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2016-03-04

第1回沖縄読書会レポート(執筆者・東野さやか)

 記録的な大寒波が全国を襲った1月23日、第1回沖縄読書会が開催されました。


 冬の沖縄は何度かお邪魔していて、慣れているつもりでしたが、今回はレベルがちがう。雨は降るわ、風は強いわで、でーじ(「とても」の意)寒かったです。まさにムーチービーサー。


 ここでちょっと解説。沖縄では旧暦の12月8日をムーチーの日といい、邪気を払い無病息災を願って鬼餅(ムーチー)を食べる習慣があるのだとか。このムーチーの日の頃の1月下旬から2月上旬にかけてが1年でもっとも寒くなることから、その寒さを鬼餅寒(ムーチービーサー)と呼ぶんだそうです。


 さて、初の沖縄読書会の会場は、那覇市内にあります〈流求茶館〉というティールーム(地図)。変換ミスじゃないですよ。“琉球”じゃなく、“流求”なんです。そのわけはお店のサイトに説明のページがありますのでそちらをお読みいただくとして、とにかく、台湾のお茶をメインに、ハーブティーや紅茶、コーヒーが楽しめ、スイーツも充実していて、とってもすてきなお店です。


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 偶然にも参加者は世話人を含め、全員が女性。沖縄県内在住の方も遠征組もすぐに打ち解け、香り豊かなお茶と、おいしいスイーツをお供に女子トークが炸裂するにぎやかな(ひかえめ表現)会となりました。


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(こんな雰囲気でおしゃべりしました。ガラスのポットに入っているのは工芸茶。ちらりと見えるレジュメはエア参加のM氏によるもの。写真はTさん、Kさん提供)


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(この日、いちばん人気のあった台湾風あったかぜんざい。写真はTさん提供)


 さて、くわしいレポートに入る前に、課題書『偽のデュー警部』のおさらいをば。


偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)


 時は1921年。ロンドンに暮らす花屋の店員アルマは、歯科医のウォルターに恋していた。しかし、彼にはリディアという女優の妻がいる。リディアがハリウッドに移住すると宣言し、ウォルターにも同行を求めたことから、ウォルターとアルマは大西洋を横断する豪華客船モーリタニア号でリディアを殺害する計画を立てる。しかし船内で殺人事件が発生し、伝説の名刑事にまちがえられたウォルターは事件の捜査をまかされることに。


 簡単な自己紹介のあと、まず話題に出たのが、「アルマの妄想が怖い!」でした。ロマンス小説が大好きというアルマさん、ほれっぽいのか恋愛体質なのか、すてきだなと思った人にすぐ恋をする癖があるんですよ。ある参加者いわく、「水道の修理に来た人にも恋するタイプ」だそう。ま、それだけならどうってことはありませんが、彼女の場合、そのすてきだなと思った人と交際するふりをし、「その後、彼とはどうなってるの?」と問われれば、「彼が出征してしまって、いまは離ればなれなの」と嘘をつき(第一次世界大戦中だったからね)、あげくの果ては相手が戦死してしまったことにして、黒い服で喪に服した過去があるのです。こうなると、妄想家というより嘘つきですね。


 そんな彼女の妄想ぶりに「そこまでやると尊敬する」「ロマンス小説読みの心情がよく描けている」「自分の頭のなかを見られたような気がした」「でも、そういう気持ちに寄り添っているわけじゃなく、ちょっとばかにしてるよね」などなど。話はそこからさらに発展し、ジェーン・オースティンの小説世界のパロディというか、男性がまねして書いてみましたと読んだという方も。そう言われてみれば、たしかに。


 さて、アルマの恋の相手、ウォルターもさんざんな言われようで、「流されているだけの人」とばっさり。殺人事件が起こって、有名な警部と間違われるいきさつも、「そもそも仮名を使うにしても実在の人物と同じ名前にするのはどうよ」って、ごもっとも。「デュー警部さんですよね」と問われて「ハイ」と答えるくだりは笑うしかありません。当然ながら捜査らしい捜査はせず、推理だってしていないも同然。けちょんけちょんに言われてもしかたがないところです。


 突っこみの矛先はアルマたちと同じモーリタニア号に乗り合わせた乗客にも向かいます。どの人もひと癖あって、個性豊かなのですが、「ただのおばか」だの「大物かと思ったら、たいしたことなかった」だの「ボンクラ」、「小心者」と、もうdisる、disる。登場人物についてこれだけ話が盛りあがるのも、ラヴゼイの描写のうまさと言えましょう。


 話の展開については、「いつになったら船に乗るんだろうといらいらした」、「愛し合っているふたりが逃避行する話かと思ったらちがってた」、「ウォルターはデュー警部のふりをするには歳が若すぎるのでは?」という意見もありましたが、「思っている方向に話が進まないのがおもしろく、飽きずに読めた」とおおむね好評。時代背景を楽しんだという方も多かったもよう。また、みんなで登場人物のその後をあれこれ予想して楽しみました。ネタバレになるので具体的にお伝えできないのが残念ですが、これはもうおおいに盛りあがりましたよ。


 そんなわけで、2時間弱の会でしたが、ここには書き切れないくらいたくさんの意見や感想が飛び交いました。わたしも世話人という立場を忘れ、すっかり楽しんでしまいました。沖縄で開催して本当によかった。あまりに楽しかったので、はやくも年内の開催をもくろんでいます。今回、ご一緒したみなさまも、都合が合わず断念した方も、第2回沖縄読書会でお会いしましょう。



東野さやか(ひがしの さやか)

兵庫県生まれの埼玉県民。洋楽ロック好き。最新訳書はローラ・チャイルズ『幸せケーキは事件の火種』(コージーブックス)。その他、ブレイク・クラウチ『ラスト・タウン―神の怒り―』(ハヤカワNV文庫)。ローラ・チャイルズ『スイート・ティーは花嫁の復讐』(コージーブックス)など。埼玉読書会と沖縄読書会の世話人。ツイッターアカウントは @andrea2121



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