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2013-04-26

読者賞とコンベンションを振り返って(執筆者・大木雄一郎[福岡読書会])

 

 

 4月13日の翻訳ミステリー大賞授賞式の場で、第一回翻訳ミステリー読者賞の発表を無事終えることができました。シンジケート事務局、各地の読書会のご協力と、なによりも多くの読者のみなさんに投票していただいたおかげです。本当にありがとうございました。 今回、事務局のほうから「立ち上げから発表、さらにはコンベンションの様子までもまとめるような感じで」記事を、という依頼が来ましたので、個人的に、準備から本番までを振り返る形で書いてみました。ちょっと長くなりますが、読んでいただけると幸いです。

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 最初は酒の上での話だった。


 ちょうど1年前の、第三回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションに出席していた私は、リアルタイムで開票が進む中、ちょっとした不満を抱いていた。


「プロが投票するのを見てるばかりじゃつまらん」


 いや、つまらんというのは語弊があるかもしれない。そもそも国内で紹介される海外ミステリーは、おしなべてレベルが高い。その中から選りすぐりの作品に票が投じられるわけだから、一次候補に挙がった作品を眺めるだけでも、読者にとってはよいブックガイドになるし、その中から選ばれた、しかもプロが選んだ受賞作品となれば、なおさらのことだ。しかしこれも所詮他人が選ぶもの。自分の票が反映された賞だとどうなのだろう、本を作る側が選ぶ賞じゃなくて、読者が選ぶ賞があったらおもしろいのでは? とそのとき思ってしまった。つまらんと言う言葉は、結局「俺に入れさせろ」という気持ちの表れに過ぎない。本当に身勝手なものだと思う。


 その夜、コンベンションの企画もすべて終わり、みんなで酒を酌み交わしているときに「読者のベスト投票したらどうやろか」と提案してみた。酒が言わせたのだ。素面だったらたぶん言えなかった。しかしその場で酒を飲んでない人はいなかった。それがよかった。提案は案外すんなりと受け入れられて、妙に盛り上がってしまった。酒の力である。こうして局地的に「読者賞するばい!」的なノリになったのはいいのだが、福岡に帰り、気持ちが冷静になると、これはかなり大変なのでは? という思いのほうが強くなってきた。このときは酒を飲んでいなかったからだ。どうせならあの晩の記憶が消え去ってくれたらよかったのに、酒の力はそこまでおよばなかった。あの晩言ったことはまだしっかり覚えている。いったん口にした言葉はもはやなかったことにはできない。とにかくやってみよう、失敗したらごめんなさいでいいよね? という半ば開き直った気持ちだった。そしておよそ1ヶ月後、自分のブログに読者賞の素案を掲載した。ほぼ同時に、各地の読書会の世話人のみなさんに呼びかけて、メーリングリストを立ち上げた。


 メールによる話し合いを始めたのは6月ごろから。本番はまだまだ先なので、やりとりもそれほど活発ではなかった。とりあえずのスケジュールを決め、私が作った素案をたたき台にして、ゆったりと議論を進めた。今、改めて素案を眺めると、今回の投票要項と違うところがいろいろある。その修正のひとつひとつが、このメーリングリストでの議論から生み出されていった。


 年末には、おおまかな要項ができあがり、12月28日、シンジケートのサイトに正式な告知が掲載された。年が明けてすぐ、読者賞告知用のサイトを立ち上げた。読者賞が大賞の一部門ではないということをはっきりさせておく必要があったからだ。もちろん、シンジケートの協力なくしては、読者賞はおろか、各地の読書会もこれほど隆盛にはなっていなかっただろう。しかし、翻訳ミステリー大賞は、サイト名にも明記されているとおり、シンジケートが運営するもので、翻訳ミステリー読者賞は、読書会参加者有志で運営するもの、そしてこの2つはまったく別だというのが、お互いの共通認識だ。だから、告知ひとつとっても、シンジケートのサイトばかりに頼るわけにはいかない。そういう気持ちでサイトを立ち上げた。


 そうこうしているうちに3月になり、1ヶ月におよぶ投票期間が始まった。正直なところ、どのくらいの投票数になるのか、まったく予想ができなかった。10ヶ所ある読書会から10名ずつ投票してもらったら100票になるなどと計算してはみたものの、投票期間の前半は、まったく票が集まらなかった。きっと最終日近くに集中すると思っていたが、1日に1票か2票かという日が続くと、この賞は本当に成り立つのだろうかと不安にもなった。既に、ごめんなさいと言えば済むような状況ではなくなっていた。なんとか票を入れてほしいという気持ちで、Twitterに投票を促すコメントを書き込んでいた。


 平行してメーリングリストでは、本番の進行や賞品など、細かい部分の詰めをおこなっていた。最初はゆったりしていたメーリングリストも、投票の締め切りを終えた4月に入ってから、本番の前々日までに、およそ80通ほどのメールが行き交った。シンジケート事務局とも、進行に関して打ち合わせのメールをやり取りしていたので、本番の週にはかなりの数のメールを書いた。このころにはもう、この企画はたぶん成功するだろうと思っていた。締め切り直前の投票数の伸びが、そんな確信に近い思いをもたらした。もし失敗することがあるとしたら、それは司会を務める私の責任になるだろうと、自身にプレッシャーを与えつつ当日を迎えた。


