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法華狼の日記

2016-01-09

[][][]擁護者によると、法哲学者の井上達夫氏は近現代史の専門家より正しく歴史を知っているらしい

法哲学者の井上達夫氏はアジア女性基金に「フリーライド」しているようにしか読めない - 法華狼の日記に対して、いくつかの反論がブックマークでコメントされていた。

ある意味で興味深い内容だったので、個別に応答することにする。


id:com123cojp

要するに井上氏は大沼氏の立ち位置に共鳴してるという事でしょ。あと"「立憲主義」の主流的見解からすれば9条は端的にいって異物"なのを知らない田島正樹氏なんて引用するのやめたら? https://ask.fm/tkira26/answers/110787364327

私が引いた田島氏のエントリは、むしろ日本国憲法がいびつであることを前提にして立論している。「国民主権の原則に、真っ向から反するものである。我々は、そのような制約のもとで戦後史を歩み始めているのである」「もともと憲法が矛盾をはらんだものであることは珍しくはない」*1といった主張に対して、「9条は端的にいって異物」という見解がどのように反論となるのだろうか?

そもそもリンクされた吉良貴之氏の見解は、直接的な田島氏への批判ではない。エントリそのものへ見解を語ったものもあるのだから、それを引くべきだろう。

弟子からみてどうすかhttp://blog.livedoor.jp/easter1916/archives/52429081.html | ask.fm/tkira26

少なくとも直接的な否定はしておらず、留保をつけつつ田島氏の「フリーライダー」論を「とても面白いなあ」と評価している。


id:going_zero

「矛盾しない理論を構築することもできるかもしれない」と言っておきながら、現実的でないと切り捨てるのは、典型的な反知性主義。矛盾しない理論で反論しなきゃね。山形浩生内田樹批判を読んでみようね。

私は、矛盾しない理論が示されるまで井上氏の主張を現実の指針とすることは難しいと書いたのであって、現実的でないと切りすててなどいない。

そもそも相手の主張に矛盾を見いだすことは、それ自体が「矛盾しない理論」となるはずだが。批判には代替案が必要という観念にとらわれていないだろうか?


id:hagakuress

他の緩慢なハテサ諸氏はともかく、ブログ主には、著書を読んでの、さらなる詳細な反論を期待。誤認をもとにした反論にしか読めない。

まったく無根拠に誤認と評価する人間に「さらなる詳細な反論」を求められても困惑する。

それにhagakuress氏の主張では、独立した著書を読まなければ誤認してしまうような文章をよせた井上氏に問題があることにならないか。

コメント欄も無残なくらい単純な自己肯定発想による事実認識の歪みが酷い。

もっとも多くの文字数でコメントしているのはid:NakanishiB氏。著作から引用して具体的に疑問点をならべているのだが、どこに事実認識のゆがみがあるのだろうか。きちんと頁番号を明記した引用文をならべつつ、細かな論評はさけているように見える。

たとえばNakanishiB氏は下記のように事実誤認を指摘していた。

「ホロコースとの被害者のユダヤ人ドイツ占領地域の外国人もいますが、多くはドイツ国民です」p36とむちゃくちゃです(実際は外国人が9割以上その半数近くがポーランド国籍)

これについて、ドイツ近現代史が専門の東大教授、石田勇治氏の解説を最近のSYNODOSから引用しよう。

「世界史上最大の悪」ホロコーストはなぜ起きたのか / 石田勇治×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-

ナチ・ドイツは1939年第二次世界大戦を開始するんですが、最初にポーランドに侵攻して、40年にフランスなど西欧諸国を、41年にソ連を攻撃します。そのように一気に勢力圏を広げるのですが、このとき制圧した場所、特に東欧に多くのユダヤ人が存在したんです。虐殺犠牲者の大半は、そのユダヤ人でした。

井上氏の認識は、『ダイヤモンド』の書評でも要約されている。

日本の“リベラル”は、世界標準の“リベラリズム”とは別モノだった[橘玲の日々刻々]|橘玲の日々刻々 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン

