第2回徳島読書会レポート

 
 11月12日、徳島県鳴門市で第2回徳島読書会が開催されました(参加者21名)。四国、九州、関西、東海、関東と全国各地から集まったメンバーで、スペイン・ミステリー談議に花を咲かせました!


 課題書は『最後の晩餐の暗号』(ハビエル・シエラ著、宮崎真紀訳、イースト・プレス)。レオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」、そして鳴門、とくれば、もうおわかりでしょうか?
 そう、鳴門市にある大塚国際美術館には、陶板画で再現(原寸大)された「最後の晩餐」の修復前・修復後の2枚が、向かい合って展示されているのです!


大塚国際美術館で以前おこなわれていた「『ダ・ヴィンチ・コード』ツアー」の様子】


 ということで、読書会前に行ってきました、大塚国際美術館
 これで気分はすっかりダヴィンチ・モード。
(ほぼ参加者全員が、美術館から読書会へ突入するというスケジュールでした。)


 ということで、読書会がスタート。翻訳を担当された、宮崎真紀さんに補足やコメントをいただきながら、会は進んでいきます。
 本を読んだ感想としては、まず、
「主人公の存在感がうすい」
ダヴィンチが謎を解いてしまっている(裏の主役?)」
とのっけから少々分の悪い主人公。
 本書は15世紀末のミラノが舞台で、レオナルド・ダヴィンチといった実在の人物と、フィクション上の人物が入り乱れて登場します。
 やはり、ダヴィンチの存在感は大きい、いや、大きすぎたのか?
 そして翻訳ミステリーにはお約束の、
「名前が読みづらい」
「名前がごっちゃになって苦労した」
といったコメントも。
(「トッリアーニ」「バンデッロ」「ヴィンチェンツオ」「トリヴルツィオ」などなど、すらすら読むほうが難しい……とくに小さい「ツ」がね……)


 話のテンポや展開についての感想も多数ありました。
「中盤(ほぼ終盤)までかなりのスローテンポ」
(スローすぎて読むのがつらかったという意見だけでなく、むしろそれがよかったという意見も。)
「最後の謎解きが、『えっ、それでいいの?』『そんなことなら、もっと早く謎が解けたのでは?』と思ってしまった」
「ミステリーの形はとっていても、作者が実際に書きたかったのは歴史や芸術のことなのでは?」
「謎はいっぱい出てくるけど、どれが本当の謎なのかつかめなかった」
もう、つっこみどころ満載です。
 翻訳された宮崎さんによると、スペインの小説には、「入りがスロー」「ストーリーの背景にウエイトがおかれる」という傾向があるそうです。
 スペインといえば陽気なイメージがありますが、独裁政権、内戦といったつらい歴史をひきずっている部分があり、それが小説などのエンターテイメントにも影響しているとか。光が強いぶん、影も暗くなってしまうんですね。かつてのスペイン帝国繁栄の歴史があるからか、スペインでは歴史小説が好まれる、ということもあるようです。こうした事情を聞くと、作品の読みもより深まります。作者のハビエル・シエラは実は「スピリチュアル系」の著作も発表している、といった裏話でも盛り上がりました。

 
 ややネガティブ(?)なコメントが続きましたが、もちろんそれだけではありません!
「修道士の生活を垣間見ることができて楽しかった」
「実在の人物が活き活きと描写されていたのがよかった」
「絵画や芸術好きにはたまらない小説」
「スペインの小説をもっと読みたくなった」
と、みなさん思い思いに作品を読みこみ、楽しまれた様子でした。
 『最後の晩餐の暗号』、いろんな角度から読めて解釈できる、「一粒で何度もおいしい」作品でした!


 徳島読書会は、第1回、第2回と、美術にからめた読書会となりました。今後の方向性はまだ定まっていませんが、徳島読書会を続けていけるよう、企画を練っているところです(春に徳島市内で第3回を開催できればと思っています)。次回の開催を、気長にお待ちいただければさいわいです。


 徳島読書会世話人 井上舞



【ゲスト・宮崎真紀さんからのメッセージ】
 いやいや、楽しかったです、徳島読書会。大塚国際美術館の見学から始まり、レプリカながらダ・ヴィンチの作品を一気に見られてしまう、その迫力。課題書『最後の晩餐の暗号』に登場する『岩窟の聖母』のルーヴル版とナショナル・ギャラリー版をその場で比較できたのですから、願ったりかなったりという感じでした。もちろん『最後の晩餐』も。
 スペイン語圏ミステリはまだまだマイナーの部類にはいるとは思いますが、今回みなさんといっしょにあれこれお話しすることができて、はっとさせられたり勇気づけられたりすることも多く、これからもどんどん紹介していけたらなと改めて思いを強くしました。宴会もほっこりと、そしてまた愉快で。各地に出向く読書会、癖になりそう……。幹事の井上さん、越前さん、ありがとうございました。

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