Hatena::ブログ(Diary)

法華狼の日記

2018-05-12 上げたのは2日後

[]『世にも奇妙な物語'18春の特別編』

奇妙な味の短編ドラマを見せる、土曜プレミアム枠で恒例のオムニバスドラマ。今回は30分枠の短編4作と、ガチャピンムックが客演する冗談のようなホラーショートムービー前後編のセット。

世にも奇妙な物語 - フジテレビ

まずショートムービーだが、主人公が恐怖を感じるきっかけがダジャレだったりするのに、演出は本気で怖がらせようとしているギャップが逆に楽しかった。


フォロワーは、SNSでキラキラ女子を演じている女性が、ひとりの熱狂的なフォロワーによって破滅していく。

偽ブランド販売で女性が逮捕された2015年の事件を思わせる設定や、主人公が演じている設定のアカウント港区OL_ハル」を現実に開設していること等、いかにもインターネット受けを意識したようなサスペンスだった。

港区OL_ハル(@minatoku_haru)さん | Twitter

しかし、フォロワーのストーカー的な行動が早々に現実離れして、あまりにリアリティを感じない。そのため序盤に出た知人がフォロワーの正体と思いつく展開がミスディレクションとして機能していない。

せめて前半は現実にも可能な手法で恐怖感をもりあげて、SNSの恐ろしさを教えるような内容としても成立させて、段階を踏みながら主人公を転落させてほしかった。


不倫警察」は、たびかさなる不祥事で不倫が厳罰化の対象になった社会で、ひとりの男が破滅するまでを描く。

ドラッグやイジメを批判する公共広告をパロディしたり、発禁となった不倫を題材にした作品のパロディなどは手間がかかっていた。

しかし根本的なところで、息苦しい社会を批判する寓話として不倫をテーマにするのはどうなんだろう、という疑問がぬぐえなかった。主人公が困らされるといっても、女性に恋慕されるような男性にとってつごうのいい不倫像*1しか出てこず、保守反動なクリエイターの世界観がたれながされているように見えてしまう。エンターテイメントとしても、不倫のかたちでしか愛を成就できなかったマイノリティが登場するような意外性がほしい。

主人公が逮捕されてからテロリズムに巻きこまれるクライマックスもふくめて、不倫は代替可能なモチーフでしかなかった。


「明日へのワープ」は、映画監督志望の若者が目前の障害や挫折に耐えられず、記憶を消去する薬を処方される。その薬で都合の悪い出来事を知覚しないよう逃げるSFだ。

今回はこのエピソードだけ原作がある。小出もと貴『アイリウム』といい、講談社WEB漫画サイト「モアイ」で第1話が公開されている。

アイリウム/小出もと貴 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ

見比べると、ほぼ忠実に第1話の範囲が映像化されている。原作では薬を入手する方法がドラッグ関係だったり、「アイリウム」に記憶消去薬以外の意味があったり、主人公が未来で結婚する相手が違ったり、細部に異動はあるもののTV向けに刺激を抑える工夫として理解できる範囲だ。

また、『ドラえもん』によく似た機能の秘密道具「タイムワープリール」があったことも思い出された*2。しかし盗作というわけではなく、同じアイデアでもまったく違った展開を見せる。近視眼的に喜びを反復するために時間を無駄づかいする子供の顛末と、苦難から逃げながら無駄になった時間の重みを痛感する青年の顛末を、比較しながら楽しめた。

紆余曲折した原作と違ってドラマではすぐ夢オチになったが、それも『ドラえもん』的と思えば許せないでもない。そういう薬を処方されたこと自体が伏線ともなっているし。


「少年」は、ひとり暮らしのOLが子供の事故を目撃。その子供は不思議な言動をとりながらOLとの距離を縮めていき、やがてOLは子供に隠されていた真実を知る。

てっきり子供はOLの子供で、幻覚を見ているサイコサスペンスか、未来から来たタイムスリップか……と予測しながら見ていると、予測とは違うオチだった。前半のホラーっぽさが良くできていたので、うまくミスディレクションされた。

