法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「あにめたまご2018」全4作品のうち3作品の感想

2017年から上映会込みの全話無料配信が24時間だけになり*1、見逃しそうだと懸念をもっていたら本当に見逃してしまった2018年。

しかし見放題サイトに3作品が入ってきたので、それだけは後追いで視聴することができた。
あにめたまご2018
しかし3作品で文句なしなのは『えんぎもん』だけで、残りふたつは作品単独でも企画としても厳しい作り。


『えんぎもん』はスタジオななほし制作。この世界の縁起物は、自我をもって動ける。その縁起物同士の対立による騒動に、主人公兄妹が巻きこまれていく……
制作会社は3DCG重視で企画・制作を請け負っている。個人フィルムのようなOVA『KAKURENBO』の和風CGアニメが印象的な会社だが、和風というモチーフは共通しつつ雰囲気はホラーから一転して教育アニメのよう。
ちょうどNHK総合で放映している『つくもがみ貸します』や、父の贈り物で始まる『ミイラの飼い方』を連想させるジャンル作品で、オーソドックスにまとまっている。30分枠でちゃんと物語が完結しつつ、今後に新しいエピソードをいくらでも描けそうな拡張性がある。
縁起物としてややマイナーな犬張子を主人公側にもってきて、メジャーな招き猫を敵に配置したことも地味にうまい。犬張子の口調や招き猫の性格で毒気があって、牧歌的なビジュアルに反した刺激があって単調にならないことも良い。
主人公兄妹や「えんぎもん」のようなメインキャラクターは3DCGで処理。かなり頭身の低いデフォルメされたキャラクターだが、絵本のようなビジュアルに違和感がなく、ロングショットを多用して全身を映しながら破綻していない。主人公妹が階段のあたりにいる序盤は空間の構築と芝居のていねいさに感心した。
ただ、終盤に招き猫が街全体の猫を呼びよせる場面は、せっかく3DCGなのだからせめて猫ごとのテクスチャーは変えてほしかった。モデリングだけでなくカラーリングまで同じなので、画面の変化がとぼしい。また、モブキャラクターは手描き作画されているが、全体的にクオリティがイマイチ。


『TIME DRIVER 僕らが描いた未来』はIMAGICAイメージワークス制作。玩具メーカーにつとめている青年の前に、かつて友人の少女とともに夢見ていた巨大ロボットが出現する……
制作会社のIMAGICAイメージワークスは映像ソフト販売会社という印象が強いし、2018年1月にグループ親会社IMAGICAに吸収されて消滅。共同で制作しているROBOTは同IMAGICAグループの中核だが、実写が基本という印象が強い。事業がアニメーター育成支援というよりアニメ企画支援になりつつあるという問題が当てはまりそうな作品。
しかも育成になっていない問題をよく批判していたアニメーターが*2、キャラクターデザインおよび作画監督。なんとなく制作体制に対してモヤモヤを感じる。
物語は、大人になって創作を職業にしたことでルーチンワーク化した主人公が、子供のころの創作にかける情熱を思い出すという、いかにも支援事業らしい内容。しかし男性主人公が相方の女性や自身の子供時代にハッパをかけられるばかりで、身を削るような悔恨を描いたりはしない。ひたすら成人男性ばかり慰撫される構図に、同族嫌悪的なモヤモヤがある。もうちょっと公共の事業らしい広い観客に向けた視点がほしい。
映像は手描き作画中心で、若手アニメーター向けだろう多様なシチュエーションを用意しているが、あくまで練習台といったクオリティ。モチーフとあわせて、自主制作アニメのような印象が残った。


『Midnight Crazy Trail』はPicona Creative Studio制作。ファンタジックな欧風世界で、さまざまな物品を隠滅廃棄する男性コンビと、魔法を捨てたい少女が出会う……
コナミを退社した吉田健という人物のプロデュース企画。著作権を自社で保持するかたちでの商業化を見すえており、全12話を制作したいとのこと。
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華やかな真夜中の街に、物理と魔法が交錯するキービジュアルは魅力的だが、残念ながら本編の映像が追いついていない。練習台のパイロットフィルムならこれでいいし、初期の『RWBY』も質感は同程度だった記憶はあるが、現在このまま第1話にするには難しいだろう。ワタナベシンイチコンテが、多くのカットでキャラクターの足元を隠しているのが、クオリティの誤魔化しとしては効果的でも、育成事業としては良くないのでは?という疑問もある。
すでにサンジゲンポリゴン・ピクチュアズ小学館M&Dエンタテイメントなどの会社が、TVアニメでも手描きと調和した3DCGキャラクターを安定して送り出せると証明できている現在、MMDの延長のような3DCGキャラクターを出されても遅れている印象にしかならない。悪魔の正体をあらわしたホームステイ先の紳士や、カラスのような手描き作画は魅力的に動くのだが、あまり出番がない。
物語については、良くも悪くも水野宗徳脚本らしいと感じた。少し前まで『ドラえもん』の構成をつとめていたが、そこで手がけたオリジナルストーリーの印象とほとんど同じ。続編前提の作りだが、違う文化の住人が出会って利害が一致し、ひとつの計画を成功させるまでを描いていて、この30分枠でも物語が完結している印象はある。警備ロボが少女を無視するようなツッコミどころを、ちゃんと劇中で説明できているのもいい。しかし魔法の書を物理で破壊しようとする少女の導入は良かったが、ゴミ捨て屋のコンビや花嫁修業で人間界に来る少女といったあたりから設定の既視感がぬぐえない。