法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』クリスマスに雪を/チュー難の相に気をつけろ!

今回は前後とも原作あり。大晦日SPの予告などのためか、EDが圧縮されて主題歌が早回しになっていた。


「クリスマスに雪を」は、のび太が秘密道具を直して、しずちゃんへホワイトクリスマスをプレゼントしようとする。しかし誰ひとりとして感謝してくれず、のび太は怒って秘密道具を蹴りつけるが……
レジャーのために天候を操作するパターンの物語。しかし今回に登場する秘密道具は既存のものだけで、故障した秘密道具を蹴って直そうとする描写も過去短編を引いている。ドラえもんも途中から協力をやめて舞台から去り、のび太はひとりで秘密道具の故障を直そうと奮闘したり、秘密道具が暴走した責任をとろうともがく。そうして主人公個人の心情を描いたジュブナイルとして完成した。
今回のアニメ化においては、春先に雪を降らせようとする原作から、クリスマスの東京に雪を降らせようとするアレンジが素晴らしい。のび太が雪を降らせたい動機を強化するし、しずちゃんも自然にドラマへからんでくる。同じ真相でも、肩透かしした原作のニュアンスに加えて、クリスマスの奇跡を感じさせるニュアンスも生まれた。
映像面も素晴らしい。映画『のび太の宇宙英雄記*1の大杉宜弘監督がコンテ演出および作画監督*2を担当。オリジナルストーリーを初監督した映画は映像以外は感心できなかったが、今回はプロットのしっかりした原作短編のおかげもあり、表現力の高さがそのまま全体の良さを支えている。芝居作画も表情豊かに動いているし、影作画から背景美術までていねいに表現した日照の変化も印象的。


「チュー難の相に気をつけろ!」は、しずちゃん出木杉の間にわりこもうと、のび太も公園でのスケッチに参加すしようとする。しかし品物の運勢を占う秘密道具を使ったところ、意味不明な相が告げられて……
後期原作からのアニメ化。意味不明な相が予想とは違う的中をするギャグも、全体のプロットも、ほとんど原作から変わらない。アニメオリジナル要素といえばジャイアンがからんでくる場面くらいか。
公園での犬の描写などでディテールが詳細になったり、それでいてオチにつながる存在はフレームの外に切りとったり、アニメならではの描写がないでもないが、原作を読んでいてなお予想を超えて楽しませるほどのアレンジはなかった。作画も川重希作画監督とは思えないほど安定していたし、良くも悪くも正しい映像化ではある。