指根(しねじゃないよゆびねだよ) このページをアンテナに追加

   

2009-01-08 たまなまが注目されてて嬉しい件 あれは良いのです

この世には決して尽きせぬモノが三つある。学ぶべき事柄と、読みたい本と、積み上がったエロゲだ。

[]原点回帰ウォーカー22:55 原点回帰ウォーカーズを含むブックマーク


原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)

原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)


MF大賞で優秀賞を受賞した森田季節の新シリーズ。発売後、あまり話題に上っていないようなので紹介してみる。

ツッコんだら負けの、<運命ねじ曲げ系>奇天烈学園ファンタジー!!

タイトルとこの煽り文句で、好きな人ならば一発でこの作品がどうステキなのか理解してもらえると思うのだが、まあそこで説明放棄しても仕方ないので説明してみる。

この話には本来の物語の軸、本来の物語の主人公というものがあって、しかし作中で語られるのはその舞台裏での物語である。

本来なら、普通ならば主人公に位置づけされる山崎章夫は難事件を解決するが、毎度命を落としてしまう。その運命をねじ曲げるためにヒロインであるアキラが奔走するというのが話の筋である。普通ならば主人公である章夫ではなく、ヒロインが主人公として描かれているのが面白いところで、彼女は幼なじみの章夫を救うために因果をねじ曲げ、「彼が命を落とさなかった」ことにしてしまうのである。原点回帰、というのはそういう意味。ここまで説明するともうこういうのが好きな人は一も二もなく食いついてくれることと思う。SF的にも、因果をねじ曲げることによって発生する混乱やパラドクス、また人間道徳の観点から因果をねじ曲げることの是非を問うているのが素晴らしい。

これに対してアキラが出す解答がまた素晴らしいのだが・・・それは読んでみてのお楽しみということで。

森田季節はデビュー以来好調なペースで新作を出し続けている。これからの活躍に期待したい。

[]のどち●こって言うな! 22:55 のどち●こって言うな!を含むブックマーク


口蓋垂って言え!

英語だとpalatine uvula、独語だとGaumenzäpfchenだ! カノッサ機関の本部のゲートのパスワードでもあるからみんな要チェックだ!!

セカイ系には二種類くらいあってさ、(もっと細分化できると思うけど)シャナみたいなソフトセカイ系と、レジミルや幻想症候群みたいなハード(ガチ)セカイ系という括りで分けられる。

多分。

[]ゆらぎの神話とアルセスと百万のキセキと人間の鎖とたった一つの嘘 22:55 ゆらぎの神話とアルセスと百万のキセキと人間の鎖とたった一つの嘘を含むブックマーク

ある種の批評創作芸能文化集団として一部で話題沸騰中のゆらぎの神話シェアードワールドとしての側面も持つこの企画で最初期に扱われていた「少年神アルセス」には実はモデルが存在する。

というのも、本来この企画そのものがとある神話とそれに対しての神話学的考察をベースとして誕生したからである。


神話学についてはレヴィ=ストロースの「神話の構造」によって大分人口に膾炙した感があるが、(日本では遠野物語の柳田国男とかだろうか。実は読んだことない)物語の類型や構造を体系化した物語学者の1人に、ジェラルド・プリンスという人物がいる。

物語論(ナラトロジー)とか、物語構造(ナラティヴストラクチャー)などといった大枠はある程度複数の物語学者らの間で合意がとれていたものの、様々な国の人々がてんでばらばらに同じ事を違う言語や表現様式で論じたため、用語に混乱が生じた。

この用語を体系化し、まとめあげたのがプリンスである。ゆらぎの神話的表現を使うと、「竜の化身のような男」なのだ。


さて、このプリンス自身が考案した用語に、flickerというのがある。そう、ゆらぎの神話の英訳である、Myth of Flickerはここから来ている。和訳も、そのまま「ゆらぎ」という。

これはいわゆるエーコが言うところの天秤座と獅子座の概念を包括する物語上の役割であり、まあ早い話トリックスターである。北欧神話のロキとか、ロキとか、あとロキとか有名ですね。(ロキ以外のトリックスター知らないのかよ)ちなみにトリックスターズというラノベが電撃+ファウスト÷2みたいな感じで面白かったです。関係無い。


厳密には、トリックスターとして物語を引っかき回す他、主役と対象を結びつける、媒介としての役割も含んでいます。ええと、何が言いたいかというと、ココで言うflickerに丁度当てはまる神話の人物がいるんですね。

