【上橋菜穂子】天と地の守り人 第一部 ロタ王国編

天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)



さあさあ辿り着きました精霊の守り人シリーズの最終章。用心棒なんて流れ者の胡散臭いお仕事を生業としているバルサさんの巻き込まれ体質もここまで極まったかと思わんばかりのクライマックス。国が一個滅びて住むところが無くなるか、それとも見事敵国の侵略を阻止できるのか。全三部構成で運命のお時間がやってきます。
そんな感じでこんにちは。本日はコチラ「天と地の守り人 第一部 ロタ王国編」よりお送りしていきます。
基本守り人シリーズの主人公は用心棒稼業に精を出すバルサさんのため、普通に考えたら依頼主とのいざこざや商売敵に後ろから狙われるなんて言う程度の事件ばかりのお話になりそうな気もするものです。刻々と他国との戦争の気配が近づいてくる中で主役はやはり大人数を動かせる軍人や国のトップに移り、バルサさんのような一国の民はその他大多数に埋もれてフェードアウトしていってもよさそうですが、単に巻き込まれるだけじゃなくて自ら巻き込まれに行ったバルサさんは格が違いました。時は戦争待ったなしの緊迫の世の中。戦えば絶対に負けると分かるほどの戦力差の前に、あるかも分からない生き残りの道を探して混乱しまくりの国の首脳陣。たかだか一人の女用心棒に何が出来ると思われましたが、長年のパートナー、皇太子のチャグムくんがいれば話は別さ。権力はあるがバックアップが弱いチャグムくんが窮地に陥ったとき、バルサさん自慢の短槍が唸りを上げるぜ!
以前の巻より少しずつ影を伸ばしてきていた他国からの侵略戦争が、この巻からとうとう本格化することになります。「なんかー海の向こうの国がウチに攻めてこようとしてるらしいじゃない?やばくねー?」と前々から噂話は聞こえていた事が、「なんか攻めてくるって果たし状来たんですけど、どうしたらいいの…」ぐらいに悪化したのが今回のお話です。次の巻で「侵略中なう」となって、その次の巻で新ヨゴ皇国の名前が変わっているかは読み終わった人のみぞ知る。今はとにかく情報戦の最中です。正面から挑めば勝負にならないけど、敵国の内情を必死こいて探れば探るほど微かな希望が見え隠れしたりします。他の皆は皆でそれぞれの思惑で動いていますが、チャグムくんが見出した対抗策がなかなか有望でございました。問題点はその策で動いてる人間がチャグムくん一人で、あっという間に殺されちゃいそうだということだね!そこで登場するのがバルサさんだっていう寸法よ。恐ろしい話です。このたった二人の行動が、敵国20万以上の兵に対抗しうる可能性を秘めているだなんて。
やっぱりタダじゃ引っ込まなかったシハナ嬢が暗躍してる様子も聞こえてきて、国が亡びる絶望しかなかった世の中にちょっぴり見えてきた希望の光。ええい、あれこれ憶測してもしゃーない!と、ここは静かに次の巻に移ることにします。