性格のものではない、ということをむしろ浮き彫りにしているように思うのです。

SuiSanSuiSan 2016/01/02 06:11 というわけで、やはり此度の合意は法的には意味合いの薄いものであると思われます。

もし仮に外交的保護権については法的状況が変更された可能性があるとしても、被害者個々人が訴訟を起こす権利については何ら合意以前と変化していないのは確実である、と思います。つまり、相変わらず被害者らが法的なアクションを起こし得る状況は続いているわけです。


しかし、その一方で訳知らぬ一般の人々にとっては『最終的かつ不可逆的に解決されることを確認』という文言が自然言語として強い印象を与えると思います。この点も日韓協定と同様です。

故に、被害者らによる訴訟が起こされる度に、大衆レベルでは「最終的かつ不可逆的に解決したはずなのに何故……」といった反応が相変わらず起こるであろう、増々強まるであろう、ということも容易に予想できます。法的には従来と同様に問題ないにも関わらずです。

ですから、事態は何ら変わっていない、あるいは増々齟齬が深まるのでは、と思うのです。

むしろ此度の合意の意図は、法的な決着ではなく、曖昧な声明によって正面から司法に問われることを回避しつつ、しかし同時に法的に決着したかのような印象を大衆に与え、被害者らへの反感を募ることで、依然可能であるはずの被害者らによる法的アクションを「自発的に」思い止まらせる、という効果にこそあるのかもしれません。


このように、過去に積み重ねてきた解釈が共有されず、文言のみから受ける自然言語的ニュアンスによって大衆レベルでの疑念や憎悪が生じ、政治目的の達成を許してしまう、という状況は安保法制をめぐる解釈改憲とも共通の問題だと思います(法哲学者らのナイーブな反応から見て、憲法学の蓄積に関しては、学外はおろか隣接する分野にすら共有されていない状況と思われますけれども)。両問題とも政権に批判的な人々までもが国会議事録すらロクに参照しない、という点も共通しています。

斯様なギャップを生じない為には、メディアや学者らがきちんと『最終的かつ不可逆的に解決される』といった文言の指し示す具体的な範囲を、会見等で質問して言質を引き出したり、過去の答弁を紐解いて整理したり、といった作業が不可欠です。それも国会議事録すら確認しないような層にも理解できるほど徹底的に解り易く、です。


どんな条文も発言も、その背景となる事情の解説がなければ、外在的情報から切り離されたテクストのみを「精読(close reading)」するのみ、といった形の「新批評(New Criticism)」的な読解態度を以って相対するしかなくなりますし、政治はこれを利用して曖昧な言明を用いミスリードを誘います。

ですから無用な混乱や憎悪を生じぬ為にも、専門家がすぐ手の届くところに平易な解説を用意せねばなりません。
でなければこうした作業は、例えば池上彰のような専門家でもない人間に委ねられてしまいます。

SuiSanSuiSan 2016/01/02 06:12 ただ、こと「日本をめぐる」戦後補償問題の解説は、いわゆる「日韓関係の専門家」と目される人々の手には余る仕事かもしれません。

メディア等で「日韓関係の専門家」と紹介される学者らは、往々にして国際政治学者であることが多いように思います。しかし日本政府が「個人請求権は消滅していない」という解釈を用いた時点で、被害者個々人も司法を通じて直接アウトプットするアクターとなってしまっているわけで、もはや政府間で解決できる問題の範疇からはみ出ています。

つまり、こと「日本をめぐる」戦後補償問題は歴代日本政府の条約解釈によって国内アクターを捨象したモデルでは捉えられない問題と化してしまっており、故に各国政府のみをアクターとするサードイメージ中心の分析レベルでは捉え切れず、国際政治学の(特にリアリズムの)射程からは外れるわけです。

浅羽氏のような学者による分析が時に粗雑になりがちに見えるのも、こうした概念レンズの不釣り合いな取捨選択によるものではないかと思うのです。

「日韓関係の専門家」というディシプリンが自明の如く存在しているわけではなく、それぞれ得意分野は異なる学者らが総称されているに過ぎません。
もし当該問題について専門家の意見を伺うならば、適切なのは歴史学者や法学者であり、構造的に捉える場合でもセカンドイメージを軽視しないような立場の政治学者や社会学者に訊ねるべきではないか、と思います。


ただ、木村幹氏については今回この点に関しては案外まともだったと思います。
ツイッターで当該問題をめぐる国内アクターの影響力に触れ、懸念を示していました。

また日韓関係が専門ではないですが、三浦瑠麗氏も同様の懸念を示していました。三浦氏は国際政治学者とはいえ戦争原因論すら徴兵制といった国内要素から説明することを忌避しない立場のようですから不思議はありません。
▼慰安婦問題の日韓政府合意を受けて http://blogos.com/article/152175/▲


しかし、あくまで学者として誠実であろうとするならば、このように被害者個々人を捨象できないアクターと化してしまったのは日本側の条約解釈が発端である、ということにも併せて触れるべきであろうと思います。明らかに歴代自民政権の失態であり責任問題ですから。

韓国政府側は締結当初、個々人が訴訟を起こす権利をも含め消滅させられた、と思い込んでいましたし、国民にもそう説明してきたわけですから、宮沢首相の訪韓時の発言は青天の霹靂だったと思います。

つまり地獄の釜の蓋を開いたのは日本政府であり、自ら戦後補償問題を政府間交渉では解決困難な問題にしてしまったわけです。だから山手治之氏などは、個人請求権を含め消滅させたと表明すべきだった、としているわけです。

