法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第23話 翔べ!虹色ペガサス、キュアパルフェ!

ピカリオの姿に戻ったジュリオだが、プリキュアや姉との対立はつづける。そんな弟を見て、キラ星シエルはパティスリーを飛び出す。
弟に拒絶されつづけたキラ星は、スイーツを拒否するようになった心をノワールにつけこまれ、闇の中へと消えていく……


田中仁シリーズ構成が脚本で、暮田公平シリーズディレクターが演出。さらに川村敦子が作画監督と、スタッフは力が入っている。
しかし絵こそ華やかだが展開が段取りを追うことに懸命で、キャラクターに感情をゆさぶられるより速く場面が転換していって、ドラマを楽しむことが難しかった。キラ星の闇にジュリオと宇佐美も巻きこまれる場面など、力を入れただろう不思議な情景があっさり終わってしまった。
キュアパルフェに変身してからの現実世界のアクションは作画の良さもあって軽快だったが、今回のストーリーからすると精神世界を重視してほしかった。たとえば山内重保なら重苦しく描けたろう。
また、新登場のキュアパルフェ以外のプリキュアにも出番を用意する判断もわかるが、尺が少ないので充分なアクションを描けず、キュアパルフェの強さを表現する基準にしかならないことに変わりがない。今回は精神世界から脱出するまでを描いて、キュアパルフェの活躍は次回にまわしても良かった。


最後に、浄化されたようでも根本の問題が解決していないので、ジュリオとのわだかまりは残すという、スタッフの問題意識そのものは好感がもてる。ノワールという超常の存在に拡大された痛みはプリキュアでとりのぞけても、もともとの姉弟の問題はふたりで決着をつけるというドラマは正しい。
その問題を解消する時、姉弟が支えあう思い出として描かれたワッフルを持ってくるまでは定石だが、ジュリオがつくったワッフルにはキラキラルが存在しないという描写もおもしろい。プリキュアとしての超常的な設定においては美味しくないはずのワッフルなのに、キラ星が食べると美味しくてキラキラルが生まれる。美味しさというものが、送り手だけではなく受け手との相互関係で生みだされることを、アニメらしい超常的な設定で説得的に示した。
ただ尺の短さは姉弟のドラマにも悪影響をおよぼしている。特に、ジュリオが姉を守る自己犠牲が段取り描写でしかなく、感動どころか嫌悪すらおぼえない。もっと時間をかけてサスペンス性を高めて、ジュリオが命をかけて借りを返すしかなかったと納得させてほしかった。