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法華狼の日記

2018-12-05 上げたのは1日後

[]『相棒 season17』第8話 微笑みの研究

認知科学を専門とする教授が心臓麻痺で死亡。助教が「死ね」と直前につぶやいていたことから、呪いだという噂になる……


オカルトを望みながら合理的に解明してしまう杉下右京のキャラクターをピックアップ。「殺人の定理」*1等の金井寛脚本らしく、先端科学と組みあわせる。

それなりに伏線をはっているとはいえ解決編で専門的な知識後出ししすぎていて、ミステリとしてはアンフェア。いくつもの真相があばかれる最初とはいえ、監視カメラの記録まで後出しするのも安易すぎる。「エンパス」をまるでテレパシーレベルの読心能力があるようにあつかっているのも、いささかオカルトじみている。

さすがにエンパスが犯罪にかかわるのは特異な背景があったと設定して、視聴者が偏見を強く持たないよう処理はしていたし、全体として研究倫理の大切さに注意をうながすストーリーではあったのだが。

2018-11-28

[]『相棒 season17』第7話 うさぎとかめ

杉下が道端で大きな亀を見つける。追いかけてダンボールハウスに入ると、そこには頭部から血を流して昏倒しているホームレスがいた……


杉下の初代相棒*1亀山薫を思い出すモチーフと話題になっていたが、実際に劇中で亀山時代を知っている一課の連中が言及する。甲斐亨と違って俳優の姿や名前が回想されることはないが、たまにこういうファンへのくすぐりっぽい描写が入る。

もっとも物語の本筋はまったく関係なく、ホームレスが水曜日だけ新聞を購入する謎から、ホームレスになった経緯、その背後にある政治問題までを1時間にまとめる。

曜日ごとの特集を目当てに購入していたという「日常の謎」的な真相から、歌壇に投稿するホームレス歌人というネタにつなげ、古典的なミステリトリックにつながっていく。歌会という文化から、ホームレスに身をやつす原因となった談合事件にもつなげる。


全体的にまとまっているし、古典的なところも嫌いではない。しかし、どうにも全体的に薄い。良くも悪くも古い2時間ドラマのプロットを1時間に圧縮して、飲みこみやすいようディテールを薄くした感じがした。

せめて解決編で杉下が情報を後出しせず、歌にこめられたトリックを視聴者が考えられるよう、すべての歌をあらかじめ画面にしっかり映して、解明の手がかりになる特徴にも先に言及するべきだったのでは。

*1:劇中設定では3代目相棒。シリーズ初期ではむしろ視点人物的なあつかいだった。

2018-11-21

[]『相棒 season17』第6話 ブラックパールの女

因縁のある弁護士が特命係に接触してくる。連続殺人の女性被疑者が、名誉棄損の和解条件として、刑事を呼ぶように求めたのだという。

そして特命係は女性被疑者の情報にあやつられるように、溺死した研究者をめぐる真相をたしかめることになる……


犯罪者が檻の中から刑事をあやつって、ひとつの事件の真相をあばく。その動機が道義心なのか好奇心なのか優越感なのか、視聴者に悩ませる。そんなパターンの物語。

山本むつみ脚本だが、特異なキャラクターが新登場して、今回も以前に感じた真野脚本っぽさ*1がある。そのキャラクターの特性が、事件の真相とは直結しないくらいにポイントとなるのも以前のエピソード*2を思い出させる。

溺死事件そのものは古典的なトリックで、良くも悪くも1時間ドラマレベル。良かったのは被疑者と研究者をむすびつけたブラックパール購入問題で、きちんと伏線にそって現代的で皮肉な真相を提示できたところだ。

一方、詐欺ははたらいたが殺人はしていないという女性被疑者の主張については宙ぶらりん。むしろ特命係はひとつの殺人の可能性を指摘するが、証拠は何もない。レギュラー化しそうな結末だったが、きちんと描いてくれるかどうか。

2018-11-15

[][]「お前がそう思うんならそうなんだろう」と「シャブ山シャブ子」の一人歩き

「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」とは、漫画『少女ファイト』1巻においてメガネの青年が語った言葉だ。

その1コマが相手の思いこみを責める画像として利用されているが、作者もツイートしているように、実際の作品のニュアンスとは異なっている。

細かいニュアンスは難しいが簡単に説明すると、自身を責める主人公に対して、自責することを重ねて責めないよう気をつかって指摘する台詞なのだ。


一方、「シャブ山シャブ子」とはドラマ『相棒』のseason17第4話に登場した薬物依存者。その演出の恐ろしさで話題となり、専門家が懸念する事態となった。

「シャブ山シャブ子」を信じてはいけない | プレジデントオンライン

しかしこれも、当時の感想エントリで補足したように、一般的な依存者とは位置づけられていない。薬漬けにした一般人をコントロールして殺人まで犯させる組織の恐ろしさを描いていた。

『相棒 season17』第4話 バクハン - 法華狼の日記

「シャブ山シャブ子」は一般的な依存症患者と違って、明らかにヤクザが作った特異なキャラクターだとドラマ内でも位置づけられているが、それはそれとして一人歩きしたキャラクターが偏見を生みだすという指摘は重要。

また、ドラマ内で「こんな患者は見たことありません。何か不自然です」みたいなコメントを知見のあるキャラクターがおこなえば、ドラマのリアリティも上がったと思う。

前例から考えても、こうしたキャラクターが一人歩きして誤ったイメージが形作られる懸念は理解できる。依存症の回復を支援する立場からの提言に、耳をかたむける価値はあるだろう。

2018-11-14 上げたのは1日後

[]『相棒 season17』第5話 計算違いな男

神社で不審な行動をとる男に、特命係は目星をつける。その天文学者の男が誰かを殺害しようとしていると考え、そのトリックを先回りしてつぶしていくが……


前回とは打って変わって、変則に変則を重ねた本格ミステリのようなエピソード。さまざまな殺人トリックを参考にして、恐喝者を殺そうとした天才天文学者が、マヌケな失敗をくりかえしていく。

バカバカしいトリックが次々に推理されていく展開に、人の命を軽く考えたコージィミステリの味わいがあり、かつ悪人には相応のしっぺ返しがあって後味が悪すぎない。

そうした表で進行する倒叙ミステリらしい展開の背後に、隠されていた構図が明らかとなるのも、このドラマらしいひねりで良かった。

ただ今回のテイストなら、いっそのこと人死にがなくても物語は成立したのでは。