法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『魔法つかいプリキュア!』第38話 甘い?甘くない?魔法のかぼちゃ祭り!

今日は魔法界のお祭りで、カボチャドリをみんなで追いかける。その風景を、ナシマホウ界でアイドルをしているマユと、魔法学校の校長が実況する。
しかし森に逃げこんだカボチャドリを追いかけていたみらいたちは、意外な相手を捕まえてしまう……


シリーズ恒例となったタレント回。TVアニメ『AKB0048』で2クールにわたってメインキャラクターのひとりを担当した渡辺麻友だけあって、長台詞でも違和感がほとんどない。
タレント回なので演出や作画も充実。最近は古さを感じることが多い稲上晃作画監督回だが、今回は麗しく華々しい。多人数がいりみだれる前半の追いかけっこも、広がりある森での後半のアクションも、よく動いていて見ているだけで楽しい。


物語も予想外に興味深い。カボチャドリと間違えて敵幹部をつかまえる展開から、現代的なテーマへと移行していく。何らかの望みをかなえてくれる鳥をつかまえる伝統は楽しげだが、鳥を利己的に追いまわす身勝手さは自覚しているか、と。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2473/2568022/
もちろん、カボチャドリが嫌がる場面の描写から、追いかけられることではなく虫歯が痛いだけという真相は予想がつく。それでも、敵幹部がプリキュアが自分と同じだと反論して、それをプリキュア側が認めざるをえない描写は、きっと幼い視聴者の印象にも残ったろうし、現実におけるひとつの指針になるだろう。
プリキュアが自身をふりかえっていく心の動きも、それぞれのキャラクターにそっていて違和感がない。リコは願いがないのに対抗意識だけでイベントに参加し*1、人間の身勝手さを強調する。ことはは幼い精神のまま無邪気に追いかけ、プリキュアに変身して精神年齢が上がった時に深く反省せざるをえない。そうした反省がただ辛気臭いだけでなく、空腹でおなかを鳴らすギャグをくりかえしたり、モフルンとチクルンがプリキュアとわかれて行動したりして、アニメとして見やすくなっているのも良かった。
最後には、カボチャドリが出すのが歯ブラシで、歯磨きをしようという教訓でハロウィンモチーフに戻って終わる。しかし、さまざまな人間の身勝手な望みはかなわないというオチでもあり、テーマとの関連性は残っている。

*1:個人としての動機がない空虚さは、選挙エピソードなどでも描かれてきた。『魔法つかいプリキュア!』第35話 生徒会長総選挙!リコに清き一票を! - 法華狼の日記

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第29話 出世の引き金

混戦を制して、鉄華団が海賊団の頭目を捕縛した。立場を確保した鉄華団は、海賊団を手引きした活動家の事務所へと向かう……


前回につづいて鴨志田一脚本。戦闘シーンは混戦のための混戦みたいなもので、めまぐるしい映像は良かったが、戦術的な見どころは少ない。
一方、活動家に落とし前をつけさせた鉄華団は、それ自体は暴走と紙一重だが、クーデリアは知らないという展開から納得できた。今回は被害者でありつつ、活動家の殺害に心を痛め、うまく対応できなかった自分を責める。これならば活動家の最初の描写*1が中途半端だったことにも理解はできる。クーデリアと鉄華団が協力しているようで断絶が生まれている描写としても意味がある。
ただ、単にクーデリアの性格が甘いだけという雰囲気にならないよう、活動家個人は好人物として描写してほしかった気分もある。今回の結末で鉄華団が手を結んだ相手にしても、活動家を超える規模で策謀していたはずで、対照性を自覚的に演出すれば、もっと物語の連続性が増して印象深くなったろう。