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法華狼の日記

2017-01-26 上げたのは3日後

[][]『パニック・ルーム

4階建ての高級住宅を見学する母娘。そこには災害や犯罪から避難するためのパニックルームが用意され、監視カメラもはりめぐらされていた。

しかし母娘がひっこした雨の夜、深々と眠っているさなかに、3人の男が侵入してきた……


2002年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督作品。パニックルームに逃げこんだ母娘と、侵入者たちの攻防を描く。

Panic Room | Sony Pictures

良くも悪くも、この種類のサスペンス映画への期待から、少しずつ展開がズレていく映画だった。

まず、監視カメラをはりめぐらせている設定から、てっきり母と娘の一方だけがパニックルームに逃げこんで、逃げ遅れた家族を侵入者に気づかれないよう指示していく展開かと思いきや、2人はいっしょに行動していく。

住宅の広さを活用する場面はエレベーターくらいで、部屋の位置関係がサスペンスにかかわることはなく、パニックルームの内と外が基本的な境界線となる。初監督作品の『エイリアン3』もそうだが、シンプルな追いかけっこで楽しませるには、フィンチャー監督は位置関係の描写がうまくない。VFXをつかった1カットの長回しで住宅内の広さと、侵入者と母娘の位置の連続性を印象づけているが、奇をてらった演出以上の意味はない。

かわりにフィンチャー監督らしく外で雨がふりつづける辛気臭い物語かと期待させて、パニックルーム内の安心感はけっこう高い。侵入者も手荒なことはさけたがっているので、生死にかかわるような緊張感はあまりない。そこで母がパニックルームを出ていかざるをえない理由として娘の低血糖症が出てくるが、普通なら序盤で伏線がはられる設定だろうに、中盤でいきなり明かされる*1。逆に、序盤で母が閉所恐怖症的な反応をしていた描写があるのに、物語に反映されない。

何より意図的だろうズレとして、2人の侵入者が協力を求めた覆面男がいる。正体不明の底知れない狂気をかかえているかに見せて、あばかれた実態は驚くほど情けない。公開時期は逆だが、まるでカイロ・レン*2のようだ。


ただ、既存のサスペンス映画と似たような満足感がないからといって、まったく娯楽として面白味がなかったわけでもない。

物理的に侵入が不可能と設定したパニックルームを越えようとする内外の動きはサスペンス映画らしさがあるし、パニックルームという境界線をめぐって主人公と侵入者の立場が逆転する後半も意外性がある。

もっと物語を停滞させて閉鎖環境の息苦しさか、逆に物語を動かして攻防を見せてほしかった気分は残ったが、そこそこ後味が悪い顛末もふくめて、それなりにスリラー映画としての見どころはあった。

*1:一応、母が夜明けを待たずに外との連絡をとりたがる描写が伏線といえなくもないが。

*2『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 - 法華狼の日記