ビッグ・ファット・キャットとマジック・パイ・ショップ

BIG FAT CAT AND THE MAGIC PIE SHOP ビッグ・ファット・キャットとマジック・パイ・ショップ (BFC BOOKS)


英語で語られる でぶ猫とパイ屋の青年の苦難と苦難とまたまた苦難ばっかりの物語の5冊目。そして転げ落ち続けた青年もこの巻でようやく底にたどり着き、再び這い上がるべく立ち上がるターニングポイントともなる一冊です。「第二部スタート」なんて宣伝文句もこの巻に付いているみたいですが、まさにその通りに心機一転で始まりました。
BFC(ビッグファットキャット)シリーズ、「Big Fat Cat AND THE MAGIC PIE SHOP」です。
さあてこの英語の本、巻数が増えるにつれてまだまだ難しくなっていきますね。今回でだいぶ普通の小説らしく見えるくらいに、文章の方もページに詰まってきました。まあ、普通の小説なら後半の解説部分にもお話が詰まっているはずですから、まだまだ量は少ないままですけどね。
どうやら今回は作者さんがいつもより意識してスラングや決まり文句を会話に取り入れているようでして、簡単そうに見える英単語の組み合わせでもなかなか読み取るのが難しい表現が所々に出てきます。もう辞書で調べてもなかなか意味が掴めない表現ってすんごい苦手なのですが、作中でいっぱい取り入れて解説してくれるのは非常にありがたいですね。簡単に見えても分からんものは分からんのだよ!
そんな感じでお勉強をしながらも、肝心のお話の方は相変わらず目が離せないハラハラの連続でページを捲る手はガンガン進んでいきます。
パイ屋の青年がみすぼらしいながらもとうとうパイ屋の商売を再開させてくれまして、苦難続きだった青年の生活にようやく明るいニュースも聞けるようになりました。いやぁ、いい加減作者さんからのいじめも止んでくれたようで、気苦労で夜も寝むれなかった私でしたがほっと一息吐けて良かったですね。今夜はぐっすり寝られそうだ。
まあ作者さんのドS気質は筋金入りなのでいじめは完全には止んでいませんが、それでもまた立ち向かって行くだけの元気くらいは取り戻せたように思います。再び登場の金持ち息子ジェレミーくん、彼がパイ屋の青年 エドの宿敵となるのはもう運命のようですが、負けっぱなしじゃいい加減飽きてきたところだよな!とこれからの対決の予感にこちらも熱が入りますね。
ただやはり作者さんの物語の語り口が只者ではなく、一見嫌らしく見えるジェレミーくんも私生活では更に怖いお父さんに認めてもらうべく一所懸命に頑張っている姿を読者に見せるなどして、単なる悪党にはしない一筋縄ではいかない人間模様で攻めてきます。確かに健気に頑張るエドくんの姿は応援したくなりますが、かと言ってそれに立ちはだかるジェレミーくんも負けられない想いを持っていまして、エドくんがそれに匹敵する熱意を持っていなければジェレミーくんを応援することも十分あり得る緊張感と期待に満ちた展開となっていました。エドくんはこれから誰よりも強くならなくちゃいけませんね!
ところでお話が終わった後の後半の解説部分なのですが、ページのスペースをちょっと拝借してマンガやらパイのレシピやらちょっとした小話やらが英語で書かれているんですよね。ほんのおまけなので量は少ないのですが、それでも読ませる質の高さは相変わらずハンパないぜ作者さんと言うところ。他の巻でも同じようにいたるところにあるのですが、この巻でさり気なくジェレミーくんのお話を混ぜるという罠を作者さんは仕掛けやがっていました。おまけなので特に訳も解説もありませんが、読んでみると、ジェレミーくんが病気で入院していて一度もお菓子を食べたことのない子供のために、特別に作ったパイを携え店員たちと病室に乗り込んでいく姿が描かれていました。正直言ってあまりのカッコよさに濡れそうでした(涙で)。
これは明らかに作者さんが隠して用意したものでしょうね。始めは分からなくても、何度も読み返した時に見つけて驚いたり出来る用に意図したんでしょう。前の巻で、英語に秘められたニュアンス集めを宝探しに例えたりしてましたし。もう、わざとらしいんだから!おかげでジェレミーくんの好感度がストップ高になりました。