ドイツでは、戦争責任の主体はナチで、国民は「ナチの犠牲者」だとされている。おまけに責任の対象は侵略戦争の相手ではなく、ユダヤ人に対する強制収容と集団虐殺に限定されている。ホロコースの犠牲者の大半はドイツ国民(ドイツ系ユダヤ人)だ。

もちろん少数説をとなえる専門家の主張と、専門家の多数説をひいた非専門家の主張とでは、後者が正しいことも少なくない。しかしホロコーストの犠牲者比率はそうではないはずだ。hagakuress氏は井上氏の見解が近現代史の専門家より正しいという根拠でも持っているのだろうか。



id:Day-Bee-Toe

まず日清戦争や第一次大戦の「賠償」は勝った側のヤクザが負けた側のヤクザを締めるという話なので比較自体論外。そして護憲派の「妥協」は原理原則をかなぐり捨てる話なのでアジア女性基金とは質的に違う。

前半はよくわからない。第二次世界大戦で日本が負けた側だということを知らないのだろうか。「ヤクザ」同士の戦いという構図を日清戦争に見いだすのも珍しい気がする。ただ、従軍慰安婦が同国人の比率が多かったという学説にもとづくなら、たとえば米国日系人収容所問題について謝罪したことが比較にふさわしいという考えはあるだろう。

後半は、元被害者個々人によりそわない事業が補償の原理原則をかなぐり捨てるものだ、という置きかえが容易にできる。しかしそれよりコメント欄のG氏による下記の主張とてらしあわせると、なかなか味わいぶかい。

井上氏は「内心では自衛隊の必要性を認めながら表面的には九条死守という原理主義的ポーズをとって妥協しない」ことを批判している。九条にせよ慰安婦問題にせよ、一貫して妥協的でないことを批判しているんだから単なる誤読。原理主義でないから批判しているのではない。

「原理的にふるまう時は妥協的でないことを批判し、妥協的にふるまう時は原理的でないことを批判する」という私の読解をかわすため、ひとりは「原理原則をかなぐり捨てる」ことを批判していると主張し、ひとりは「妥協的でないこと」を批判していると主張する。

井上氏の主張が矛盾していると読まざるをえない、何よりの証明といえるだろう。

hokke-ookamihokke-ookami 2016/01/10 13:51 念のため、hagakuress氏はコメント欄を見てブコメをしていますが、NakanishiB氏のツイッターでの指摘まで読んでいる可能性は低いでしょう。
でも、無根拠に「無残なくらい単純な自己肯定発想による事実認識の歪みが酷い」と主張したからには、これくらいのハードルは超えてくれないと困りますね。

NakanishiBNakanishiB 2016/01/10 14:19 どうも、ちゃんとした返事はあとでしますが私のドイツの戦争責任問題についてのコメントの中にわかりにくいホロコーストについての指摘もあります。

>「ホロコースとの被害者のユダヤ人はドイツ占領地域の外国人もいますが、多くはドイツ国民です」p36とむちゃくちゃです(実際は外国人が9割以上その半数近くがポーランド国籍))

 その前の文章が誤変換だらけですが。
 
>((ブラント首相は)なお割る社は蜂起の犠牲者への県下もしているという情報もありましたが未確認)
>((ブラント首相は)なおワルシャワ蜂起の犠牲者への献花もしているという情報もありましたが未確認)

 井上氏の歴史認識と戦争責任についての議論は「普遍の再生」の中の議論がもとのようですがそれがこれほどずさんなのかは本が行方不明のためわかりません。

 田島氏は哲学者で法律の専門家ではないですがあの寺家区論に限定したという文ですら9条に問題がないという前提でないことが読んでわからないとはあきれ返る、のもあきましたね。ではすいません。

hokke-ookamihokke-ookami 2016/01/10 14:25 あ、すみません……私こそが読み落としていました。
「ちなみにNakanishiB氏はツイッターで、コメント欄とは異なる事実誤認を指摘していた。」を「たとえばNakanishiB氏は下記のように事実誤認を指摘していた。」と訂正しました。
あわせて、ツイート2つのはてな記法による引用から、コメント欄からの引用に訂正します。

