法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ざくざく!地中でくだもの狩り/バリヤーポイント

番組フォーマットが変更。サブタイトルのアイキャッチで、登場する秘密道具をドラえもんが使うコミカルな一幕が新規作画で描かれる。どこでもドアをサブタイトルで使っていた旧作のフォーマットを思い出すが、あちらは違う世界への入り口の表現といったところで、こちらは秘密道具の簡単な紹介といったところか。
本編はどちらも比較的に後期の原作からアニメ化。作画は良好だったが、アレンジに良いところと微妙なところがあり、それぞれ別の部分で違和感あった。


「ざくざく!地中でくだもの狩り」は、のび太が深夜に聞こえる奇妙な音を追うと、庭の地下でドラえもんがドラ焼きを掘りだしていた。何でも鉱脈にできる秘密道具だという……
あらゆる物質が元素で構成されているという物理的な教養を、そのまま題材にしたエピソード。秘密道具の説明でさまざまな元素を口にするドラえもんの衒学ぶりと、秘密道具のシステムを詳細に描くハードSFらしさが魅力だった。そのディテールは今回のアニメ化でも残されていて、トロッコを使うところなどは原作よりこっている。
そして物語は何を目的として合成するのかがポイントで、ラジコンで消費する電池を作ってやったが約束を破られ、意図せずラジコンが合成されたことがオチとなった。しかし今回のアニメ化では、スネ夫ジャイアンの被害者として登場するだけ。ただ欲しいものを合成していくだけで、ラジコンは仲間になるきっかけでしかなく、構成として単調。アニメオリジナルで焼き芋をこっそり合成するしずちゃんを登場させ、そのままオチにするというだけの、何の工夫も見られない物語だった。
アニメオリジナルで描写を増やすなら、たとえば落盤事故が起きて助けてくれたジャイアンも仲間になるオチにするとか、鉱脈をつくっていたのが他人の土地で権利をもめるとか、いろいろと鉱山らしい展開にもできたろうに。


「バリヤーポイント」は、のび太をふりかかる災難から守ってやる秘密道具が出てくる。しかし必要なものをバリヤー内に入れるためには「(頭文字)のつくもの入れ」と宣言する必要があって……
世界から文字が消えていく筒井康隆残像に口紅を』に先行して、バリヤーに入る単語が増えていく1982年初出の作品。とはいえ短編にすぎないので、プロットは相当に単純。オチは、ジャイアンスネ夫の漫画をつかった罠に対して、のび太が何も考えずに引っかかるだけだった。
今回のアニメ化は、しずちゃんを助けるアニメオリジナル描写から、意図せず水没する展開を先に入れて、すぐには罠に引っかからない経験をつませた。そして本名を忘れて罠に引っかかるという二段構えの、ずっと説得力あるオチにした。このオチにするため、序盤のおやつをホットケーキからケーキに改変する小技もきいている。
川の水がよけていったり、塀が崩れていくバリヤーのビジュアル演出もまずまず。ただひとつ疑問だったのが、「(頭文字)のつくもの入れ」と宣言した時、バリヤーが効果を失う原作と違って、バリヤー内に瞬間移動したこと。この描写だと、周囲にある同じ頭文字のものが全て瞬間移動してこないことに違和感が生まれてしまう。アニメオリジナルの水没描写とも整合しない。