通称ドルミと呼ばれているボランティア連絡所で送別会が催されました




青年海外協力隊の皆さんにとっては、隊次が、学校で言えば、学年のような
もので、先輩後輩の位置づけが直ぐに判断出来ます。着任した時には、必ず
歓迎会が行われます。その準備をした隊次の人達が、2年の任期を終えて、
帰国する際には、今度は歓迎会をしてもらった隊次の人達が、送別会の準備
をするようになっています。この伝統が脈々と続いているようです。



隊員の任期は、2年間なのですが、現職の学校の先生が参加している場合は、
帰国後、新学期から学校へ復帰できるようにするために、任期が若干早まる
ことになるようです。



一昨日の土曜日、17年度3次隊、隊員5名、18年度1次隊、現職参加教員
4名の送別会がありました。



会場となる連絡所では、午後から一斉に準備が進められました。部屋の中に
あるもので送別会場にそぐわないものは、全てシーツで覆われてしまいました。
その中には、ホンジュラスの大きな地図に、隊員の写真が貼ってあるものも
ありました。隊員の赴任先一覧表マップです。これを見ると、名前と顔と
赴任地が直ぐに確認出来ます。



でも、その写真が、とても若いように感じられました。恐らく2年前の写真
なのでしょうが、今では、それぞれが、十分に存在感があり、写真よりずっと
力強い印象を与えます。変われば変わるものと言えなくもありませんが、
ホンジュラスでの生活が、精神的にも肉体的にも、それぞれを、たくましく
成長させているのでしょう。
そのシーツに、送られる9名の似顔絵が、貼られました。



普段は、ミーティングや学習が出来る部屋では、テーブルクロスがかけられて
いました。ここでは、おにぎりを作っていました。お盆には、同じ大きさに
結ばれたおにぎりが、たくさん並んでいました。更に、その奥の台所では、
仲良しグループの調理担当班なのか、楽しそうに大量の食べ物に取り掛かって
いました。



庭へ出る手前では、パソコンにシーツがかけられ、バーカウンターに変身して
いました。飲物の準備も半端ではなかったようです。ビールは、インペリアル、
ポートロイヤル、ワインは、赤、白、それに、ラム酒、コーラなどが並べられて
いました。庭の左手では、送られる人の名前と、労いの言葉が書かれた大きな
用紙が貼られていました。その下では、紙で大きな赤いバラを作っています。
中央の天井では、赤の大きなシーツが、飾られている最中でした。真ん中を少し
たるませながら、両サイドを押しピンで留めるのは、背の高い男性の役割で、
テーブルのイスを支えられながら作業していました。
上部だけの大きなデコレーションの完成です。



正面右の方では、バーベキューの準備が進み、庭に入った右側では壁を利用して、
白のシーツが貼られていました。どうやら、スクリーンになるようです。
シーツの上には、紙で作られたあの赤いバラが並んでいました。庭の中央には、
ゴザのようなものが敷かれて、テーブルがセットされました。



いつの間にか、受付の机も飾られています。当初の金額よりも少ない額になって
いました。何方からの寄付があったのかも知れません。



短い時間で要領よく、送別会会場が設営されました。
皆、作業を、とても楽しそうにやっていました。ここにいる誰もが、リーダーに
なって取り仕切ることが出来る人達ばかりです。次に、どうしなければならない
のかは、全て自分で判断できます。それこそ、指示待ち人間など誰もいません。
リーダーはいたのでしょうが、誰だか分かりません。ごく短時間の打ち合わせ
だったのでしょうが、描かれたプランが、どんどん形になっていたようでした。



18時30分には、かなりの人が集まっていました。
懐かしい顔もあり、しばらくは、食べたり飲んだり、歓談タイム。
70人もの人が各地から集まってきたそうです。
連絡所は、大勢の人で賑わい、急に狭くなったように思えました。



ホンジュラスで、どんなことをやってきたのか、1人ずつ活動が報告されました。
映像で紹介した人もいました。こうした送別会や地方のお祭りに合わせた日本文化
紹介などでしか会わない人がほとんどです。ですから、実際に、どんなことを
活動してきたのかは、よく分かっていません。最後の最後の段階になって、その
人の具体的な活動内容を知ることになります。