NakanishiBNakanishiB 2016/01/10 17:40 いえこちらこそわかりにくい文章でどうもすいません。あとコメントの引用のみではちょっと問題のホロコーストについての認識の間違いが持つ意味がわかりにくいのでツイートも引用しておいたほうがいいかと。ではとりいそぎすいません。

hagakuresshagakuress 2016/01/10 22:00 法的責任について争いがあり、決着出来ないときに道義的責任としてではあれ、やれる事はやろうと、戦争責任の問題にここまで踏み込んで多国民に賠償・謝罪した例は無いはず。
しかし、アジア女性基金側と同じリベラルの一部である、韓国や日本の支援団体や人権団体が『政府の法的責任を隠蔽するための欺罔的手段』という批判を行い、なにがなんでも自己否定の土下座外交が要求される事態となった事で、リベラルイコール自虐的というイメージを生み、忌避感が広がっていった。

というような表現が著書にもありますが、井上さんの慰安婦問題に関する認識は、元々アジア女性基金などで、共生のための和解や歩み寄りの政治を期待されたリベラルが、過度な自己肯定をもって過度の自己否定を要求する韓国や日本の支援団体や人権団体の一部非妥協的なリベラルに一蹴され、政治的に敗北。問題の判定基準を独占される事となったが、これが国際的な戦争責任への国家の対応と態度のスタンダードを適正に評価した上でのモノで無かったがゆえに、対立を政治的に固定化してしまって、社会的にもリベラルへの幻滅に繋がったと感じているんじゃないですかね?

実際個人的にも、この問題においては過度の自己肯定を実現せんとする右派と、過度の自己否定要求を突きつける一部左派リベラルとの間で問題の政治対立が先鋭化し、社会感覚から乖離してしまっている感は否めないと感じます。

「保守派の一部」は、なぜ嫌われないのだろう?
『普遍主義的正義を無視するような側で、ダブルスタンダードだろうが開き直る』などの表現が井上さんの著書にありますが、私も個人的に失う信用が既に無いのが保守派の一部だと思います。あえて表さなくとも予め期待されていない事は自明ですから、改めて嫌われる事も無いのかもしれませんね。

『戦争犯罪や人権被害に対する日本の謝罪と補償、事後対応は充分でない』という事実認識は一定の見識を持った倫理的価値はあるものの、現実として、これの判定基準に則った対応が国際的なスタンダートであると明確に言えるのかどうか? この点において、私も国際社会の側が、法理的にも政治的にも棚上げの無い公平、公正に対する規範的態度を確立しているとは到底考えらないと思ってますし、井上さんが、必要とされるのは、過度な自己肯定でも過度の自己否定でもない適切な態度である。と、おっしゃる事の意味は解る気がします。

rawan60rawan60 2016/01/10 23:21 >法的責任について争いがあり、決着出来ないときに道義的責任としてではあれ、やれる事はやろうと、

ちゃうよ。
そもそもこの事業は明るみになった事案に対して「法的責任」による国家の謝罪と、その証明である賠償を回避することが前提にされてのものなんだよ。
それゆえ、その本質が露呈することにより主導したその「日本の」リベラルもろとも反発され、批判対象になったわけ(一方で事実関係、調査、検証等、資料、史料としての価値、功績の大きさは否定されない)。
端的にいえば、被害者側にしてみれば、その「謝罪と賠償」において納得のいくものであれば、それこそその相手が保守とかリベラルとかは無関係な話だろうに。

それを被害者目線抜きで「過度の自己否定を要求する韓国や日本の支援団体や人権団体の一部非妥協的なリベラル」なんて固定した相手への視野狭窄なものいいしかしないからドイツを引き合いに出されたりもするわけ。

rawan60rawan60 2016/01/10 23:39 しかも、問題提起の最初は、その「存在」さえ「知りようが無い」と政府答弁で公式に否定したわけだしねぇ……

GG 2016/01/11 00:54 >井上氏の主張が矛盾していると読まざるをえない、何よりの証明といえるだろう。

人によって読み方が違うという当然の話に過ぎない。こんなことも言わなければならないのだろうか。

Gl17Gl17 2016/01/11 10:41 それが相互に矛盾してるから、擁護の少なくとも片方は誤りだし、かつどっちの擁護についても反駁はしてんだけど…。
ホントにとことん中身は触れないんだなあ。具体的に議論したら不利だと自覚あんだろうな。捨てハンしか書けない態度含めて。

ツッコミ済みだけど上の人も結局、事実認識曲げるとこから話が出発してるし。

GG 2016/01/11 13:19 >>Gl17

あなたは昔から法華狼氏やApeman氏のコバンザメで虎の威を借る狐をやってるだけなんだから引っ込んでて欲しい。だいたい、あなたはブコメにしろこの米欄にしろその中身の話をしているのか?

