秘密の心臓

 ディヴィッド・アーモンドさんの児童文学。今回の主人公は作文のうまい少年ではないので、自伝的要素はちょっと薄まったのかな? 主人公は登校拒否をしている少年ですが、彼の住んでいる町を荒れ野が取り巻いているのは、『闇の底のシルキー』と同じですね。ただ、今回はかつて炭鉱があったところという設定は特にないようです。

 その荒れ野にさびれたサーカス一座がやって来るのですが、物語は、金曜日、土曜日、日曜日と三つの章に分かれていて、わずか三日間の出来事で構成されているのがわかります。作風は、前三作よりもさらにファンタジー度が増していて、ここまで幻想的だと素敵と感じるよりも、むしろ消化するのにアップアップしてしまうのですよ。

 どう解釈したらいいんだろうなあ。なんか、ファンタジーでサーカスが舞台だと、ハニーとしてはもうそれだけで既視感いっぱいになってしまうので、今までの作品ほどには良い感じがしなかったというのも事実です。

 あれこれ深読みしようとする大人にとっては今までで一番難解のような気がしますが、現実世界がつらい少年少女がこの作品を素直に読むことによって、自分にも何か素晴らしいところがあるのかも知れない、もう少しがんばってみてもいいのかも・・・という気持ちになれるのだとしたら、すごく価値のある作品なのではないかと思います。


 2011/1/9筆