法華狼の日記

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「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」の水飛沫作画の雑感

ピノキオ』の水飛沫をひさびさに見て、やはり凄いと思うと同時に、飛沫のひとつひとつを手描きで動かす手法は良くも悪くも古いな、とも思ってしまう。
みんなの「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」 - Togetter

思い出したのが、1968年の、高畑勲初監督作品『太陽の王子 ホルスの大冒険』で、大塚康生が作画した大カマス。公式予告映像の35秒くらいから確認できる。

ディズニーに比べると東映動画でもディテールは粗いが、水飛沫をひとつひとつ制御*1しようとする作画スタイルは、フォルムを重視して簡略化してきた日本アニメが失ったものがある。
ちなみにフォルム重視の最高峰のひとつとして、同じ東映動画がすぐ後の1971年につくった『どうぶつ宝島』の波作画がある。小田部羊一の作画によるもので、少年がこぎだす海の透明感は今見ても古びていない。

どうぶつ宝島

どうぶつ宝島


もちろん、現在の日本でも水飛沫をひとつひとつ動かす作画スタイルが完全に失われたわけではない。
2005年の『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』で、吉成鋼*2が背景や撮影までひとりで完成させたカットは、細かく動く水飛沫が描かれていた。前後の素晴らしいカットからも浮いて見えたのは事実だが。
近年においてTVアニメながら毎回きっちり水飛沫を細かく描いた『Free!』も、作画スタイルとしては古いと思ったのが素直な感想だった*3
水飛沫ひとつひとつを水滴の残像の線として作画して、簡略化をはたす手法もある。しかし2005年の『NARUTO-ナルト-』第133話を見た時は最先端のスタイルと感じたのだが、目立って続く作品がなかった*4

*1:インクを飛ばして細かく点を散らし、飛沫に見せるという「タタキ」と呼ばれる技法もあるが、これは偶発性が大きい。ただ、これも一時期は減っていて、デジタル撮影の進歩で復活した感がある。アニメミライ[ animemirai ]

*2:Togetterで複数があげているゲーム『サクラ大戦3』OPを担当したアニメーター。

*3:『Free!』のJ-cast記事にイラッ☆ - 法華狼の日記の注記で軽く書いた。

*4:それ以前に大平晋也作画でも同じ手法を見た記憶があるが、そちらはオンリーワンすぎて広まる未来図を描けなかった。