オチにしてもジャンル類型ではあるが、予測を外したおかげで意外性を感じて、伏線の多さに納得感もあり、オーソドックスな内容なりに楽しめた。

*1:女性社員が椅子に立って作業している時、椅子を支えに行ってスカートの中をついのぞいてしまうとか、主人公は批判されて当然だろう、としか思えなかった。

*2:2008年に「誕生日は計画的に」というタイトルでアレンジして再アニメ化されている。『ドラえもん』誕生日は計画的に/人生やりなおし機 - 法華狼の日記

2018-03-14 上げたのは5日後

[]『相棒 season16』第20話 容疑者六人〜アンユージュアル・サスペクツ

写真週刊誌の風間楓子記者がホテルのホールの巨大エレベーターを転落。いあわせた警察関係者6人の誰かがつきおとした疑いがあがる。

捜査に本腰をいれない警察に対して、風間記者のつとめる写真週刊誌が批判を展開。そこで特命係が転落事故を調べることになった。


これまでも重要回を手がけてきた輿水泰弘が脚本。番組サブレギュラーが一堂にかいする最終回2時間SPにして、事件はシンプル。死人が出ないどころか、風間記者の顔の傷も痕にならないくらい。

風間記者の実家がヤクザということで、容疑者が次々に復讐されていく展開もあるが、つきおとして同じくらいの傷を負わせるレベルにとどめている。あくまでキャラクタードラマを転がすための素材といったところ。

容疑者の人間関係や動機から転落事故の犯人を見つけようとしているようでいて、事件の起きた状況や容疑者の位置関係から推理していく。まるで南條範夫『黒い九月の手』*1のような、良くも悪くも純粋にパズル的な謎解きが刑事ドラマらしからぬ面白さ。薄いなりに推理のキレ味があるところは輿水泰弘脚本の良さだ。


とはいえ、完全に推理だけで犯人をひとりに特定するにはいたらないし、それほど難解な事件でないという印象のまま終わったことも事実。

キャラクターの立場を変える最終回だからといって無理に2時間にひきのばさず、通常と同じ1時間枠くらいに凝縮したほうが楽しめたろう。

2018-03-07 上げたのは1日後

[]『相棒 season16』第19話 少年A

ホステスが自宅で撲殺される事件が発生。犯人が現場に長時間いて、リンゴを食べ残した謎が残される。そして野次馬を見ていた杉下は、リンゴの箱をかかえていた少年に引っかかりをおぼえる。

一方、現場から去った少年の視点でもドラマが展開。同居している別の少年とともに、ヤクザなトラブルや脅迫に巻きこまれているらしい。しかし事件の全体像ははっきりしない……


トリッキーなエピソードの多い徳永富彦脚本回。今回は複数の視点が並行して異なる事件を関連させていくという複雑な構成が楽しかった。

発端の殺人事件からは、津原泰水『うふふ ルピナス探偵団』の、殺人現場で犯人がピザを食べた謎を思い出す。比べると推理の厳密さは弱かったものの*1、そもそも殺人事件は謎解きの中核にはなく、本筋の事件を露見させたイレギュラーという位置づけだった。

今回の中核は、ふたつの異なる事件に望まずかかわりながら、逃げることも助けを求めることもしない、奇妙な少年にまつわる謎解きだ。そこから、日本が直面するひとつの社会派テーマがほりおこされていく*2。そこから派生して、一般的に賞揚すべきとされる家族愛が、時には重荷となって視野をせばめる問題をもテーマに組みこめていた。

残念ながら1時間枠なので、ふたつの事件については説明不足を感じたりしたが、そこは伊丹や2課が中心となって捜査していたので、特命係の物語の本筋ではないと理解できた。