そう、アルセスです。なんでさっきから俺丁寧語なんだ。

ゆらぎの神話を知らない方に説明すると、このアルセスというのはまあこんな感じ

日本におけるアルセスの第一人者、というか日記を書けば三度に一度の割合でアルセスが出てくる魔王様にお任せして、私が紹介するのは本家本元におけるアルセスの原型。

ではその本家本元とはどこなのか。

聞いて驚く無かれ、リトアニアである。

聞き間違いではございません。あのバルト三国の一番南、エストニア、ラトビア、リトアニアのあのリトアニア。

リアル「百万のキセキ」みたいな「人間の鎖」を断行した(いや全然違うか)あのリトアニア。ロシアやドイツ(というかプロイセン)やデンマークにフルボッコにされてきたリトアニアである。

で、この西と東の板挟みになって延々と奪い合いや教化を繰り返されてきたトコがポイント。

いわゆる北欧神話やドイツの民話、スラヴ神話(民話)などが入り交じり、この地域には独自の神話体系が築かれたのである。複数の伝承が入り交じり混淆し、原型を残しつつも見事に別物に仕上がっている。


ここで、flickerすなわちアルセスが再び登場するわけだ。

リトアニア神話におけるアルセスは複数の民話・民謡に登場しており、本国ではそれなりにポピュラーな物語として親しまれている。概要はこうだ。


少年神アルセスは処女神キュトスと愛し合っていたが、嫉妬に駆られた美の神レーヴェヤーナにキュトスを八つ裂きにされてしまう。嘆き悲しんだアルセスは愛するキュトスを蘇らせるため旅に出る。数々の苦難を乗り越えたアルセスは、突き刺したものに命を与える槍を大神オースキより賜る。アルセスは槍でキュトスの肉片を突き刺していったが、なんとバラバラの肉片がそれぞれ命になり、無数のキュトスが生まれてしまう。 キュトスたちは自分1人がアルセスの唯一の愛を受け取るわけにはいかないと考え、全員がアルセスの元を去ってしまう。深く絶望したアルセスは自らの腹を割き、流れ出る血を槍で刺して海を作り、臓物で空と雲を作った。皮を破ると女達が生まれ、骨を突き刺すと男達が生まれた。アルセスは最後に自分の頭を槍に突き刺し、槍そのものとなって海の彼方に消えていった。


これのどこがトリックスターだと思われるかも知れないが、彼がトリックスター兼物語の媒介となるのはこのエピソード以降である。つまり、このエピソードで槍という重要なアイテムそのものとなった彼を巡り、様々な話の主人公が彼を求めるわけである。

これはいわゆる神話の「魔剣」や「聖なる杯」などの器具(インストゥルメント)に相当する役割であり、「主人公(英雄や王族)」が「器具(魔剣など)」を用い「化け物(竜など)」を倒し「財宝(姫など)」を得る、というような物語類型の基本要素の一つとなっているのだ。

ここでは器具は主人公と化け物を結びつける媒介となっている。

そしてここからがこのflickerであるアルセスが他と一線を画す所なのだが、この伝説の武器(槍)、主人公に悪影響を与えるのである。

古今東西、伝説の武器というのは大抵厨性能、というか主人公に都合の良いものばかりである。

エルリック・サーガストームブリンガーなどはその強力さ故に主人公が葛藤するのだが(こうした英雄像を提示したという点において、ムアコックは素晴らしい作品を著したと言える)、実はエルリック・サーガ以前にもこうした「ろくでもない伝説の武器」というのはあったのだ。

この「アルセスの槍(固有名詞が無いのでこう呼ぶが)」、アルセスの頭が付いているために良く喋り、英雄達を惑わす。やれ奴を殺せ金を奪え女を犯せと、およそ神の言うこととは思えない。あげくの果てには勝手に飛んでいって殺したくない相手を殺してしまう。英雄達はアルセスがいないと目的が達成できないために、こいつの扱いに苦心するのである。

これがアルセスのトリックスター兼媒介たるゆえんである。あ、表記揺れが起きてるけど媒介=器具です。

プリンスはトリックスターと媒介(器具)が機能として相似していることを指摘し、またリトアニア神話におけるアルセスを例に挙げて、両者を包括するカテゴリを作った。

それがゆらぎ(flicker)なのである。

主人公を揺さぶるもの、くらいの意味らしいが、けっこう深読みの出来そうなネーミングでもある。

ともあれ、ゆらぎの神話とはこのリトアニア神話を下敷きにして作られている。複数の文化圏が多層的に折り重なった結果、異質な神話形態が誕生したということからゆらぎの神話の理念に沿うと判断されたのである。


というか、大神オースキ、というのはモロにヴォーダンオーディン)の別名だし、アルセスは多分あれロキとチェルノボグがごっちゃになってる。他にも所々聞いたことのあるような話がけっこうある。基本は、スラヴ神話ベースの北欧神話みたいなイメージです。

更にそれが日本に輸入されてシェアードワールド化するんだから、ほんと神話ってものすごい生命力だと思う。

ちなみに全部嘘な。