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法華狼の日記

2018-06-12

[][][]あくまで「小説家になろう」で自作を発表しているアマチュアのひとりを、サイトの代表のようにあつかうのはやめよう

二度目の人生を異世界で』の問題*1を受けて、南京事件否定論を主張するhimuwata氏のツイートが、Togetterにまとめられていた。

『二度目の人生を異世界で』騒動を受けなろう小説家、自著の中韓への出版を拒否。また、チャイナ服キャラは台湾人設定へ - Togetter

しかしTogetterでは「なろう小説家」と表記されているが、そもそも作家デビューはしていないと自己認識している。

商業化もされていない現時点では“なろうユーザー”や“なろう投稿者”と表記するべきだろう。

実態以上に表現者としての発言力を大きく見せかけることは、その加害を強めかねない。


もちろん、南京事件否定論者であること自体は批判されて当然ではあるだろう。先日も南京事件否定論を問題視するドキュメンタリ番組が話題になったばかりだ。

『NNNドキュメント'18』南京事件II 歴史修正を検証せよ - 法華狼の日記

また、そのような意識を反映させていくという作者のツイートが本心ならば、作品も評価しづらいものになると予想される。

実際にツイートを読んでいくと、「可愛い」という評価は対象を下に見ているのではないか?という問題意識すらもっていない素朴さを確認できる*2

チャイナドレスという文化に興味が薄いだろうこともうかがえる。台湾にしても都合のいい中国代替とみなしているだけで、蒋介石が南京事件を主張していたこと*3は無視されている。


ちなみに、中国文化を愛好しつつ現在の中国政府に批判的な小説家がいるが、その作品『創竜伝』は政治批判をふくむ巻も中国で出版されているそうである。

「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む : 創竜伝、政治収容所に殴りこむ巻もちゃんと中国で売ってるみたいです

創竜伝の何が問題かといいますと、作中で頻繁に出てくる政治関連の風刺や皮肉の対象に中国共産党が含まれていまして、天安門事件について言及していたりもします。

更には舞台が中国本土になる巻では主役の竜堂四兄弟が解放軍と戦ったり、共産党の政治収容所に殴り込みをかけたりします。

天安門事件を蔑視の根拠ではなく人権の問題としてとらえて、きちんと作品化して発表できるならば、それはそれで素晴らしいことだ。

*1:私自身も言及はしたが、作品は関連部分に目をとおしたくらいで、あまり全体の状況は追えていない。商業化およびTVアニメ化までされるWEB小説『二度目の人生を異世界で』の作者が、ありふれた保守的思想をたれながしていた件について - 法華狼の日記

*2:もっとも、片言表現は私自身も悩みながら最終的に使用したことがある。この件はブーメランで切腹する気分で書いている。

*3「蒋介石秘録」に見る南京大虐殺 - 誰かの妄想・はてなブログ版

2018-06-06

[][]『二度目の人生を異世界で』で作者の差別ツイート等が問題視された件で、TVアニメから声優が降板したり、原作の出荷が停止したりしたとのこと

商業化およびTVアニメ化までされるWEB小説『二度目の人生を異世界で』の作者が、ありふれた保守的思想をたれながしていた件について - 法華狼の日記

上記エントリで言及したように批判がもりあがっていたわけだが、ついに公式的にも距離をおくような動きが出つつある。

アニメ『二度目の人生を異世界で』主要キャスト4人が降板 原作者が過去の“ヘイト発言”謝罪:どうしん電子版(北海道新聞)

 降板を発表したのは功刀蓮弥役の増田俊樹、シオン=ファム=ファタール役の安野希世乃、ローナ=シュヴァリエ役の中島愛、創造主役の山下七海の4人。各キャストともに降板の理由については明かしていない。