言葉の問題や異文化問題は常にあります。相手の行動が、どうにも許せない経験を
した人がいました。全くの他人なら、そんな人もいるということで簡単に片付けら
れるのですが、それが、自分と一緒に仕事を進めていく人であったり上長だったり
した場合には、そうはいきません。日々の生活で言葉を勉強していると言っても、
細かいニュアンスまでは、とても伝えられません。伝え切れないもどかしさは、
何時もあります。この人の場合は、自分は、こう考えるが、何故、そうしたことが
出来るのかを、はっきり指摘し、うやむやにしなかった体験談でした。
恐らく、想像以上の悔しさだったでしょうし、勇気が必要だったことでしょう。
しかし、本音で体当たりしていった結果は、悪い印象を与えることもなく、むしろ
相手が自省する機会となったようです。その後は、言葉だけではなく、具体的に、
ものをプレゼントされたことで、お互いが打ち解けていったようです。
本人にとっては、贈り物以上に、嬉しい思い出となったのかも知れません。



若しかしたら、相手によっては、口もきかないような結果が待っていたかも知れ
ません。自分に正直な人が自分を偽らなかったことで、人間関係を切り開かれた
ようです。日本から遠く離れ、ホンジュラスに暮らしていると、何処か大きな世界
にいるようにも思えますが、案外、小さな世界に住んでいるのかも知れません。



仮装3人組のトップバッターは、伝説の男と呼ばれていました。この人も、日本
文化紹介や原爆展などで活躍していたところしか見ていません。実際の仕事と
いうのは、山に入って、シャーガス病対策の家を130棟も、建てたそうです。
何しろ山の中のことですから、自身も、虫に刺されて大変な目に遭ったことも
あるようです。2年間の任期を終えた訳ですが、将来のプランは、立てている
そうです。青年海外協力隊を経験する場合、先ず、優秀でなければ、隊員になれ
ないのでしょうが、なれたところで2年間という限定版です。しかも、現職の
先生と違い戻る場所がないのが普通です。企業に就職するにしても、その時の
経済環境に大きく左右されてしまいます。年齢的なこともあるかも知れません。
よほど腹が据わっていないと、隊員になることも出来なかったでしょう。
しかし、ここホンジュラスで、十分過ぎるほどの手応えを得られたようです。
将来への布石を打ちに来られていたのかも知れません。



社会の底辺の人達を相手に活動されていた人もいました。人数の少ない職場環境
だったようで、直ぐにメンバーに組み込まれてしまい、着任早々仕事が始まった
そうです。期待されることは嬉しいことなのでしょうが、反面、休暇を取ろうと
すると、誰かの支援が必要になってしまいます。そんなご苦労もあったかも知れ
ません。同期は、5人なのですが、話が長い人や報告書の枚数が数十枚という人、
また、飲むと陽気になる人もいるなど、とてもユニークな集団なようで、時には、
男性3人の行過ぎと思える仮装を見て、同期であることを解消したくなったこと
もあったようです。そんな個性集団のことですから、報告会などで集まっても、
制限時間内の活動報告で済むはずもなく、また、熱い思いも加わるため、自分の
番が回ってくるのに、2時間以上も待たなければならなかったそうです。しかし、
ホンジュラスにいることがとても嬉しく、ホンジュラスが大好きという言葉で
締めくくられました。



JICA所長、次長、職員、専門家、日本大使館員、青年海外協力隊員、シニア
海外ボランティアなど、ここに集まった人達の立場や、年齢が、様々に異なって
いても、ホンジュラスで暮らしているという最大公約数に変わりはありません。
もちろん、一緒に暮らしている訳ではないのですが、環境を共有しています。
同じように喜びを感じ、同じように怒り、同じように哀しみを思い、同じように
楽しんでいるように思えます。日本から離れていることが、若しかしたら、人を、
より素直にさせているのかも知れません。



一人一人の言葉が、素直に心に響きます。中には、初対面の人もいるのですが、
誰もが、本音で話しています。言い難いことや嫌なことでも、ごく自然に口に出来、
また、ごく自然に受け止めることが出来ます。一言、一言に共感出来ます。
話している間に、この2年間に体験したいろいろなことを思い出し、その時の思い
が込み上げてきて、涙声になることもあります。でも、その先の言葉が伝わって
きます。同じように涙で応えています。



司会者の言葉ではありませんが、終わる気がしない。これで終わるとは思えない。
皆の思いだと思います。



ここにいる全ての人に任期があります。いつかは、日本に帰ることになります。
そして、それぞれの人生を、それぞれが歩くことには、何の違いもありません。
ただ、この瞬間を、この出会いを、ホンジュラスの想い出としてだけ刻むのには、
とても惜しいような気がします。前回の送別会の時でも、そのように感じました。
恐らく、この思いも共感できるのではないでしょうか。
何時の日か、何処かで、ホンジュラス同窓会で会えれば嬉しいと感じました。



今日の分は、とても長くなってしまいましたが、この送別会で受けた感動は、
とても伝えきれるものではありません。
ご容赦願います。







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