Gl17Gl17 2016/01/11 18:57 捨てハン書き逃げさんから虎の威とか言われるとは(笑)
只の悪口だけで反論は一切無いのねやっぱり。

hokke-ookamihokke-ookami 2016/01/26 06:38 hagakuressさんへ
>やれる事はやろうと、戦争責任の問題にここまで踏み込んで多国民に賠償・謝罪した例は無いはず。

対象が多国民だったのは、そもそも日本軍慰安所制度による加害が広範で、半世紀近くたってから制度そのものが追及された事例が珍しいからでしょう。
そしてそこまで踏み込ませたのはリベラルのおかげじゃないんですか?と問うているんですが。

>なにがなんでも自己否定の土下座外交が要求される事態となった事で、リベラルイコール自虐的というイメージを生み、忌避感が広がっていった。

hagakuressさんの認識においても「政府の法的責任を認める」だけのこと。それが「なにがなんでも自己否定の土下座外交」なんですか? それは政府と自己を混同させようとしつづけた保守派の一部の責任じゃないんですか?

>実際個人的にも、この問題においては過度の自己肯定を実現せんとする右派と、過度の自己否定要求を突きつける一部左派リベラルとの間で問題の政治対立が先鋭化し、社会感覚から乖離してしまっている感は否めないと感じます。

ほら、全てのリベラルが「過度の自己否定要求を突きつける」わけではないと認めるのでしょう?
であれば、私がエントリで指摘したように「誤認してしまうような文章をよせた井上氏に問題がある」わけであって、私が「誤読」したというhagakuressさんのブコメも誤りになりますよね。

>あえて表さなくとも予め期待されていない事は自明ですから、改めて嫌われる事も無いのかもしれませんね。

アジア女性基金を矮小化しようとしつづける保守派を政権につけるのであれば、国民としては期待しないどころか支持していることになるんじゃないか?と問うているんですが。

>井上さんが、必要とされるのは、過度な自己肯定でも過度の自己否定でもない適切な態度である。

で、その「過度」の基準を決めるのは井上氏なんですかね?
保守派の反対は一部と矮小化し、リベラルは全体責任を問うというアンバランス極まりない現在の井上氏にその能力は期待できませんが。

hokke-ookamihokke-ookami 2016/01/26 07:01 rawan60さんへ
>その本質が露呈することにより主導したその「日本の」リベラルもろとも反発され、批判対象になった

私は女性基金関係者の個々が、その本心においてできるかぎりの補償をしようとしたということまでは事実なんだろうと思っています。その「できるかぎり」の範囲を日本社会として押し広げることができれば、被害者に納得してもらえたかもしれないし、それならば日本社会も納得して自虐的とみなすことはなかったでしょう。そうはならなかったわけですが。

>「過度の自己否定を要求する韓国や日本の支援団体や人権団体の一部非妥協的なリベラル」なんて固定した相手への視野狭窄なものいいしかしないからドイツを引き合いに出されたりもするわけ。
>しかも、問題提起の最初は、その「存在」さえ「知りようが無い」と政府答弁で公式に否定したわけだしねぇ……

少なくとも国家の態度として、戦争犯罪を否認しないという「道義」を守りつづけているのはドイツが優っていますね。


Gさんへ
>人によって読み方が違うという当然の話に過ぎない。

ええ、いかようにも読める主張だから「現実の指針とすることは難しい」と結論したのです。
で、フォローするために一貫性あるように読んだため、貴方の主張はDay-Bee-Toe氏と対立することになった。
井上氏は「リベラル」を否定するために原理と妥協をその場その場で当てはめているだけだから、こんなことになる。


Gl17さんへ
>捨てハン書き逃げさんから虎の威とか言われるとは(笑)

ははは(苦笑)。

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