 本番の朝、私は横浜のホテルで、二日酔いの頭をはっきりさせるために何度もシャワーを浴びていた。4月に入ってあれほど行き交ったメールも、前日にはひとつも届かなかった。準備万端だと思っていたのか、それともなるようになれと思っていたのか、他の人の気持ちはわからないが、私自身はやることはやったという気分だった。チェックアウトしてから会場に入るまで、少し時間があったので、シンジケートのサイトで知った「翻訳ミステリーとコラボイラスト展」を見てみようと、神保町のカンダコーヒーに向かった。15席くらいしかない、狭いけれど、シックな色合いの雰囲気のよい店内に、ミステリーをモチーフにしたイラストはとてもよくあっている気がした。とても感じのよい店員さんが出してくれたミルクコーヒーは、これから会場に向かう私の緊張を、少しほぐしてくれた。


 会場へは、東京駅で待ち合わせた福岡読書会のメンバーとともに向かった。お互い2度目の参加なので、それほど迷うこともなく会場に着いた。前回と同様、事務局の方々に迎えられ、それぞれにあいさつをしながらも、私は読者賞の準備のことで頭がいっぱいだった。割り当てられた部屋に荷物を置き、すでに到着していた人たちとともに準備にかかった。


 読者賞の結果はすでに周知されているとおり。大賞受賞作と重なることのない、3作同時受賞という結果も、とてもよかったと思っている。受賞者のみなさんの反応も、会場にいた人々の反応も、私たちにとってはすごくうれしいものだった。私の司会が会場にどう映ったのか、自分ではまったくわからない。テンポよく、ということだけ気をつけていたら、どんどん先に進んで行くので、ちょっと焦っていたことだけ覚えている。大きな失敗はなかったと思うが、昨年のようなネットでの中継が今年はなかったので、それは本当によかったと思っている。

f:id:honyakumystery:20130424093520j:image:mediumf:id:honyakumystery:20130424093521j:image:mediumf:id:honyakumystery:20130424093522j:image:medium


 Twitterに書き込んだことと重複するが、コンベンションについても少し振り返っておきたい。


 今年度は「思うぞんぶん翻訳ミステリーの話をしよう!」が合い言葉として挙げられていた。発表された企画に、その思いが十分に込められていた。これは、”濃い”ファンに向けられたものではなく、新しいファンを開拓しようという意志の表れだった。大賞発表前の七福神によるトークショウでは、三人とも難しい言葉を使わずにたくさんの本の魅力を語ってくれた。未読の人を「読む気にさせる」トークショウだった。あの後、『暗殺者グレイマン』を入手した人はきっとかなりの数いるに違いない。


 その他、出版社対抗ビブリオバトル、クイズ大会、4つの企画部屋(「紫煙と酒のハードボイルド雑談部屋」「コージーのお部屋」「翻訳ミステリィ 執事カッフェ〈ナゾー〉」「全国からあつまろう読書会の輪!のお部屋」)があったが、どの企画も、参加者が「聞く」というよりも「話す」「交流する」ということに重点が置かれていたように感じた。企画部屋には一通り顔を出してみたが、どこの部屋も参加者が楽しそうに話しているのが印象的だった。プロとアマの垣根を感じることなく、誰もが好きなミステリーの話をしに来たという感じ。ライトなファンにとって、とても居心地のいい空間ではなかったかと思う。ファンを大事にしたいという事務局の意志も十分伝わってきた。しかしそうなると、コアなファンにとっては多少不満に思う部分もあるかもしれない。私自身は、昨年以上に満足度の高いイベントだったと思っているし、また来年も参加することになるだろう。福岡からの参加は、費用的に楽ではないが、行く価値はある。今回迷ったあげく参加をあきらめた人がいるなら、次はぜひ参加するべきだ。


 今回、読者賞を企画してみて実感したのは、読書というものが、いつの間にかソーシャルなものになっていたということだ。一昔前は、本を介して人と人が出会うことなど、漫画の回し読みや、仲間との貸し借りに限られていた。やがて、ネットが生活に不可欠なものになると、いつしか読書もそれに取り込まれていた。遠く離れた顔も本名も知らない人と、同じ本の話ができるというのは、昔、私(だけでなくたぶん多くの人が)が感じていた「誰かとこの本の話をしたい」という欲求を見事に解消してくれた。今、全国でおこなわれている読書会も、昔であれば企画するのにもっと大きな負担を強いられていたことだろう。連絡ひとつ取るにもずいぶん時間を要したにちがいない。読者賞もそうで、酒の上での戯言に過ぎなかったことが、1年後にはいろんな人の協力で現実のものになっている。その展開の早さに今もなお驚愕し、また、全国の同好の士との交流が生まれたことに感謝している。

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 今回の投票では、読者賞や読書会について多くのご意見をいただきました。今回の反省も踏まえ、いただいたご意見を参考にして、次回はもっとおもしろいものにしたいと考えています。ぜひ、ご期待ください。


大木雄一郎(福岡読書会)


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【投票と同時におこなったアンケートの結果】


◎読書会参加経験

  あり  64.6%

  なし  29.9%

  無回答  5.4%


◎(「あり」と回答した人のうち)

  2ヶ所以上参加したことがある 22.1%


◎(「なし」と回答した人のうち)今後の参加希望

  参加したい   75%

  参加したくない 15.9%

  わからない   9.1%


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