アニメ化決定のラノベ、出荷停止 原作者が差別ツイート:朝日新聞デジタル

出版元のホビージャパンは6日、これまでに刊行された計18巻を出荷停止にすることを決めた。

「作品の内容とは切り分けるべき事項ではありますが、著者が過去に発信したツイートは不適切な内容だった」とのコメントを6日に発表した。

no title

当社は今後の当該書籍の取扱等につきましては慎重な対応をおこなってまいります。

ご不快な思いをされた読者をはじめすべての皆様にお詫び申し上げます。

ならびに書店、流通の皆様、作品にかかわる関係各位におかれましては、多大なるご迷惑をおかけします事をお詫び申し上げます。

この判断は、主としてアジア圏で販路を広げている出版社という背景もかかわっているのかもしれない。

no title

また、月刊ホビージャパンや当社発行の専門誌、文庫は、台湾香港中国韓国、タイにて翻訳出版されております。当社は今後も海外への展開に注力してまいります。

そして、公式サイトにおいてアニメ化の中止および謝罪も告知された。

TVアニメ「二度目の人生を異世界で」公式サイト

アニメ化発表以来、一連の事案を重く受け止め、

本アニメの放送及び製作の中止をお知らせ致します。

みなさま、及び本作品の制作に関わった方々には多大なるご迷惑、

ご心配をおかけしました事、心よりお詫び申し上げます。


表現で商業活動をおこなう新人が過去のツイートを問題視された前例として、俳優の夏目雄大氏が事務所から契約解除されたことを思い出すところでもある。

OMINA│NEWS ニュース

今後の対応として所属タレントの指導の徹底と、再発防止の教育を実施いたします。

また、内容につきましては、現在調査中ですので、処分などを含め、対応につきましては、 あらためて発表させていただきます。

弊社所属 夏目雄大が芸能界に入る以前、2013年頃に一部不適切な投稿があったことを確認いたしました。加害行為自体はなかったものの、社会的な影響も鑑み、弊社所属 俳優 夏目雄大との契約を本日付けで解除いたしました。

さらに少し前に世界的な問題となった柳沼和良氏も、アニメーターとしてはベテランだが、監督という責任を負う立場はほとんど経験していなかった。

もう柳沼和良氏については、いつ周知されるかという時間の問題ではあった - 法華狼の日記

どれも新人というにはキャリアを積んだ立場でもあるが、よりベテランの同様な発言については、なおさら重い責任をとらされてほしい、という気分もある。

そして、こうして問題視されたツイートは必ずしもインターネットで特異な主張ではなく、むしろ一種の流れに身をまかせた結果だということも念頭におきたい。

2018-05-30 上げたのは2日後

[][][]商業化およびTVアニメ化までされるWEB小説『二度目の人生を異世界で』の作者が、ありふれた保守的思想をたれながしていた件について

下記のTogetterで、小説自体が日中戦争での日本軍を肯定的に位置づけていると疑われていたり、中国韓国への偏見に満ちた作者のツイートがまとめられたりしている。

TVアニメ化される『二度目の人生を異世界で』の作者がtwitterで中韓に対するヘイトスピーチ - Togetter

作者はツイートを消していったようだが、Togetterには保存されたまま。そして現在でも同じようなツイートをいくつも確認できる。

当時に読んだ宮崎駿監督の主張は、かなり保守派のリアリズムによりそった内容だったのだが*1

差別と区別の違いを主張しながら、批判対象を「ばばあ」と呼称するとか、そういうとこだぞ。


ただ今回は、作者の口調が話題にかぎらず乱暴であるため、思想がわかりやすくむきだしになっただけという気がしないでもない。

WEB小説出身でなくても、たとえば放送作家出身の有名小説家も同じようなツイートをくりかえしていることで知られている。

まるで成長していない百田尚樹と自民党の仲間たち - 法華狼の日記

上記エントリのように自民党に重用され、NHK経営委員にもなったことで、より重い責任が問われるはずの人物なのだが。

2018-04-11

[][][]転生した異世界で現代文明の知識をつかって活躍するパターンで

「主人公がそのまま転生したのではなく、異世界の肉体に現世の記憶だけがあるという展開はどうだろう?」

「憑依パターンだな。多くはないが珍しくもないぞ」

「そしてその肉体は実は魔王であり、進んだ文明の知識を利用するために主人公の記憶を自分にコピーしていたという真相」

「うん? どこかで聞いたおぼえがあるぞソレ」

「そして魔王としての記憶や感情がよみがえってくるが、主人公の人格はそれに必死であらがおうとするのがクライマックス」

「ナントカ計画とかいうロボットアニメやんけ!」

「あっ……ああ……前例のないアイデアって難しいね」

「まあ、どっちかというと、物語のパターンを逆から見ようとしているシナリオライターがすごいんだろうけどな」

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「ちなみに、ファンタジーへの逃避を批判する前編に、ファンタジーをオーソドックスに描いた後編というパターンも書いているぞ」

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2017-12-29 上げたのは1日後

[][][][]異世界シャワーをめぐる論争を見ていて、必然性や呼称の軽視にもやもやする

小説であれば、それを形成する文字ひとつひとつ、改行の位置から文字のひらきかたまで、必然性をもって配置されるべきだという理想論もあるはずだ。

ディテールをくわしく書きこんだり、それを作品世界の構築に奉仕させることだけが必然性ではない。本筋に関係なければ徹底的に省略することも必然性ある描写をするための要件だ。

時には、単独では完成度の高い描写であっても、他の描写との整合性を考えた時、克明に表現するべきだったか悩ましい場合もある。最近に見たひとつの映画も、最も魅力的な場面が物語の整合性を下げていた。

