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法華狼の日記

2018-05-17 上げたのは1日後

[][]『かぐや姫の物語』で御門のアゴが長いのは、醜悪さの象徴というよりも、美麗さの象徴と考えるべき

高畑勲監督の最終作において、かぐや姫にいいよる男たちのなかに、アゴの長さをよく指摘されるキャラクターがいる。

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原作『竹取物語』でも最後に登場しながら、やはり拒絶されて終わる天皇だ。


このキャラクターデザインの理由について、いくつかの考察がある。

他のキャラクターと同じく演者にあわせてデザインされ、かつ日本画らしい戯画が加えられたため、その特徴が反映されたというid:ao8l22氏の指摘がある。

no title

演じる中村七之助の顔の輪郭は、シャープおちょぼ口気味。歌舞伎役者は江戸時代からアゴ長が多い。400年近くアゴ長の血を脈々と継いできた中村七之助。彼の声によって、御門のアゴはどんどん伸びていくことになった。

似顔絵を飛び越えて風刺絵にすら見えるが、「日本画をそのまま動かしたよう」と称される本作では避けられないことだったのだ。

他には、かぐや姫が拒絶する理由としてデザインされた、それが原作の天皇がもっていた高貴さを破壊しているというid:nuryouguda氏の批判がある。

かぐや姫の物語 感想その二 高畑勲監督は原作の良さを自己中心的に曲げたダメ映画 - 玖足手帖-アニメブログ-

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っていうかさ、「天皇が女を抱く」事の生理的な拒否感を描くために「それ以外は完璧でも、あごが長いからダメ」って、天皇制差別に反発しながら「性格は見た目に出るから、見た目が悪い奴はダメ」という容姿差別になってるよね。

大衆はこういう雑なコラを作って帝の高貴さをバカにしているよね。本当の高貴さや国を統べることの意味を知らないからこういうことをするんだ。


もちろん、かぐや姫が御門を拒絶する理由としてアゴの長さが劇中で語られることはない。原作も、天皇がかぐや姫へ現代的な恋愛をする描写はない。

そもそも、かぐや姫が映画で御門を拒絶するのは、突如として背後から抱きすくめられたためだ。見てもいない顔の美醜と関係あるはずがない*1

nuryouguda氏が高畑勲監督の風刺を受けとめることができず、権力者への高貴な幻想にもとづいて批判するのは、おそらく富野信者の貴族主義者であるためだろう。

コスモ貴族主義*2にしたところで、歴史を捏造して作られた幻想でしかないのに……


むしろ、バランスが崩れながらも「美男」というデザイン意図が明言されたことが重要だろう。

平安朝の物語を再構成する時、美麗で権力をもつ男性が女性を傷つけていく解釈はオーソドックスといっていい。

アニオタが外国に「日本の美」を軽く紹介するための10本 - 法華狼の日記

御門は「私がこうすることで喜ばぬ女はいなかった」といい、光源氏は「私は何をしても許される身なのです」という。階級に定められたまま人道を踏みはずし、他者を人形としか考えられなくなった男たち。そうした原典の時代性をあえて抽出して、現代までつづく悲劇として完成した。

上記で私がならべた杉井ギサブロー監督『紫式部 源氏物語』も、光源氏は細面にデザインされ、現実よりもアゴがとがっている*3

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ao8l22氏が指摘した日本画がそうであるように、アゴを長くとがらせるデザインは、醜悪さではなく美麗さの記号といっていい。

Legend of Sexy(TVアニメ「学園ハンサム」より)

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つまり御門のアゴの長さも、醜悪さの誇張ではなく、美麗さの誇張ととらえるべきだろう。


そう、『かぐや姫の物語』が悲劇なのは、醜悪な外見の男たちにいいよられるがためではない。客観的な幸福であっても、一方的に与えられたのでは主観的な幸福をもたらさないためだ。

都での裕福な生活も、翁の優しさも、かぐや姫を幸せにすることはない。それらと対比されるアニメオリジナルキャラクターの捨丸すら、盗人におちぶれたり、所帯をもったりして、かぐや姫を不幸から救うことはない。

そうした出来事の最後に登場するのが、全てが過剰に完璧な御門だからこそ、他者を意のままにすること自体が問題と浮かびあがるのだ。

*1:ちなみに原作では、袖をとって顔をのぞきこむ描写がある。nuryouguda氏は天皇の奥ゆかしい行動と解釈しているが、当時の女性は日常において御簾や扇で姿を隠しており、素顔を男性に見せる意味は極めて重かった。

