法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

民間人を大量虐殺する攻撃に正当性がないと主張できる人物が、同じツイートで大日本帝国の悪行に対して「悪の定義とは?」と主張する謎

conscript1942氏の古谷有希子氏に対する論評が、はてなブックマークを集めていた*1。しかし同じツイート内で善悪が恣意的に適用されていることの指摘が少ない。

悪い国(そもそも悪の定義とは?平和に対する罪?戦争犯罪?)であれば、その国に所属する民間人を問答無用で大量虐殺する事に正当性があると考えているジェンダー学者の世界観めっちゃ面白いな。「戦争に負けたらワイは死刑や」とぼやいてたルメイとかもあの世で頷いてそう。

念のため、原爆が投下された広島周辺は『この世界の片隅に』でも描かれてたように軍都であったが、大規模な都市攻撃の必然として民間人や捕虜を巻きこまざるをえないものだった。
たとえば米国による対イラク戦争のように*2、たとえ軍事体制に組みこまれていようとも民間人*3が攻撃に巻きこまれただけで大量虐殺とみなすべきという主張ならば同意できる。


しかし、引用されているツイートがスクリーンショットしている古谷氏の発言を見れば、「同等に低劣であるなら、正当性が無い日本の残虐行為の方が酷い」と、どちらも否定しつつの相対評価であって、原爆そのものを正当化する意図がないことは明らかだ。

絶対悪である日本を焼くための原爆投下には正当性があると訴える奴が出てきたと思ったら、また社会学系なのか。

慰安婦南京虐殺には何一つ正当性はありませんが、原爆投下には人類に対する暴力を振るった日本を一刻も早く止めるかつという正当性がありました。その点だけ取り上げても同列に語ることは不可能です。同等に低劣であるなら、正当性が無い日本の残虐行為の方が酷いということになります。

さらにスクリーンショットのツイートにつながる直前のやりとりを見れば、古谷氏のいう「正当化」が米国や韓国でそう認識されているという文脈ということがわかる。

韓国や米国では、日本で繰り返し強調されるような「広島長崎の原爆の悲惨さ」「被爆者の苦悩」は両国では全く理解されていません。原爆は正当化されているのです。我々にできるのはせめてもの理解を求めることであり「被爆者の気持ち考えろ」と批判することではないのです。

それでも絶対評価として戦争や虐殺を否定するために古谷氏を批判するならばわかるが、南京事件などに対して「そもそも悪の定義とは?」と主張する立場から批判しても虚しいだけだ。


ただひとつだけ、同日の古谷氏のツイートに激しい言葉があるのを見て、conscript1942氏が文脈を歪曲したくなるのも自然な流れではあるな、とは思った。

反日」なんて言葉使う奴は漏れ無く頭に蛆湧いたレイシスト

もともと私にとってのconscript1942氏は、日本軍慰安所制度の被害者を支援する団体に対して、「反日」と表現するような人物だった。

やはりこの慰安婦像騒動の勝ち組、韓国政府すら持て余してる跳ね上がりの反日市民団体だと思う。日本がどう反応しようとも、そして日韓関係がどう冷え込もうとも、彼等としては問題化して目立つほどおいしい。火が着いた時点で既に勝利が決まっている。まるでトランプのような必勝のポジション。

支援団体が政府よりも被害者によりそおうとすることは当然だろう。実際には支援団体が被害者より妥協しようとした局面すらある*4
conscript1942氏のような人物が日本軍に対してだけ「悪の定義とは?」と疑問を発することは、残念ながら本当は謎ではないのだ。

*1:はてなブックマーク - トイレスタンプ香りジェルさんのツイート: "https://t.co/YybTRszRT5 悪い国(そもそも悪の定義とは?平和に対する罪?戦争犯罪?)であれば、その国に所属する民間人を問答無用で大量虐殺する事に正当性があると考えているジェンダー学者の世界観めっちゃ面白いな。「戦争に負けたらワイは死刑や」とぼやいてたルメイとかもあの世で頷いてそう。"

*2:ただし「民間人を問答無用で大量虐殺」という部分のみで原爆投下を批判する場合、その戦争において戦端をひらいた側や、開戦の根拠となった根拠の妥当性を考慮すると、対イラク戦争は対日戦争より正当性がないことになるだろう。原爆が批判されるのは、民間人への大量虐殺にとどまらない文脈がいくつかある。

*3:そうした軍事国家がしばしば反民主的であり、むしろ軍事体制に組みこまれることが国民の権利の剥奪に直結していることも、民間人の責任について考慮すべきところだろう。

*4:日韓合意を元慰安婦が受けいれたという結論なら、現在のNHKでも韓国外務省の調査を事実として報じられるらしい - 法華狼の日記のナヌムの家の紹介を参照。