『FLU 運命の36時間』 - 法華狼の日記

スケールが大きくなっていく物語を、きちんと映像として支えられているところもすごい。首都ソウルのベッドタウン盆唐の協力をえたことで大規模な撮影がおこなえたこともあるだろうが、とにかくVFXの技術力が高くて、ひとつの都市に恐怖が蔓延していく情景を高い説得力で見せられていた

ただ残念ながら、隔離地域や収容人数の規模に比べて、探し人の発見が容易すぎる場面が多かった。数十万人が隔離された空間的スケールを見事に表現できているからこそ、物語の都合が目立った感がある。同じ脚本でも日本映画として作ったならば、せいぜい数百人規模の一区画くらいのスケール感になり、すぐ探し人にたどりついても不自然には感じなかったろう。

この映画の事例は、すべての描写にドラマとして必然性をもたせようとした結果、偶然が多用されて不自然になったという問題でもある。必然性は作為と紙一重なのだ。

また、不自然とまでいかなくても、必然性を示す描写がテンポを壊してしまったり、あくまで脇筋なのに本筋より悪目立ちしてしまうこともある。


ちなみに論争になっている『JKハルは異世界で娼婦になった』は話題になったころ序盤だけ読んで中断しているが、とりあえず導入はうまかったと思っている。

JKハルは異世界で娼婦になった - ハル17才の就活

 あたしがこっちの世界に来てまず一番ウケたのが避妊具が草ってことで、「やべ、草生える」って爆笑したら、「生えませんよ」とマダムは真顔で言った。

「スキネ草も知らないの? もうかれこれ30年も前に錬成されてこの辺じゃどこの薬草屋にも売ってるけど。ずいぶん田舎から出てきたのねえ」

これは、必然性ある描写という意味では、WEB小説として完璧に近い導入だと思う。

最初の一文で異世界に来た説明を処理して、そこで主人公が何をするかという本筋までにおわせる。定番となった描写に字数を消費しない良さがある。

主人公のボキャブラリーや興味関心の対象もわかる。主人公の興味関心のありようから、たぶん異世界文明の解明や構築という方向で期待するのは難しいだろう、とも予想できる。

会話対象のマダムの台詞から、作者が一人称主人公を相対化できているし、異文明へそれなりの敬意をもっているという安心感もある。おそらくスキンからネーミングしていることから、この物語における固有名詞のこだわりのラインもメタなレベルでわかる。

そうしたことを説明口調でつめこむのではなく、ギャグ形式におりまぜていることから、ずいぶん書きなれた作者だ、とは思った。ただ、そのうまさで書かれた内容は、あまり好みではなさそうだったが。


そうした描写の必然性のひとつとして、呼称の選択というものもある。必ずしも間違いとはいえなくても、雰囲気を壊す呼称というものはある。

たとえば『JKハルは異世界で娼婦になった』の主人公が異世界の正確な呼称を使いたがるかというと、たぶんシャワーに機能が近いなら「シャワー」と呼ぶだろうな、という印象はある。私個人としては、たとえば鉛管の先から落ちる冷たい水で汚れをこすりとる、といった描写が好みだが、それを一人称で表現しようとすれば主人公の性格が変わることはさけられない。

そうした雰囲気づくりという意味で気になった作品というと、第一次世界大戦から第二次世界大戦くらいの技術レベルの文明を舞台とした『とある飛空士への追憶』に、露出度の高い水着の呼称として「ビキニ」が登場して面食らった記憶がある。多くの地名や固有技術は架空の名称を徹底的に設定していただけに、一種の翻訳として解釈できる*1とは考えつつも、違和感をおさえられなかった。物語世界が遠未来という可能性がにおわされるようになってからも、その一部分だけ「ビキニ」という単語が使われたことの違和感は残った。他の場面では「水着」と呼んでいたからだ。露出度の高さを表現するためであっても、たとえば「紐水着」などではいけなかったのか*2

「ビキニ」にかぎらず、翻訳として理解できる単語にできるだけ置きかえてほしいという気分はある。そうしないなら、そうしないだけの必然性が読みとれるようであってほしい。わざわざ「芋」ではなく「ジャガイモ」や「サツマイモ」と表現する時、その理由はなぜか。それぞれの食味や植生が物語において意味があるのか。逆に異世界が現実と大きくは違わないという伏線になっているのか……


もちろん、こうした必然性や呼称の雰囲気づくりは、関連しつつも総合的に評価されるものであって、ひとつの描写で作品の位置づけを決められるものではあまりない。

それを理解した上で、象徴的な描写を事例として示すことはあるし、ひとつの描写にこだわることが無意味だとも思わないが。

*1:その観点から、こちらの匿名記事に対しては、異世界言語を使わないのであれば完全に日本語訳することこそ異世界らしさに一貫性がある、と考える。はてな匿名ダイアリー

*2そもそも劇中の状況ならば、下着のたぐいで水浴びする展開が自然だったようにも思う。