新潮文庫7月の新刊

骨の祭壇(上) (新潮文庫)

骨の祭壇(上) (新潮文庫)

骨の祭壇(下) (新潮文庫)

骨の祭壇(下) (新潮文庫)

 
骨の祭壇(上・下)The Altar of Bones
フィリップ・カーター(Philip Carter)/池田真紀子・訳
 新潮文庫/定価:746円/788円
 ISBN:上巻=978-4-10-218361-8 下巻=978-4-10-218362-0
 
 
謎の覆面作家によるデビュー作、
全米出版社がseven figures(7ケタ=数億円)で争奪戦!
超話題作、ついに日本上陸。
早くも Web本の雑誌杉江松恋さん絶賛!!
( http://www.webdoku.jp/newshz/sugie/2013/07/04/170206.html )
 
 
とにかく敵の数が多すぎるのです。そして正体不明なのです。
読み出したら止まらないのです。
なにを書いてもネタバレになりそうですが(そういう小説なのです)、思い切って書きます。
主人公はゾーイ・ドミトロフ、女性弁護士です。彼女が登場するまでに、まずは現代のサンフランシスコで女ホームレスが殺されます。1937年のシベリアで、強制収容所脱出を図る男女が描かれます。物語内現在の18ヶ月前のテキサスで、一人の死にかけた男が息子たちに「告白」を行おうとします。
一見、どうつながるのやらわからぬ三つの筋は、ゾーイの登場とともに縒り合わされていきます。ずるいなあ、というくらいもどかしく、くそ、騙されたと吐き捨てたくなるほど巧妙に、血の気が引くほど残酷な描写とともに、パズルがはまる快感とともに。
この覆面作家の手業は鮮やかです。謎があれば解きたくなる人間の習性を熟知しているかのようにひらひらと迷宮のような隘路へと読者を誘い、ふとした瞬間、読者は実は自らが広大な沃野に立ち尽くしていることを発見し、茫然とすることになるのです……などと書いたところでなんの説明にもなりませんね。ぜひ杉江さんの書評を読んでいただけたらと思います。
 
とにかく敵の数が多すぎるのです。目的もよくわからないのです。
「骨の祭壇」とやらを追う物語ですが、それがなんなのやらもよくわからないまま物語は進むのです。
美貌&狂気の女殺し屋にポニーテールの暗殺者。ロシアン・マフィアに謎の組織、加えて国家機関、それもアメリカだかロシアだかわからぬままFBIもDEAもCIAもKGBもまずは名前だけは登場し、読み進めなければ実際どこの組織が何を狙っているやら誰が所属してるやらもわかりません。その上巨億を握る投資家が敵やも知れず、カリスマ・ミュージシャンだって信じられたものではなく、彼氏であろうが親であろうが敵やら味方やらわからない上、銃弾ばかりは雨あられ、果てはアメリカ暗黒史にまで本書は言及するのです。
この虚偽と裏切りに満ちた世界の中をどうやってゾーイは生き延びるのか?
そして、そんな中で人は、人をどうやって信じることができるのか?
発売から一週間、すでに4人の方々が「読み始めたらやめられなかった」とわざわざ私に告白しにきました。稀有なことです。一度手にとってくだされば、と願っています。
  
『骨の祭壇』に並ぶ小説が過去にいくつあっただろう。立体的に書きこまれたキャラクター、息をもつかせぬストーリー展開、手に汗握るアクション……これを読みのがすのはもったいない。――キャサリン・コールター(New York Times Bestselling author, Catherine Coulter)
 
痛快! ダン・ブラウンロバート・ラドラム――一気読み間違いなしのジェットコースター小説。――グレッグ・アイルズ(New York Times Bestselling author, Greg Iles)
 
読み出したらやめられない――無理にでもいったん本を置いて一息つくしかなくなるまで。――テッド・ベル(New York Times Bestselling author, Ted Bell)
 
覆面作家の正体は)ハーラン・コーベンではないか。文章のリズムがそっくりだし、カバーの内容紹介や謝辞にもそれらしきヒントが隠れている。しかし、私の読みが当たっているとしたら、皮肉と言わざるをえない。この“あえて『ダ・ヴィンチ・コード』路線をなぞった”サスペンス小説は、ここ何年かのあいだにハーラン・コーベン名義で発表された作品群より、ずっとおもしろいからだ。――ジョン・オコネル(
The Guardian, John O'Connell)
 
(新潮社新潮文庫編集部 K)