*2:『機動戦士ガンダムF91』において、近未来に宇宙開発で財をなした敵キャラクターがとりつかれた思想。世界観/あらすじ|機動戦士ガンダムF91で「庶民のための真の貴族による支配主義」と説明されているが、キャラクター自身が貴族となったのは、資金力を背景とした家柄の購入や婚姻による。

*3:アゴが長いかわりに、極端に鼻筋をのばしたデザインで耽美な印象をつくりだしている。nuryouguda氏に反論されているC4Dbeginner氏のツイートに「別に鼻でも歯でもなんでもいいの」とあるように。cdbさんのツイート: "真面目な話をすると、あの帝のデザインっていうのは別に本当にアゴの長い人をバカにしてるわけじゃなくて、「そこ以外はハンサム」っていうとこが重要なんれすよ。別に鼻でも歯でもなんでもいいの。「見た目は綺麗に整っているけど何かが狂っている

はりはり亭はりはり亭 2018/05/19 22:16 ざわ......ざわ......(すいませんw)

hokke-ookamihokke-ookami 2018/05/23 21:19 まあ少し真面目な話につなげると、福本信行だと同じようなアゴでも、絵が下手という評価になるわけですね。
一方で御門は、絵が下手と評されないことはもちろん、かといって不細工だとか醜いだとか評されるのもあまり見かけません。基本は美形で、ただ一ヶ所がいびつだというデザイン意図がきちんと表現されているわけです。

菜々氏菜々氏 2018/05/24 11:04 「となりの801ちゃん」や「さよなら絶望先生」でも、同人マンガ誌に描かれる美形男性キャラのアゴが、作者の趣味の変化で、どんどん長くとんがっていくネタがありましたね。長くとがったあごを美しいと感じる感性は、現代でも残っているのでしょうね。

hokke-ookamihokke-ookami 2018/05/25 22:13 女性向けでは尾崎南とかねえ……というのは自分でも古いなあと思って検索してみたら、けっこう現代的な絵柄にアップデートしていてビビりました。
https://natalie.mu/comic/news/157807
まあ尖ってはいるんですけど、瞳が大きくなって全体のバランスに違和感があまりない。

ちなみに映画も先日DVDで通して見返したんですけど、記憶よりも感情がゆさぶられましたし、完成度の高い映画だと感じました。制作期間が長かっただけに、もっと高低の波があると記憶していました。
メインキャラクターでひとりだけ姫に何も命じず押しつけず、畑にこなくなっても自由にさせていた媼が、ただ一度だけ台詞で姫にやめるよう願ったのが最後の別離というのが、心にきました。それに対して姫が語る台詞の途中で、スッと記憶が失われる描写のさりげなさも、派手な出崎監督や情熱の宮崎監督や饒舌な富野監督にはできない演出ですね。

tenreerentenreeren 2018/07/08 14:52 立派な高説垂れながら学園ハンサムを持ち出すとか一体何の冗談だ?

ジャパンの蔑称啼き喚きというハラスメントの加害性の
エクスキューズをマイナス方向に振り切れさせてのさばらせ
誰かを心身の破滅に追いやりながら
究極の剥離や無敵論法で全面否認を罷り通らせたり

被害の訴えと加害の押し付けに
同等の問題があるかのように主張するデタラメぶり
精神的拷問に等しいデマを流して自白させたことを
問題視もせずに被害の訴えの価値の毀損に利用したり

これらの所業の御仁様はさっすが歴史を捏造して作られた幻想に聡いですな!

hokke-ookamihokke-ookami 2018/07/08 19:01 >立派な高説垂れながら学園ハンサムを持ち出すとか一体何の冗談だ?

もちろんギャグアニメの笑いを意識しつつ、ちゃんと「アゴを長くとがらせるデザインは、醜悪さではなく美麗さの記号といっていい」根拠となる作品ですよ。
蔑称を引用することすら拒否する貴方が、自身ではひとつの作品に対して根拠としての価値を否定するのですか? 貴方が自身の被害に過敏になっていることは許容しますが、そこで貴方が他者への敬意をもたないことは問題ですね。

そして以降の文章は、直接の関係がないエントリへの反論を自身でコピペしたものであり、事実上のマルチポストなスパムコメントです。
そもそもコメント全体としても、下記コメント欄での指摘が適用できるような無内容な話でしかありません。
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20180410/1523363782
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