法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』まさかの結末がいっぱい!大どんでん返しSP

2時間SP。大屋との生活をしるした短編漫画で手塚治虫文化賞を受けた矢部太郎などがゲスト。

大家さんと僕

大家さんと僕


「米国の妊娠したおじさんカップルに密着」は、男性同性愛者のトムとスコットが結婚し、一方が妊娠したエピソード。実はふたりとも生まれた時は女性で、いわゆるFtMゲイだったのだ。トムは性別適合手術を受けて男性ホルモンの注射もつづけているが、スコットは手術をしておらずホルモン注射もいったん止めて、第三者精子を受けて妊娠したという。
これは、いわゆるLGBとTのカテゴライズが異なるという事例の代表といえる。念のため、前者を「趣味」として後者を「障碍」として、性別役割を強化する方向でのみセクシャルマイノリティを認めることとは違う。LGBはどの性別の他者を愛するかというカテゴライズで、Tは自身の認識する性別は何かというカテゴライズなのだ。だからこそ、LGBのいずれかかつTという事例も存在するわけだ*1
また、トムとスコットは、事故死した知人女性の息子兄弟も養子としてむかえている。兄弟が別々に施設にあずけられないための措置だという。しかし比較的に性差別が少なそうなカリフォルニア州でもバッシングされ、家屋が謎の火事により貧困状態におちいり、故郷のニューメキシコ州に移ることに。学校が息子を通学させまいとしてきたり、やはり偏見にさらされる環境だが、正面から抗って幸福な家族を作っているようだ。


ネット恋愛の落とし穴」は、いつもの『キャットフィッシュ』で、黒人女性がフェイスブックでつながった黒人男性の正体を探ってほしいという依頼。マッスルでセクシーな写真をフェイスブックに掲載しつつ、テレビ電話などは拒否して、携帯電話代3万円を無心する。
実際に会いに行くと意外なことに高級住宅街で、写真と顔こそ違えど黒人男性は黒人女性を愛しているという。かなりの富豪らしく、お金を無心したのはあえて相手の優しさを試すためだった。
……そこで終わればハッピーエンドになりえたかもしれないが、男性が騙していたということ、妻や恋人さらに息子までいるという事実に女性は不信感をつのらせる。そして結婚してからもたくさんの女性を同時に愛したいと主張する男性にあきれはてて、女性は別れるのだった……つまりは大金持ちの傲慢さというか、女性を便利な母親として利用しようとしていただけというか。


「天才チェス選手 ボビー・フィッシャー」は、冷戦時代に米国で英雄となったチェスプレイヤーの数奇な人生を追うドキュメンタリー。世界トップのソ連に勝利するほどの棋力をもちながら、気まぐれで自信家で他国を見くだしたかと思えば、冷戦後には米国の意向に逆らってゲームして追われる身となったり。
映画化されるほど波乱万丈な人生は興味深く、見くだしていたアイスランドに身をよせた晩年も皮肉でいい。日本との縁もある人物だ。しかしその性格を今見ると、素人判断はさしひかえるべきと思いつつ、アスペルガー症候群という言葉が脳裏をよぎる……そうでなくても、きちんと現代の知見をもって周囲に理解されれば、さらに才能をのばせたかもしれない惜しさを感じた。


「奇妙な殺人事件」は、カリフォルニア州に住む少年トーマス・ゲインズの、奇妙な行方不明の顛末を紹介。トーマスは兄や姉を真似するように不良となり、左手に十字架のタトゥーを入れていた。それがある日から家に帰らなくなったという。
それが2年後、イタリアのナポリで、誘拐されたという少年が登場。左手のタトゥーもあり、トーマスとして家族にむかえられる。しかし薬物で拷問されたとはいえ、瞳の色の違いや、ヨーロッパ訛りから疑いがかけられていく。
やがてカリフォルニア州の建築現場からトーマスの遺骨が発見されて、自称トーマスは詐欺師ジャック・ゴベールと判明した。自分そっくりの行方不明者を外国で探して、特徴的なタトゥーを入れて、なりすましたのだという。まるでイーストウッド監督の映画『チェンジリング*2を思わせる展開だが、さらに異様な事実があばかれる。
トーマスが偽者と気づいていたのではと追及された兄が薬物を大量摂取して自殺。実は薬物を執拗に求められたため、兄がトーマスを殺害。それを母も感づいていたらしく、そのためトーマスが偽者と気づきつつ、家族としてむかえていたという。偽者の息子でも癒やしになったのでは、という指摘が印象的だった。

*1:他にも、異なるセクシャルマイノリティが協力する目標のためや、自身がLGBとTのどちらに位置するのか成長段階では特に認識しづらかったりするためなど、あえてLGBTとして連帯する意味は複数あることも注意。

*2:『チェンジリング』 - 法華狼の日記