橋本一監督回らしく、きちんとテーマに合わせた重みが感じられる画面になっていたし、冠城の前歴とかかわりあるテーマなので杉下に活躍が偏らないのもいい。

ひとつひとつの事件を解いて終えるのではなく、そうした事件から逃れられない弱者を支えようと手をのばすドラマとして、感じいるものがあった。

*1:リンゴの箱の真相から考えると、リンゴを食べたのはメタファー的な意味が強かったのかもしれない。

*2:支援者へのインタビュー記事が興味深い。http://www.magazine9.jp/article/konohito/16126/

2018-02-28 上げたのは1日後

[]『相棒 season16』第18話 ロスト〜真相喪失

偽造クレジットカードを使ってATMから金を引きだす「出し子」が大量に検挙された。その半数は中国人だった。

関連して、中国人を雇っていた町工場社長の殺害事件が注目される。社長は大量のスマホを隠し持っていて……


複数の社会派テーマをくみあわせたseason15第12話*1が印象深い池上純哉脚本。

今回も社会派テーマをおりこみつつ、現代的な犯罪を描いてみせる……のだが、町工場側が中国人従業員をていちょうにあつかっていたので、技能実習生問題などにはふみこまず。あくまで日本と中国に分断された人々が、弱い立場で助けあおうとして罪を犯す哀しさを描いていた。


残念なことに、ミステリとしての面白味は弱かった。

特にトリックの中核をなす通訳捜査官が、いかにも態度が怪しげで、通訳時の操作で捜査を混乱させていることが明らか。せめて冷徹な性格の、中国人を蔑視しているキャラクターのように描けば、ミスリードになったかもしれないが。

殺害事件の真犯人にしても、被害者の町工場社長が二代目というあたりで想定の範囲内。そもそも町工場の資金繰りが苦しいというあたりで、もうひとつの事件との関連もわかりやすい。町工場の経営そのものは順調だったが、社長個人が金に困っていたと特命係がつきとめる……くらいのひねりはほしい。

良かったのは、事件を目撃したらしい少女と、被害者がやりとりしていたメールの位置づけ。日本語が話せないため中国語っぽい漢字の羅列でやりとりしていたことで、うまく設定にあわせてミスリードさせる内容になっていた。この目撃者と被害者の男女関係という疑惑を、通訳捜査官の操作が判明した後まで引っぱれば、ぎりぎりまで真犯人をミスリードさせられたかもしれない。ちょっと残念。

2018-02-21

[]『相棒 season16』第17話 騙し討ち

IT企業の営業マンが自宅アパートで殺害され、ノートパソコンが盗まれる。首をつっこんだ特命係に、経済事件が専門の二課の梶が接触し、協力を持ちかける。

どうやらデジタル教科書をめぐる収賄事件が背景にあるらしい。さらに殺害現場の近くに、ピッキングを得意とする元窃盗犯の瀬川が住んでいて……


金井寛脚本で、特命係の杉下と、二課のエース梶の不思議な協力関係を描く。

新たな名探偵が登場するパターンのひとつなので、物語の枠組みに見当をつけることは難しくない。近年は二課の活躍が減っているという雑談も、わかりやすく伏線として機能する。自身も法をふみこえて正義を執行する杉下が、組織のために法をふみこえた正義を断罪するという、いつものように矛盾を感じさせる説教もあった。

ただ、事件における瀬川の位置づけは、けっこう意外なものだった。杉下が捜査を進めて、少しずつ瀬川の身辺を洗い出していくのを、なぜ梶が様子を聞いているだけなのか、まったく気づかなかった。瀬川が事件を通報したと判明するあたりも、一種の目くらましでありつつ、現状の伏線として成立している。


まったくの偶然だが、瀬川の正体はここ最近に話題となっているスパイだった。それも序盤で示唆された産業スパイではなく、梶が協力者として利用するという、警察組織側のスパイだった。

『ワイドナショー』での三浦瑠麗氏が、スパイではなくテロリストの存在を断言したことが理解できない - 法華狼の日記

日本の公的機関も、諸外国だけでなく、さまざまな犯罪組織にスパイを送りこんでいる。時には利己的に利用してきたことも公然の秘密だ。

梶は杉下の能力を利用するために事件へ巻きこんだのであり、ノートパソコンの奪取や盗聴をおこなっていた瀬川は使い捨てられた。

それでも杉下には断罪されつつも梶なりの正義があり、使い捨てられた瀬川も正義の手助けをできたという達成感をおぼえていた。

スパイというものは必ずしも私益のためでなく、しばしば良心や信念に誘導されて活動する。そうでなくては、周囲を騙して孤独な戦いをつづけることが難しい。そしてそれゆえに、交渉の不可能な敵とは限らない。