ビッグ・ファット・キャットと雪の夜

BIG FAT CAT と雪の夜 (BFC BOOKS)



読み終わって、静かに泣いた。
BFC(ビッグファットキャット)シリーズの8冊目にして最終巻、「Big Fat Cat AND THE SNOW OF THE CENTURY」も読み終わりまして、ほぼ一ヶ月ほど一緒に過ごしたこのお話ともお別れの時間がやってきました。
英語を読むことの楽しさを広めるために作られたというこのシリーズ、初めのころは教科書とも絵本とも見えるような解説豊富な学習本でしたが、この最終巻でそれらもとうとうなくなってようやく立派な英語の小説となったように思えます。一番初めなんかは日本語ばかりで英文なんて全然出てきませんでしたからね。巻数が進むにつれてセンテンスが長くなり、次第に会話文の間に情景描写が増えていって、またまた巻数が増えるにつれてそれらの密度も少しずつ濃くなって最後には英文だけになってしまいました。それでも英文の難易度は、まさに難しいと簡単の間のぎりぎりのところを攻めていると言えるんじゃないでしょうか。英語が苦手な人にとってはこの最終巻は途方もなくハードルが高く感じるかもしれませんが、本当に洋書を楽しもうと思ったらこれくらい簡単なものにはいつまでもとどまっていられないでしょう。あくまで児童書レベルですもの。いい加減ぼくもアダルティーなノベルに手を出したいお年頃なのです。
さて、実に波乱万丈だったエドくんの人生ですが、最後のお話はでぶ猫とエドくんとの物語で締めくくられます。このでぶ猫との出会いで全ての物語は始まりましたが、このでぶ猫と共に物語は終わるちょっと粋な演出ですね。なんか出会いが始まりとか書くと、終わりは別れになってしまうの?とか思ってしまいますが、んなもん読めば分からぃ!
白熱したパイフェスティバルも終わり、辺りは氷点下のいささか厳しすぎる気温の雪の夜。吹雪の中で行われる、エドくんとでぶ猫のこの物語最後の試練のお話です。今まで辛い事や大変なことはいっぱいあったけど、その中でも一番大変なことなんじゃないでしょうか今回。最後の最後まで容赦なくエドくんをいたぶり続ける作者ってほんとドSよね。あまりにも容赦ないから、ウイリーじいさんが出てきたときは、失礼ながら思わず笑ってしまいました。いや、そういう場面じゃないのは分かってる!でも作者さん本当にエドくんを殺しかねない勢いでブリザード発生させちゃうし、そんな中でぶっ倒れて走馬灯まで見ちゃったら本気で危ない状態じゃないですか。ここまで来て凍死エンドの可能性も出てきて笑うしかなかったんです。全てはドSの作者さんのせいなのです。
あとジェレミーくんのカッコ良さがとどまる事を知りません。エドくんとジェレミーくんのファーストコンタクトはひどいものでしたが、今ではもうこいつら親友と言うか付き合っちゃえよと思うくらい仲が良くなっててこっちでも笑えました。本の帯にマンガが付いていて、エドくんが「ぼくまだ彼女が出来てないのに物語が終わっちゃったよー!」とかなんとか叫んでいるんですが、別に性別にこだわらなければ似たようなものをちゃんと手に入れてるじゃないか。
そうそう、メインのエドくんとでぶ猫との物語ですが、なんと最後の話の伏線はBFCシリーズ第一弾とか言われている「ビッグ・ファット・キャットマスタード・パイ」より前の、「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」から繋げてきていました。ナンバリングから外すとか紛らわしい!すごく大事な話じゃん!とかちょっと思う。BFCシリーズで終始エドくんの後ろをとことこ何故か付いてくるでぶ猫でしたが、実はエドくんのブルーベリーパイの大ファンだというお話がはっきりと書かれているのが「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」なんですよね。このでぶ猫が最後に選ぶ場所もまたエドくんのブルーベリーパイの所であり、ただただ純粋で揺らぎのない「好き」の気持ちが、毎度毎度私の心を揺さぶりやがります。こんなに想われていたら嬉しくて泣けるじゃぁないかエドくん。つーか泣いたじゃぁないか俺。
そんな感じで、8冊にも及んだBFCのお話もこれにて終了。しかし解説とかも多く字もぎっしり詰まってるわけじゃないから、全部合わせてようやく小説1冊分くらいの分量だと思います。だから8冊に分けているぶんお値段も高め。でもお話の面白さはプライスレス。ぼくはこのお話に出会えてとっても幸せなのです。