もちろん訪韓時の発言は宮沢個人の責任ではなく、日本政府が繰り返してきた解釈を踏襲しただけです。
これは個人請求権の放棄によって日本国民からの賠償請求の矛先が日本政府へ向く懸念があったからです。
だから「個人請求権は消滅していない(だから賠償は個々人が直接に相手国へ請求してくれ)」としたわけですね。
日本政府は同様の態度を、日中、日ソなど他の戦後補償に絡む条約に対しても一貫して取ってきました。

この解釈が、回りまわって国外の被害者らの賠償請求訴訟を可能とする根拠となったわけですね。
そして韓国国内では日本国内のように別途措置法が講じられなかったこともあり、被害者側の勝訴が相次ぎました。むしろ日本国内で別途措置法が講じられたという事実こそが、日韓協定単体では被害者個々人が請求訴訟を起こす権利を消滅せしめていないことの証左として大法院判決では参照されました。

つまり自国民への補償を渋る為に捻り出された条約解釈が、皮肉にも国外の被害者へのアシストとなったわけです。
このナショナリズムから見てさえ唾棄すべき失態を糊塗する為に、本来なら歴代日本政府へと(つまりは自民党政権へと)向かうはずの国民の怒りの矛先を他国の戦争被害者へ、特に慰安婦へと向けるような言説を流布している、という側面が日本をめぐる戦後補償問題における被害者非難や歴史否認論にはあるのだと思います。

つまり日本の被害者非難や歴史否認論は単なる憎悪ではなく政府自身の利害に絡んだ必然的な現象ということになりますから、日本側からの蒸し返しを完全に抑え込むことは土台無理な話なのです。正確に経緯が整理され理解が広まるということは、日本政府への、つまり歴代自民政権への責任追及を招く、ということを意味するわけですから。


斯様に、国外の被害者個々人による訴訟然り、国内の被害者非難や歴史否認論然り、戦後補償問題をここまで深刻化させている要因は、いずれも日本政府の「個人請求権は消滅していない」という条約解釈に端を発するわけです。この条約解釈の拙さは山手論文でも指摘されているわけですから、日本政府の責任問題に触れないのは学者として片手落ちでしょう。

SuiSanSuiSan 2016/01/02 06:14 以上、此度の合意は報道のインパクトに反して象徴的な意味しか持たず、恐らくは法よりも世論を意識したものである、と僕は思います。

政権にとっては、バカどもには丁度いい目眩しだ、といったところでしょう。

実際、政権に批判的な人々さえもが、背景をまったく把握せずに直観で評価を下しているように思えます。
実に空寒い知的状況です。少しは調べないんでしょうか。
批判者さえこんな状態では、被害者が全員亡くなるまでの時間稼ぎには充分過ぎるアピールだったと言えるでしょう。


そもそも正確な経緯が踏まえられていなければ、鋭い質問で言質を引き出す、といった芸当も不可能です。
当該合意前はどのような状況だったのか、そして当該合意によって何が変わったのか、変わらなかったのか、具体的に詰めて質問し、確認し、整理し、公知する作業をきちんと担う者に乏しい、という社会状況は深刻です。

僕は前々から上記で説明してきたような経緯を、きっと多くの識者が整理して伝えるだろうし、それは広まるだろうと楽観していました。しかし、それは希望的観測に過ぎませんでした。

僕が法華氏やApeman氏のブログにコメントし始めた理由も、他に然したる中心が見当たらないからです。
割と絶望的な気持ちでこれを書き込んでいますが、氏らのブログの読者層からみて無駄ではないと信じたいです。


もしもこれを学者学徒の方々がお読みなら、当該問題に限らず学問の死活問題として、それぞれの分野における専門的研究の蓄積についての総説や広報の強化を考えて頂きたいと思います。歴史学や憲法学で起きたことは対岸の火事ではありません。

どんな分野もその研究成果を学外からも容易に参照可能な形で用意できていなければ、戦後補償や安保法制で行われたように、本来の文脈から切り離された文言単体の印象を利用したミスリードの標的となり得ます。複雑なコンテクストよりもテクストの方がシンプル且つ万人に等距離でアクセスできるわけですから説得力を持ってしまうわけです。

我々は「だってそう書いてあるじゃないか」という明快さを超える説得力を用意せねばならないわけです。

ですから、例えば総説研究を業績として正当に評価するとか、まだ専門家間で支持を得ていないような説を直接学外へ流布するような会員に自粛を求める、といった方針を模索して頂きたいと思うのです。でなければ同様の政治手法がまた繰り返されると思いますし、それは徐々に学問の自律性を奪っていきます。

斯様な手法は歴史学や憲法学では既に成功してしまっているわけですから危機感を持って欲しいと思います。
残念ながら当該問題ではもう遅すぎるかもしれませんが、将来に渡る反復は防げる可能性はまだあります。


最後に今一度、現時点で最良と思われる日韓条約解釈史の平易な纏めを貼って置きます。
▼[PDF] 「日韓請求権協定で解決済み」という風評 - 関釜裁判を支援する会
www.kanpusaiban.net/PDF/20150111yamamoto.pdf▲

ただ、こうした纏めは、いち弁護士に(しかも一方のインサイダーに)担わせるべき仕事ではない、とも思います。
きっと氏も日本社会の現状に対する絶望的な気持ちでこれを纏めたのではないでしょうか。

もちろんきちんと仕事を果たしている学者もいるわけですけれど、あまり注目されていないように思います。
▼韓国における日本企業への戦時徴用賠償命令判決とその背景 | nippon.com http://www.nippon.com/ja/in-depth/a02703/▲

また、多少の根気さえあればCiNiiで山手治之氏の論文が読めるわけですから、皆さんせめてその程度は踏まえてから此度の合意声明について評価を下して頂きたいと思います。


以上、毎度の長文と連投、まことに失礼致しました。今年は良い一年でありますように。

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